閑話 小型ゴーレム、その後
カイル達が天空都市で冒険を続けている頃。
地上では、別の意味で熱い戦いが繰り広げられていた。小型ゴーレムバトルである。
王都の広場。
「いけぇー!」「右だ、右!」「必殺パンチだ!」
子供達の大声が飛び交う中、小型ゴーレム達は持ち主の音声命令を受けながら、リングの上で激しくぶつかり合っていた。周りを取り囲む観客も、すっかり大盛り上がりだ。
その人気は、王都だけにとどまらなかった。町でも、村でも、冒険者ギルドの片隅でも、貴族の屋敷の庭先でさえも気づけば、小さな大会があちこちで毎日のように開かれるようになっていた。
優勝賞品は改造パーツ、限定カラー、新型魔石。どれも子供の玩具の域を超えていて、参加者たちはみな驚くほど本気だった。
そして、カイルの知らないところで、ゴーレムたちはさらに進化を遂げていた。
ドワーフの工場では、酒を片手に職人たちが唸っている。
「もっと速く動かしたい!」
「いっそ腕を三本にするか!」
「いや、四本だろう」
「頭を回転させちまえばいいんじゃないか?」
誰も、彼らを止める者はいなかった。
気が付けば、改良パーツは数百種類にまで膨れ上がっていた。高速脚部、巨大ハンマー、回転ドリル、小型シールド、伸縮アーム、そして謎の飾り角まで。
もはや実用性など二の次で、完全に職人たちの趣味が暴走した結果だった。
大会会場では、実況の声が響く。「赤コーナー、高速型ゴーレム! 対する青コーナーは、重装甲・六本腕型ゴーレム!」
観客が「おぉぉぉ!」と沸き立つ中、試合が始まる。
「パンチ!」「ガード!」「飛べ!」
叫び声が飛び交うリングの上で、小さなゴーレムたちが本気で殴り合う。その光景は、傍から見ればかなりシュールだった。
商会の事務所では、会計担当が青い顔で駆け込んでくる。
「また売れました! 改造パーツが完売です!」
「追加生産が全然追いつきません!」
それを聞いたドワーフたちは、むしろ嬉しそうに応じる。
「なら任せろ!」「よし、今夜は徹夜だ!」
酒を飲みながら、実に楽しそうに働き始めるのだった。
工場長が帳簿を眺めながら、ふっと笑う。「会長がいなくても、商会が勝手に儲かってるな」
隣のドワーフも笑って言う。「帰ってきたら、さぞ驚くだろうなぁ」
その場にいた全員が、声を合わせて大笑いした。
その頃、天空都市。
「くしゅん!」カイルが小さくくしゃみをする。
「風邪?」とキキが首をかしげる。
「いや……なんか、誰かに噂されてる気がする」
もちろん、それは正解だった。地上では今日もカイル商会が絶好調。会長が不在のまま、ドワーフたちが勝手に新商品を開発し、勝手に売りさばき、勝手に大儲けしていた。
カイルが帰った時、商会がとんでもない規模に膨れ上がっていることをこのときはまだ、誰も知らなかった。




