表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢、辺境で「半分を見捨てる決断」をする 〜全員を救えない世界で、彼女は最善を選ぶ〜  作者: 結城ヒナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/30

第27話 カインの評価

 その日の午後。


 私は現場に戻っていた。


 やるべきことは、明確だった。


 人員の再配置。

 負傷者の代替。

 作業効率の維持。


 そして。


 ——昨日の判断の修正。


 私は動く。


 指示を出す。


 だが。


 以前とは違う。


 言葉を選ぶ。


 相手を見る。


 必要な形で、伝える。


 完全ではない。


 だが。


 昨日よりは、確実に良い。


 人が動く。


 止まらない。


 流れができる。


 私はそれを確認する。


 その時。


「……変わったな」


 声がする。


 振り向く。


 カインだった。


 少し離れた位置に立っている。


 腕を組み、こちらを見ている。


「どの点が」


 私は問う。


 具体的に。


 彼は少しだけ笑う。


「全部だ」


 短く言う。


 私はその言葉を受け取る。


 だが。


 曖昧だ。


「具体的に」


 私は続ける。


 カインは肩をすくめる。


「前はな」


 一歩近づく。


「“正しいこと”しか見てなかった」


 私は頷く。


 その通りだ。


「今は」


 彼は続ける。


「“人”も見てる」


 その一言。


 私は沈黙する。


 それを処理する。


 理解する。


 そして。


 受け入れる。


「それが必要だと判断した」


 私は答える。


 事実として。


 カインは少しだけ笑う。


「判断、か」


 繰り返す。


 だが。


 否定ではない。


「まあいい」


 短く言う。


 そして。


「今回の件」


 視線が少しだけ鋭くなる。


「逃げなかったな」


 その言葉。


 私は受け取る。


 意味を理解する。


「逃げる理由がない」


 私は答える。


 それが事実だから。


 カインは一瞬、黙る。


 そして。


「普通はな」


 低く言う。


「逃げる」


 その言葉。


 私は考える。


 なぜか。


 そして。


 理解する。


 責任から。


 評価から。


 感情から。


 逃げる。


 それが一般的な選択。


 だが。


 私はしなかった。


 理由は。


 単純だ。


 必要だったから。


「合理的ではない」


 私は言う。


 逃げることは。


 問題を先送りするだけだ。


 カインは少しだけ笑う。


「だろうな」


 同意する。


 そして。


 少しだけ、真剣な顔になる。


「でもな」


 続ける。


「それでも逃げる奴が多い」


 その言葉。


 私は受け取る。


 現実として。


 私は頷く。


「理解した」


 短く。


 カインはそれを見て、満足そうに息を吐く。


「……まあ」


 少しだけ視線を逸らす。


「及第点だな」


 その一言。


 私は止まる。


 思考が、一瞬だけ止まる。


 及第点。


 評価。


 明確な。


 私はそれを受け取る。


 そして。


 胸の奥で。


 あの感覚が、大きく動く。


 今までで一番。


 はっきりと。


 強く。


 私はそれを観察する。


 逃げない。


 そのまま受け入れる。


 そして。


 理解する。


 ——これは。


 認められた、ということ。


 完全ではない。


 だが。


 明確に。


 私はそれを受け入れる。


 カインが続ける。


「ただし」


 短く言う。


「まだ足りねえ」


 その言葉。


 私は頷く。


 当然だ。


「何が」


 私は問う。


 次に進むために。


 カインは少しだけ考える。


 そして。


「選び方だな」


 言う。


 私はその言葉を受け取る。


「お前、まだ迷ってるだろ」


 指摘。


 私は止まる。


 そして。


 理解する。


 ——迷っている。


 確かに。


 正しさと。


 人。


 その間で。


 完全には統合できていない。


 私は頷く。


「そうだ」


 認める。


 カインは笑う。


「それでいい」


 短く言う。


「迷わなくなったら、終わりだ」


 その言葉。


 私は受け取る。


 そして。


 理解する。


 これは。


 完成ではない。


 途中だ。


 私はスコップを握る。


 力を入れる。


 そして。


 再び動く。


 作業に戻る。


 だが。


 今は違う。


 ただ動くのではない。


 選ぶ。


 考える。


 そして。


 進む。


 完全ではない。


 だが。


 確実に。


 私は。


 変わっている。


 そう、認識した。

第27話までお読みいただきありがとうございます。


ここで主人公は初めて、

「他者からの明確な評価」と「信頼の芽」を得ました。


ただし同時に、「まだ未完成である」という課題も提示されています。


この“未完成のまま進む”という状態が、この物語の魅力です。


次話では、主人公が自ら「残る理由」を明確にします。

ここで内面的な覚悟が固まります。


少しでも続きが気になった方は、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


ここから主人公は、“選びながら進む人間”になっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ