第288話 リーナの翼
天空都市。
天使族の長との会談を終えたカイルたちは、案内役の天使族に連れられて都市を見て回ることになった。
白い石畳、空中庭園、美しい建物。どこを見ても幻想的な光景が広がっている。
「わあー!」とリーナが歓声を上げ、ヒカリも「きれい」と目を輝かせた。
母は「本当に夢みたいな街ね」としみじみ呟き、キキも「こんな都市が空に浮かんでいたなんて」と感心しきりだった。
しかし、歩いていると周囲からの視線が集まってくる。「……地上人だ」「翼がないぞ」。
天使族の子供たちも、物珍しそうにこちらを見ていた。
「見られてるわね……」とナルサが苦笑すると、カイルは「まあ、向こうから見れば珍しいんだろう」と気にする様子もなかった。
翌日、宿として借りた建物の外で、リーナが一人遊んでいると、天使族の子供たちが集まってきた。
一人の女の子が笑顔で声をかける。
「一緒に遊ぼう! 翼を出して!」
「翼?」とリーナが首をかしげると、子供たちは翼を広げて空へ飛び上がっていく。
リーナはそれを、羨ましそうに見上げた。リーナは慌てて走って戻ってきた。「お兄ちゃん!」
「どうした?」
「翼がほしい! みんなと飛びたい!」
カイルは少し考えてから、ニヤリと笑った。「作れるかもしれない」
「また始まったわ」とキキが呆れ、ナルサも「嫌な予感しかしない」とため息をつく。
母は「無茶だけはしないでね」と念を押した。
数時間後、工房。
ミーナも手伝い、軽量フレーム、小型魔石、浮遊補助魔法陣を組み合わせて、白い人工の翼が完成した。
「簡易飛行翼だ」とカイルが説明する。「長時間は飛べないけど、少しなら飛べる」
「やったー!」とリーナが飛び跳ねて喜んだ。
慎重にリーナの背中へ翼を装着し、魔力を流す。ふわっと翼がゆっくり開いた。
「動いた!」とリーナがはしゃぐと、ヒカリが「似合う」と微笑み、母も「可愛いわ」と目を細める。
キキは「本物みたいね」と感心したように翼を眺めた。
その時、外で待っていた天使族の子供たちが手を振った。「遊ぼう!」
「うん!」とリーナが答えた次の瞬間、バサッ! 翼を羽ばたかせ、ふわりと体が浮き上がった。
そして、天使族の子供たちと一緒に、そのまま空へ飛び立ってしまう。
カイルは数秒、固まった。「……え?」
「お兄ちゃーん!」楽しそうに笑いながら、リーナはどんどん遠ざかっていく。
カイルの顔色がみるみる変わった。「リーナーーッ!! そんなに高く飛ぶなーー!!」
慌てて巨兵ゴーレムを呼ぼうとする。
「落ち着いて!」とキキが止めに入り、ナルサも「リーナちゃんの方が落ち着いてるわよ!」と冷静に突っ込んだ。
母は笑いながら、「大丈夫よ。天使族の子たちも一緒だから」となだめる。
ヒカリは空を見上げて、「楽しそう」とのんびり呟いた。
「飛行状態は安定しています」とミーナが淡々と報告する。「墜落の危険性は低いです」
それでもカイルは、リーナの姿が見えなくなるまで、ハラハラしながら空を見上げ続けていた。
父のディスプレイに、一言だけ表示された。【過保護】
その一言に、家族全員が笑った。




