第287話 天空都市との取引
天空都市の神殿、玉座の間。
ミーナの簡易翻訳機のおかげで、カイルたちもようやく会話を理解できるようになっていた。
「地上の客人よ」と天使族の長が口を開く。「改めて歓迎しよう」
カイルは一歩前へ出た。「こちらこそ、歓迎してくれてありがとう」リヒトが長に伝えくれた。長は静かに頷いた。
カイルは収納袋を開き、ゴトンと音を立ててテーブルの上に巨大な魔石を置いた。その瞬間、部屋中が淡く輝き出す。
「おお……」と天使族たちの間にざわめきが広がった。
続けてカイルは、古代遺跡で手に入れた宝石、美しい装飾品、希少な鉱石を次々とテーブルに並べていく。
母が「相変わらず気前がいいわね」と呆れたように笑うと、キキは「交渉の基本よ」と涼しい顔で返した。
長は巨大な魔石を手に取り、目を細めた。「見事な魔石だ。地上には、これほどの物があるのか」
「運良く手に入れました」とカイルは答えリヒトが長に伝える。もちろん、ダンジョン産だ。
カイルはリヒトに視線を送った。
「天空都市にダンジョンがあるか聞いてくれ」
「はい」
リヒトが古代語で長に何かを尋ねる。しばらく会話が続き、長はふと驚いたような表情を見せた。そして、ゆっくりと答え始める。
翻訳機から声が流れてきた。
「そなたは……ダンジョンを探しているのか?」
「はい」とリヒトは即答した。
長は少し考え込むような間を置いてから、続けた。「この天空都市にも、試練の塔は存在する」
カイルの目が輝く。だが長はすぐに付け加えた。「だが、今は閉ざされている。誰も立ち入ることはできない」
「ダンジョンあるんだ!」とリーナが声を上げ、ヒカリも「行きたい」と目を輝かせる。
ナルサが「二人とも落ち着いて」とたしなめ、母も「まずは話を最後まで聞きましょう」と苦笑した。
「どうすれば入れますか?」とカイルが尋ねると、リヒトがそれを古代語で伝える。長は静かに微笑んだ。
「資格ある者だけが、塔の門を開けられる。もし、そなた達に資格があるなら、門は自ら開くだろう」
カイルは思わず笑ってしまった。「面白そうだ」
「その顔になると思った」とキキが呟き、ナルサは「絶対行く気だ……」と半ば諦め顔だ。
父のディスプレイには【決定】の文字が浮かんでいる。
母は苦笑しながら、「皆で行くなら、ちゃんと準備してからね」と釘を刺した。
長が立ち上がる。「地上の客人よ、まずは天空都市の客として歓迎しよう。その後、試練の塔へ案内しよう」
カイルたちは思わず顔を見合わせた。伝説の天空都市、そしてそこに存在するというダンジョン。
新たな冒険が、今まさに始まろうとしていた。




