↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

289/324

第281話 浮上する天空のピラミッド



 地下神殿では、慌ただしい作業が続いていた。


 カイル達は飛行船から運び込んだ大量の魔石を次々と魔力供給装置へ投入していく。


 装置の周囲には淡い光が流れ、空気そのものが震えているようだった。


「出力を上げるぞ」制御盤を操作しながらカイルが言う。


「供給系統、安定しています」ミーナが即座に報告する。


「古代装置側も問題ありません」リヒトも解析結果を確認しながら頷いた。


 準備は整った。魔力供給が始まる。低い駆動音が神殿中へ響き渡った。


 床に刻まれた魔法陣が光る。壁面の古代文字が浮かび上がる。無数の柱が青白く輝き始めた。


「また光った!」リーナが目を丸くする。


「前より強い」ヒカリも見上げながら呟いた。


「本当に眩しいわね」母は目を細める。


 前回とは明らかに違う。


 施設全体が本格的に目覚めようとしているのが誰の目にも分かった。


 次の瞬間だった。


 轟音とともに天井の巨大魔法陣が輝きを増す。光の奔流が放たれた。


 巨大な光線は地下神殿を突き抜け、空へ向かって一直線に伸びていく。


 雲を貫き遥か上空へ。


 まるで何かに向けて信号を送っているようだった。


 数秒後、光はふっと消える。再び静寂が訪れた。


「……終わった?」ナルサが恐る恐る尋ねる。


「今度もこれだけ?」キキも首を傾げた。


 カイルとミーナだけは違う場所を見ていた。


「見たか?」カイルが呟く。


「確認しました」ミーナが頷く。


 あの光は真上に向かったわけではない。

わずかに角度が付いていた。


 何か特定の場所を狙って照射されたように見えたのだ。


 カイルは口元を緩める。

「やっぱりな目印か!」

 

 その時だった、大地が唸るような振動を発した。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……神殿全体が大きく揺れる。


「またなの!?」ナルサが悲鳴を上げる。


「みんな離れて!」母が声を張った。


「すごく揺れてる!」リーナが慌てて周囲を見回す。


「かなり大きい」ヒカリも表情を引き締めた。


 揺れはどんどん強くなる。柱が震え。床が軋み。空気そのものが唸っていた。


 ミーナが珍しく緊迫した声を上げる。

「危険です。施設全体の稼働を確認」


 その報告を聞いた瞬間、リヒトの顔色が変わった。「まさか……」


 一方その頃、地上では異変が起きていた。


 巨大なピラミッドの周囲で土砂が崩れ落ちる。


 森の木々が激しく揺れた。そして、ゆっくりとピラミッドが大地から離れ始めた。


「全員退却だ!」カイルが即座に判断を下す。


 父はすぐに子供達の近くへ移動する。


「こっちよ!」母が呼びかける。


 キキはリーナを抱き上げた。ヒカリはリヒトの腕を引く。


 ナルサは誰よりも早く走り出していた。

「逃げるぅぅぅぅ!」


 全員が飛行船へ戻る。緊急離陸。安全圏まで後退したところで、ようやく彼らは外を見る余裕を得た。

 

 誰もが言葉を失った。


 巨大なピラミッドが空に浮いていた。完全にまるで当たり前のように。


「……飛んでる」リーナが呆然と呟く。


「飛んでる」ヒカリも同じ言葉を繰り返した。


「夢みたいね……」母は目を見開いていた。


「本当に浮くなんて」キキも信じられないという顔をする。


 ナルサだけは頭を抱えていた。

「帰りたい……」心からの本音だった。

 

 驚きはそこで終わらなかった。


 浮上したピラミッドが、さらに上昇を始めたのだ。


 ゆっくりとだが確実に空へ向かって昇っていく。


「まだ上がるの!?」リーナが叫ぶ。


「どこか行く気?」ヒカリが首を傾げた。


 その時だった。


「待ってください!」突然、リヒトが大声を上げる。


 全員の視線が集まった。


 彼女は慌てて古代文字の記録を広げている。顔色は真剣そのものだった。


「そういうことだったんですね……!」震える声で呟く。


 これまで断片的にしか読めなかった文字。


【天空】【門】【到達】【昇天】【帰還】


 意味不明だった言葉達が、今になって一つに繋がった。


 一方でミーナは既に別の作業を始めていた。観測装置を操作しながら、浮上したピラミッドの解析を進めている。


「内部構造を解析中。情報取得率二十七パーセント。浮遊機関を確認」次々と結果がカイルに表した。


「相変わらず頼もしいな」カイルが感心したように言った。


 リヒトは最後のページへ視線を落とした。ある一文を見つける。その瞬間、彼は固まった。


「リヒトちゃん?」母が心配そうに声を掛ける。


 リヒトはゆっくり顔を上げた。

「この施設は……天空の都市へ向かうための乗り物です」


 一瞬。


 船内から音が消えた。誰も言葉を発せない。

 

 カイルだけが満面の笑みを浮かべた。

「やっぱりか」心底楽しそうだった。


「やっぱりじゃない!!」ナルサの悲鳴が飛ぶ。

 

 空高く、ピラミッドはなおも上昇を続ける。


 その先、雲海の彼方、遥か遠くに。


 巨大な影がゆっくりと姿を現し始めていた。誰もが伝説だと思っていた場所。

 

 その正体が、ついに明らかになろうとしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。