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婚約破棄された令嬢、辺境で「半分を見捨てる決断」をする 〜全員を救えない世界で、彼女は最善を選ぶ〜  作者: 結城ヒナ


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第23話 決断

 雨は、止まなかった。


 むしろ、強くなっている。


 川の水位は、さらに上がる。


 先ほど抑えた場所も、再び危険域に近づいていた。


 ——持たない。


 私はそう判断する。


 現場は混乱している。


 人々は動いている。


 だが。


 統制は完全ではない。


 それでも。


 誰も止まらない。


 止まれば、終わると分かっているからだ。


 私はその中に立つ。


 雨に打たれながら。


 思考する。


 次の手。


 選択。


 優先順位。


 そして。


 ——人。


 私は視線を巡らせる。


 顔を見る。


 表情。


 動き。


 疲労。


 焦り。


 恐怖。


 昨日までよりも。


 少しだけ。


 理解できる。


 完全ではない。


 だが。


 無視はできない。


 その時。


「エレノア!」


 声がする。


 カインだった。


 振り向く。


「上流が来る!」


 短く言う。


 私は川を見る。


 水の色が変わる。


 流れが速くなる。


 ——来る。


 予測が確定する。


 時間がない。


 私は一歩前に出る。


 思考を切り替える。


 選ぶ。


 今度は。


 違う。


 私は人を見る。


 そして。


 地形を見る。


 両方を。


 同時に。


 処理する。


 ——この区画。


 守れる。


 だが。


 条件がある。


「人を分ける」


 私は言う。


 声を上げる。


 全員に届くように。


「三つに分かれる」


 指を立てる。


「一つは堤防維持」


「一つは上流の流路誘導」


「一つは避難準備」


 具体的に。


 だが。


 今回は違う。


 私は続ける。


「無理をするな」


 言う。


 はっきりと。


「限界を感じたら下がれ」


 その一言。


 人の動きが、変わる。


 わずかに。


 だが、確かに。


 カインがこちらを見る。


 一瞬だけ。


 評価するように。


 そして。


「……いい」


 短く言う。


「それで行く!」


 声を上げる。


 人が動く。


 今度は。


 私の指示も含めて。


 流れができる。


 完全ではない。


 だが。


 分裂しない。


 動いている。


 私はそれを見る。


 そして。


 自分も動く。


 中央へ。


 最も負荷のかかる場所。


 土を運ぶ。


 積む。


 押さえる。


 雨が強い。


 足元が崩れる。


 だが。


 止まらない。


 その時。


「危ねえ!」


 声。


 振り向く。


 一人の男が滑る。


 流される。


 私は即座に動く。


 手を伸ばす。


 掴む。


 重い。


 流れが強い。


 だが。


 離さない。


 別の者が加わる。


 引き上げる。


 男は地面に倒れる。


 息を切らしている。


 私はそれを見る。


 確認する。


 無事。


 だが。


 その時。


 別の場所で。


 崩れる音。


 視線を向ける。


 堤の一部が崩れた。


 水が流れ込む。


 範囲は広くない。


 だが。


 確実に。


 被害が出る。


 私はそれを見る。


 判断する。


 ——間に合わなかった。


 だが。


 全体は守れている。


 致命的ではない。


 私はそう結論づける。


 やがて。


 雨が弱まる。


 流れも落ち着く。


 人々の動きが止まる。


 確認。


 結果。


 ——持った。


 被害はある。


 だが。


 壊滅ではない。


 私は立ち尽くす。


 呼吸が乱れている。


 身体が重い。


 だが。


 意識ははっきりしている。


 その時。


「……今の」


 カインが近づく。


 低い声。


「悪くなかった」


 評価。


 私はそれを受け取る。


 だが。


 今回は違う。


 私は、川を見る。


 崩れた場所。


 そこにあるのは。


 ——被害。


 小さい。


 だが。


 確実な。


 私はそれを認識する。


 そして。


 ゆっくりと。


 言う。


「……不十分」


 カインが少しだけ眉を上げる。


「何が」


 私は答える。


「守れた範囲は、限定的」


 事実。


「最適ではない」


 彼は少しだけ黙る。


 そして。


「だろうな」


 あっさりと言う。


「でもな」


 続ける。


「全員は生きてる」


 その一言。


 私は止まる。


 意味を処理する。


 全員。


 生存。


 私は周囲を見る。


 確かに。


 誰も死んでいない。


 負傷者はいる。


 だが。


 ——生きている。


 その事実。


 私は受け取る。


 そして。


 胸の奥で。


 何かが、大きく動く。


 今までよりも。


 はっきりと。


 強く。


 これは。


 何だ。


 私はそれを観察する。


 だが。


 逃げない。


 目を逸らさない。


 そのまま。


 受け入れる。


 そして。


 静かに。


 思う。


 ——私は。


 今回。


 “少しだけ”。


 間違えなかったのかもしれない。


 その結論。


 それは。


 これまでとは違う形で。


 胸の中に、残った。

第23話までお読みいただきありがとうございます。


ここで主人公は初めて、

「人も考慮した判断」で現実に結果を出しました。


しかし同時に、

「それでも完璧ではない」という新しい壁にも直面しています。


この“少しだけ正しい”という状態が、

この物語の核心です。


次話では、その判断の結果がはっきりと現れます。

そして主人公は、“責任”と向き合うことになります。


少しでも続きが気になった方は、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


次話——ここで、もう一度落とします。

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