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婚約破棄された令嬢、辺境で「半分を見捨てる決断」をする 〜全員を救えない世界で、彼女は最善を選ぶ〜  作者: 結城ヒナ


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第28話 残る理由

 夕方。


 作業が一段落した後。


 私は一人、川の前に立っていた。


 水の流れは落ち着いている。

 昨日のような勢いはない。


 だが。


 完全に安全ではない。


 ——不安定。


 それが、この場所の本質だ。


 私はそれを見つめる。


 そして。


 考える。


 ここに来てからのことを。


 最初の日。


 拒絶された。


 言葉は通じず。


 判断も受け入れられなかった。


 次の日。


 できない自分を知った。


 その次。


 小さな成功。


 評価。


 そして。


 ——失敗。


 一人を傷つけた。


 その結果。


 責任を知った。


 私はそれを一つずつ辿る。


 思考する。


 そして。


 結論を出す。


 ——ここにいる理由は何か。


 任務。


 それはある。


 だが。


 それだけではない。


 私はゆっくりと息を吐く。


 そして。


 言葉にする。


「……まだ足りない」


 自分に。


 はっきりと。


 私はまだ、できていない。


 完全ではない。


 最適でもない。


 だから。


 ——離れる理由がない。


 その結論。


 それは。


 以前とは違う。


 “命じられたから”ではない。


 “合理的だから”でもない。


 ただ。


 必要だから。


 私はそう判断する。


 その時。


「……何してんだ」


 声。


 振り返る。


 カインだった。


 いつもの位置。


 少し距離を取って立っている。


「思考の整理」


 私は答える。


 彼はため息をつく。


「相変わらずだな」


 呆れたように。


 だが。


 嫌悪ではない。


 私は彼を見る。


 そして。


 言う。


「私は、ここに残る」


 はっきりと。


 彼は少しだけ眉を上げる。


「もう決まってんだろ」


 言う。


「任務なんだから」


 私は首を振る。


「違う」


 否定する。


「それとは別に」


 一歩、前に出る。


「自分で選ぶ」


 その言葉。


 カインは少しだけ黙る。


 そして。


「……ほう」


 小さく言う。


 興味。


 評価。


 その両方が混ざっている。


「理由は」


 短く問う。


 私は答える。


「未解決の問題がある」


 事実。


「自分の判断が未完成」


 事実。


「それを修正する必要がある」


 結論。


 カインは笑う。


「相変わらず理屈だな」


 だが。


 否定ではない。


「それでいいのか」


 少しだけ真剣な声。


 私は一瞬、止まる。


 そして。


 考える。


 それでいいのか。


 合理性。


 感情。


 両方を。


 そして。


 答える。


「……いい」


 短く。


 だが。


 今までで一番。


 確信を持って。


 カインはそれを見て、頷く。


「ならいい」


 それだけ言う。


 それで十分だった。


 彼はそのまま背を向ける。


 歩き出す。


 私はその背を見る。


 そして。


 理解する。


 ——これは。


 承認だ。


 完全ではない。


 だが。


 確かに。


 私は、ここにいていい。


 そう認められている。


 私は視線を川に戻す。


 流れを見る。


 同じようで。


 同じではない。


 私はゆっくりと息を吸う。


 そして。


 静かに。


 思う。


 ——私は。


 ここでやる。


 任務だからではない。


 誰かに言われたからでもない。


 自分で選んだ。


 だから。


 最後まで。


 やる。


 その決意。


 それは。


 これまでで一番。


 静かで。


 そして。


 揺るがない形で。


 私の中に、残った。

第28話までお読みいただきありがとうございます。


ここで主人公は初めて、

「自分の意思でここに残る」と決めました。


命令でも合理でもなく、“自分で選ぶ”。


この変化が、物語の大きな転換点です。


次話では、ここまでの経験を踏まえて、

主人公が「再挑戦」に入ります。


そしてその先に、新たな問題が提示されます。


少しでも続きが気になった方は、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


ここから物語は、次のステージへ進みます。

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