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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第292話 空戦仕様・パワードスーツ改


 試練の塔から撤退した翌日、カイルは工房に閉じこもっていた。


 机の上には設計図の山、飛行型魔物との戦闘記録、そしてミーナが解析した戦闘データが所狭しと広げられている。それらを何度も見比べながら、カイルは呟いた。


「やっぱり、足りないのは機動力だ」


「地上用パワードスーツでは性能不足です」ミーナが淡々と応じる。「空中戦への対応が必要です」


「なら、作るしかないな。パワードスーツ改だ!」


「開発開始します」


 二人はその日から徹夜で作業に取り掛かった。魔石、軽量金属、推進魔法陣、姿勢制御装置、そして、空中制御用の補助翼、手に入る新技術を惜しみなく投入していく。


 数日後、工房の中央に新型パワードスーツが完成した。


 以前より軽量化されているが、装甲の厚みはそのまま。背中には大型の飛行ユニットが備わり、脚部にも小型の推進装置が追加されている。


「完成だ!」カイルが誇らしげに声を上げる。


「名称、パワードスーツ改・飛行仕様」ミーナが淡々と読み上げた。


「今回は爆発しないでしょうね?」キキが眉をひそめる。


「その質問、大事」ナルサも真顔で頷いた。


「まずは低い場所で試しましょうね」母が優しく諭す。


 父のディスプレイには【安全第一】の文字。


「今回は大丈夫だって!」カイルが胸を張るが、全員の声が揃う。


「本当に?」


 天空都市の訓練場。カイルはパワードスーツ改を装着し、ミーナも同型機を身にまとう。


「推進装置、起動」


 ブォォォ……背中の魔石が輝きを増し、ふわりと体が浮いた。そのままゆっくりと前進する。


「おお……!」


「飛行安定」ミーナが確認する。「姿勢制御正常」


 スッとカイルの横に並ぶと、二人は並んでゆっくりと高度を上げていった。

 

「よし、訓練開始だ!」


 急上昇、急降下、旋回、急停止。空中で何度も動きを確認しながら、カイルは少しずつ感覚を掴んでいく。

 

「お兄ちゃん頑張れー!」リーナが地上から手を振る。


「ミーナも頑張って」ヒカリが控えめに声援を送る。


 父のディスプレイに【右だ】の指示が浮かぶ。


「了解!」


 カイルはその指示を見ながら急旋回する。以前よりも、格段に安定した動きだった。



 しかし、少し調子に乗ったカイルが叫ぶ。「最高速度、いってみるか!」


 魔力を一気に解放した瞬間、ドォンという音とともに体が急加速する。


「速っ……!」次の瞬間には気づいた。止まらない。「ブレーキ、ブレーキ!」カイルは慌てる。


「減速してください!」ミーナが叫ぶ。


「できない!」

 

ズザァァァ!!


 カイルは地面を滑り、そのまま派手に転がった。もうもうと土煙が舞い上がり、あたりに静寂が訪れる。


「……やっぱりね」キキが小さく呟く。


「期待を裏切らないわね、本当に」ナルサが呆れたように言う。


 母が慌てて駆け寄った。「大丈夫!?」


 土まみれになりながら、カイルは親指を立てる。「問題ないよ!」


 父のディスプレイには【馬鹿息子】の文字。


「あはは!」リーナが笑い転げる。


「成功……なのかな?」ヒカリが首をかしげた。


 転倒したカイルを見下ろしながら、ミーナが淡々と告げる。


「貴重な飛行データを取得しました。次回の改良に活用します」


 カイルは土を払いながら、笑顔で立ち上がった。


「失敗じゃない。これは、成功への途中経過だ」


 その一言に、家族は苦笑いしながらも頷くのだった。


 こうして、試練の塔攻略へ向けた新たな空中戦訓練が始まった。




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