第296話 第二の試練の発見
フェニックスが消滅すると、無数の光の粒がふわりと舞い上がる。
その光は、やがて真紅の羽へと姿を変えていった。
ふわり、ふわりと、不死鳥の羽が雪のように降り注ぐ。
「きれーい!」リーナが目を輝かせる。
「羽だ」ヒカリも羽を一枚拾い上げた。
カイルの目も自然と輝く。
「全部拾え!全部が貴重な素材だ!」
家族総出で回収が始まった。キキは袋を広げ、ナルサは空を飛び回りながら羽を集めていく。父のディスプレイには【回収】の文字が浮かび、器用に一枚一枚拾い上げていく。
「踏まないように気をつけてね」母がやんわりと声をかける。
リーナとヒカリも、あちこち駆け回りながら楽しそうに集める。
「こっちにもあった!」
「あっちにも!」
「これだけあれば、防具にも魔道具にも使えそうだな」カイルが満足げに呟く。
「希少素材として登録しました」ミーナが淡々と報告する。
回収を終えると、ミーナとリヒトがボス部屋の奥を調べ始めた。壁、床、古代文字を隅々まで丁寧に確認していく。
しばらくして、リヒトが声を上げた。
「カイルさん!」
「隠し扉を発見しました」ミーナが続ける。
ゴゴゴゴ……壁がゆっくりと開いていく。その先には、暗く長い通路が伸びていた。壁には古代文字が刻まれている。
「……第二の試練」リヒトが呟く。
カイルの口元に、思わず笑みが浮かんだ。
「やっぱり、あったか。第二の試練だ!」
しかし、そこでカイルのお腹が鳴った。
「ぐぅ〜」
静まり返った部屋に、間の抜けた音が響く。
「……」キキが黙る。
「……」ナルサも黙る。
「あっ、お兄ちゃんのお腹」リーナが素直に指摘した。
「腹が減っては戦はできぬ」カイルは堂々と言い放つ。「まず飯だ!」
ボス部屋の安全を確認してから、収納魔道具で机と椅子を取り出す。母が温かいスープを用意し、キキがパンを並べ、ナルサが肉料理を配っていく。リーナとヒカリは嬉しそうに席に着いた。
父のディスプレイに【いただきます】の文字。
「いただきます!」全員の声が揃う。
空に浮かぶ試練の塔、そのボス部屋で、家族そろっての昼食が始まった。
「旅行気分か!!」ナルサが頭を抱える。
「景色がいいだろ?」カイルが涼しい顔で答える。
「うん!」リーナ。
「ご飯、おいしい」ヒカリ。
「みんな無事で食べられるのが、一番よね」母がしみじみと言う。
キキも思わず笑ってしまう。
「確かに、こんな場所で食事なんて、滅多にできないもの」
食事と休憩を終え、カイルが立ち上がる。「よし、第二の試練へ行こう」
一行は通路を進み、重厚な扉が開く。第二の試練。
その瞬間、ミーナが鋭く告げた。
「警告。第一の試練を大きく上回る魔力反応です」
空から、飛行型の魔物が次々と現れる。第一の試練よりも一回り大きく、速度も明らかに速い。
カイル達は迎え撃つが、すぐに苦戦を強いられた。
「速い!数も多いぞ!」
空中戦は、より激しさを増していく。
「きゃっ!」リーナの悲鳴が響く。
一体の魔物が、リーナへ急降下していく。
「リーナ!」ヒカリが叫ぶ。
父が間に割って入り、剣でその一撃を受け止める。母も咄嗟に結界を展開し、間一髪で守り切った。
カイルの表情が、一瞬で険しくなる。
「駄目だ。まだ早い。全員、撤退!」
一行は戦いながら離脱し、飛行船へと戻った。
「ごめんなさい……」リーナが小さく謝る。
カイルはその頭をそっと撫でた。
「謝るな。無理をしないのも、立派な攻略のうちだ」
その後、天空都市の神殿にて、天使族の長へ報告を行う。
「第一の試練は攻略しました」リヒトが言う。「フェニックスも倒しました」
「……フェニックスを?」
長が目を見開く。周囲の天使族たちも、一斉にざわめき始めた。
「守護鳥を、倒しただと……?」
「信じられない……」
長は深く息を吐き、静かに呟いた。
「まさか、本当に討伐する者が現れるとはな……」
「それと」リヒトが続ける。「第一の試練の奥に、第二の試練の間がありました」
「……何?」長の表情が変わる。「第二の試練だと? そのような場所は、伝承にも記録にも一切存在しない」
ミーナが記録映像を映し出す。そこに刻まれた古代文字『第二の試練』。
それを見た長は、静かに首を振った。
「我ら天使族ですら……試練の塔の全貌を、知らなかったというのか」
カイルはニヤリと笑う。
「未知のダンジョンほど、面白いものはない」
「その顔」キキが呆れたように言う。「また徹夜で研究する気でしょう」
「次はもっと、ちゃんと準備してから挑みましょうね」ナルサも念を押す。
こうして、第一の試練は完全制覇された。
しかし、試練の塔の本当の姿は、まだ始まったばかりだった。




