第284話 天空都市への案内
天空都市の上空、飛行船の前に翼を持つ者達が整列していた。
先頭に立つ一人が、リヒトへ向かって何かを話しかける。聞き慣れない古代語だった。
リヒトも同じ言葉で応じる。二人の会話は、しばらく途切れることなく続いた。
「何を話してるの?」リーナが首をかしげる。
「分からない」ヒカリも同じく。
「リヒトちゃんにしか分からないわね」母が苦笑する。
「でも、ちゃんと話が通じてるみたい」キキが安堵したように言う。
「攻撃されなくなっただけでも十分よ」ナルサも胸を撫で下ろした。
しばらくして、リヒトが振り返った。
「カイル。飛行船を指定された場所へ停めてほしいそうです」
「案内してくれるのか」
「はい。歓迎……というより、監視付きですが」
その言葉に、少し苦笑いが漏れる。
飛行船は、翼を持つ者達の先導で天空都市の中央付近へと向かった。そこには巨大な石造りの発着場があり、船はゆっくりと降りていく。ゴォォォ……やがて静かに停止した。
しかし、周囲には武装した翼の戦士達が並んでいた。槍、剣、弓、飛行船をぐるりと取り囲んでいる。
「完全に包囲されてる……」ナルサが呟く。
「警戒されてるわね」キキも表情を引き締めた。
「刺激しないようにしましょう」母が静かに言う。
父はディスプレイに短く表示。【警戒】
リヒトが代表の天使族と再び言葉を交わす。何度か頷き、そしてカイルの方へ戻ってきた。
「この都市の長が私に会いたいそうです。」そう言うと、リヒトはそのまま一人で歩き出そうとした。
カイルがその肩をつかんだ。「待て」
「え?」
カイルの表情は真剣だった。「一人で行くな」
「でも……」
「まだ相手が完全に信用できるとは限らない。もし何かあったらどうする」
「カイルの言う通りよ」母が優しく微笑む。「家族は一緒に行動しましょう」
「私も賛成」キキが頷く。
「一人で行かせるのは危険ね」ナルサも同意した。
リーナがリヒトの手をぎゅっと握る。
「一緒に行こう!」
「一人は駄目」ヒカリも小さく言い添えた。
リヒトは少し照れたように笑った。
「……ありがとうございます」
「よし、全員で行こう」カイルが言う。
その様子を見ていた翼を持つ代表者は、小さく頷いた。どうやら、家族全員で来ることを認めたようだった。
その堂々とした立ち姿を見つめながら、カイルはぽつりと呟く。「この人の上に、もっと偉い人がいるんだろうな。いよいよ天空都市の長とご対面か」
こうして一行は、厳重な警備に囲まれながら、天空都市の中心部へと案内されていくのだった。




