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前線

俺たちは前線に戻る。


前線の兵たちは疲弊していた。

「この短期間に何があった?」

殿は言った。


「魔物たちの侵攻がありまして、以前の何倍も強く」

兵はそう答えた。


殿は兵たちを集めた。


「聞け!お前らが強くあったのは、殿の御加護だ。

今回の侵攻で、敵の強さがわかっただろう。

殿は軍神の化身であられる。

殿がいれば、お前らが負ける事はないだろう。

しかし、殿の御加護に頼りきりで良いのか?」

俺は声を張り上げた。


「ダメだ」

「そうだダメだ」

「俺たちが強くならなければ」

「勝ちたい」

「強くなりたい」

兵たちの語気が強くなる。


「全蔵。

各部隊に戦術を三つだけ教えて、それを毎日訓練させろ。

一週間だ。

一週間その戦術の事だけを考えさせろ」

殿はそう耳打ちし、部屋へと戻っていった。


俺は各部隊に、

基本的な戦術を三つだけ教えて、

それを毎日訓練させるように手はずを整えた。


食事の時間も、

休憩時間も、

その三つの戦術のことだけを考えさせた。


一週間後、

殿は兵たちを集めて、

訓練の成果を確認した。


「なかなか良い動きだ。歴戦の強者とまでは、いわんが、連携は取れている。はげめ」

殿はそう言い、部屋に戻った。


俺も殿についていく。


「全蔵。士気はどう見る?」


「高くなったと思います」


「驕りは?」


「ありません」


「出れそうか?」


「準備が整えば」


「そうか……、次はココだ」


「では、いつものようにまずは偵察に参ります」


「頼む」


俺は砦の偵察に向かう。

砦の警備は厳重だった。

夜を待ち、

忍び込もうとしたが、厳重すぎて入れない。


俺は明け方まで粘ったが、

諦めて戻った。


「殿。申し訳ございません。厳重で入れませんでした」


「そうか……」

殿は目を細めた。


「全蔵。とりあえず休め。俺も少し寝る」


「はっ」


……


(どーん、どーん、どーん)

大きな音がして、目が覚めた。


急ぎ、

俺は大きな音がする方向に向かう。


殿の姿が見えた。


「殿……、あの音は?」


「この国の太鼓のようなものだ」


「太鼓……、祭りでもなさいますか」


「これからな。

あの砦近くで、攻撃の届かぬ地点で、時をバラバラに、この太鼓を叩く」


「なるほど。では俺が……」


「これは一般兵でもできる」


「はっ」


それから兵たちは訓練をしながら、

毎日のように太鼓を叩いた。

その太鼓は深夜にも及んだ。


兵たちには、

太鼓が叩かれる時間があらかじめ知らされており、

各自耳に栓をして眠りについた。


敵の砦の緊張感は高まっていた。

しかし、

日が過ぎるごと、疲労が限界を超えたのか、朦朧とする警備が増えたように見えた。


「そろそろでは?」

殿は俺の肩を持った。


「はい。今晩行ってまいります」


「頼む」


俺は砦に忍び込む。

警備の数こそ多かったが、警戒の集中力は欠けていた。

砦のゴブリンは以前のものより多かった。

七百余りと、大型のゴブリンが三体いた。

ここでも人が奴隷として使われていた。


俺は戻り、

殿に報告をした。


「砦の構造は以前と同じ。ゴブリンは七百余り、大型のゴブリンが三体。

人が奴隷になっております」


「三体か……、厄介だな」


「なんとか頑張ります」


「駄目だ。危険すぎる」


「連日の太鼓の音で、ゴブリンの精神は削いでいます」


「薬だが、眠り薬はどうだ?」


「なるほど、連日の過労があるので、起きられぬかもしれません」


「では、今回は眠り薬を使え。弓も、扉も頼む」


「大型のゴブリンは?」


「一体は確実にしとめて欲しい。もう二体はできればで良い。こちらも策を練る」


「弓兵に毒矢を持たせては?」


「毒は用意できるか?」


「もちろん」


「腕の良い弓兵は?」


「二人おります」


「ではその者たちに、ワシの所へくるように、伝えておけ」


「はっ。伝えまして、その後、俺は仕掛けに参ります」


「頼む」


……

俺は毒を矢に塗ったものを持ち、

弓兵に会いに行く。


「これから殿の元に参り、殿に従え。

いいか、お前らの標的は大型のゴブリンだ。他のゴブリンは、他の兵に任せよ」


「はっ」


「あと矢はこれを使え。矢先に毒を塗り乾かしてある。キツイ毒ゆえ、触ると毒にやられるやもしれん。慎重に扱い、他の者に触らせるな」


「はっ」


「では頼む」


……

俺は準備を整え、

夜と共に、砦に忍び込む。

太鼓の音にゴブリンたちは、

もう反応をしなくなっていた。


俺は弓の弦を切って回る。

そして食事と酒に眠り薬を混ぜた。


三刻程たち、

警備のモノ以外、全て眠りについていた。

俺はまず大型のゴブリンを手にかける。

一匹目 問題なし

二匹目 問題なし

三匹目 食事をしていないのか、

眠りにすらついていない。


仕方がない。

俺は扉を開ける。


(ごごごごごごごごごご)

大きな音と共に扉が降りる。


(こっこっこっこっこっこっこっ)

蹄の音と共に、殿が現れる。

またたくまに、味方の兵が入り、ゴブリンを始末していく。

静かに、気取られないように、確実に。


「殿申し訳ございません。

二匹は葬りましたが、一匹には効いていないように見えました」


「十分だ。全蔵も付いてまいれ」


「はっ」


俺と殿は、

大型のゴブリンがいる部屋に進む。

二人の剣でゴブリンたちを薙ぎ払っていく。


大型のゴブリンのいる部屋についた。

ゴブリンは状況が読めず、混乱していた。

ゴブリンの足元はおぼつかない。


「構え!打て!」

矢が放たれる。


「構え!打て!」

「構え!打て!」

「構え!打て!」

「構え!打て!」

「構え!打て!」

「構え!打て!」

連続で矢は放たれた。


「構え!打て!」


「もう矢はありませぬ」

弓兵は言った。


ゴブリンは立ったまま動かない。


俺は近くにあったこん棒を拾い、大型のゴブリンに投げつける。


額に当たり、そのまま倒れた。


「殿。毒が回っております」


「そうか。とどめを」


「はっ」


俺はゴブリンの喉元に布をかけ、すーっと引いた。

布は血に染まる。


……

その後、兵たちは残党を掃討した。

そして、兵たちと、捕らえられた人々を使い、ゴブリンたちを片付けた。


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