第297話 全員、新型装備へ
第一の試練を攻略した翌日、カイルはまた工房に籠もっていた。
机の上には、フェニックスから回収した真紅の羽が並んでいる。
「この素材があれば、もっと性能を上げられるな」
「賛成です」ミーナが即座に応じる。「耐熱性能、飛行性能ともに、大幅な向上が見込めます」
カイルは設計図を書き直し始める。
「今回は、俺だけじゃない。家族全員分だ」
「全員……?」キキが少し驚く。
「また徹夜ね……」ナルサが半ば諦めたように呟く。
「無理はしないでね」母がそっと声をかける。
父のディスプレイに【手伝う】の文字が浮かび、工具を手に取ると、そのままカイルと並んで作業を始めた。
数日後、工房には七着のパワードスーツ改が並んでいた。フェニックスの羽を組み込み、飛行性能は大幅に向上、空中での姿勢制御も改善されている。
「全機、完成しました」ミーナが報告する。
「よし、試運転開始だ!」
天空都市の訓練場。家族全員が新しいパワードスーツ改を装着していく。
「離陸!」カイルの合図とともに、ブォォォと推進音が響き、全員が一斉に空へ舞い上がった。
以前とは、明らかに安定感が違う。
「すごい!」キキが声を上げる。「全然違うわ!」
「急旋回も、すごく楽ね」ナルサも感心する。
「とても飛びやすいわ」母が微笑む。
父のディスプレイには【良好】の文字。
「空を飛ぶのが、こんなに楽しいなんて」リヒトも感動気味に呟く。
「前より軽い」ヒカリが小さく頷く。
「速ーい!」リーナは大はしゃぎだった。
カイルとミーナは全員の飛行データを確認していく。
「問題ありません」ミーナが告げる。「第二の試練への適応率も向上しています」
「これなら、戦えそうだな」カイルは満足げに頷いた。
その日の午後、リーナは袋を抱えて天使族の子供達のもとへ向かった。袋の中身は、フェニックスの羽だった。
「これ、みんなにあげる!」リヒトに教えて貰った言葉でリーナは元気に言う。
「え?」天使族の子供達が驚く。「本当に……?」
リーナは笑顔で頷いた。
「いっぱいあるから!」
その様子を見た大人の天使族たちは、思わず息を呑んだ。
「守護鳥の羽を……配っている……?」
「守護鳥の羽だぞ、あれは……」
一枚でも国宝級の価値があるものを、リーナは笑顔で子供達に配って回っている。
やがて、天使族の長もその場に現れた。子供達が嬉しそうに羽を見せに駆け寄る。
長はそれを見て、静かに頷いた。
「地上からの客人は……心まで豊かなようだ」
その言葉を聞いた天使族たちは、一斉にカイル達の方へ視線を向けた。その目に宿っていたのは、もう警戒ではなく、素直な尊敬だった。
「お兄ちゃん!」リーナが駆け寄ってくる。「みんな、喜んでくれたよ!」
カイルは頭をかきながら笑った。
「そうか」
「なんだか、こっちが照れるわね」キキが呟く。
「ここまで感謝されるとは思わなかったわ」ナルサも頷く。
「リーナらしい優しさね」母が目を細める。
父のディスプレイに【自慢の娘】の文字。
「リーナ、すごい」ヒカリが素直に言う。
「天使族の皆さんも、本当に嬉しそうです」リヒトも微笑んだ。
カイルは、天使族から向けられる尊敬の眼差しに少し照れながらも、笑って言った。「素材ってのは、使ってこそ価値があるからな。喜んでもらえたなら、それで十分だ」
リヒトが通訳するとその言葉に、天使族の長は深く頭を下げた。
こうしてカイル達は、天空都市でさらに厚い信頼を築いていくのだった。




