↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

288/325

第280話 古代施設への燃料補給



 地下神殿の中央。


 リーナが腰掛けた玉座から放たれた光は、天井を突き抜けるほどの巨大な柱となり、空へ向かって一直線に伸びていた。


 眩しいほどの輝きに、誰もが息を呑む。

轟音とともに光が一気に収束した。


 まるで巨大な砲撃のような閃光が空へ撃ち出され、雲海を貫いて消えていく。


 その場にいた全員が思わず身構えた。数秒後には静寂が戻っていた。


 床の振動も止まり、神殿は再び静まり返る。


「……終わったの?」ナルサが恐る恐る口を開く。


「みたいね」キキも周囲を見回した。


「心臓に悪いわ……」母もほっと胸を撫で下ろす。


 玉座に座ったままのリーナは首を傾げた。「結局なんだったんだろ?」


「光った」ヒカリがいつも通り簡潔に答える。


 父のディスプレイには【以上】の一言だけが表示されていた。


 どうやら父もよく分かっていないらしい。


 カイルは黙ったまま施設を見つめていた。


「カイル?」ミーナが声を掛ける。


 カイルは床に刻まれた魔導回路や壁面の装置を順番に眺めながら、ゆっくり口を開いた。「……おかしい」


「何がですか?」リヒトも近寄る。


「この施設、本来ならもっと動くはずだ」


 その言葉に全員が顔を見合わせた。


「もっと?」ナルサが嫌そうな顔をする。


 カイルは頷いた。

「起動した直後に出力が急激に落ちた。まるで途中で力尽きたみたいだったんだ」


 ミーナがすぐに解析を始める。しばらくして結果が表示された。

「カイル様の推測は正しい可能性があります」


「本当なの?」キキが驚く。


「施設内部の魔力残量が極端に少ない状態です」ミーナが解析結果を語る。


 リヒトも壁の文字を確認しながら頷いた。「長い年月の間に蓄積エネルギーを使い切ったのかもしれません」


 カイルは思わず笑った。「なるほど」

その目は完全に研究者の目だった。

「燃料切れか」


 ナルサは嫌な予感しかしなかった。キキも同じだった。


 母は苦笑し、父のディスプレイには

【始まった】と表示される。


 家族全員が察した。嫌な方向へ話が進み始めたことを。


「燃料を補給しよう」カイルが当然のように言った。


「待ちなさい」ナルサが即座に止める。


「嫌な予感しかしないんだけど」キキも続いた。


 カイルは既に神殿の奥を見ていた。キキとナルサの話は完全に聞いていなかった。


 その日から遺跡は慌ただしくなった。飛行船から資材が次々と運び込まれる。


 ゴーレム達が大型機材を運搬し、ミーナとリヒトは施設の調査を続ける。


 神殿の一角には即席の研究区画まで作られていた。


 その様子を見ながらナルサが呆れたように言う。「ねえ」


「なんだ?」


「これ本当に旅行だった?」


 カイルは真顔で答えた。「旅行だ」


「絶対違う!」即座にツッコミが飛んだ。


 数日後。


 地下神殿には巨大な魔力供給設備が完成していた。


 高純度魔石。大型蓄魔装置。魔力変換器。複数の補助制御盤。


 どう見ても個人旅行で使う設備ではない。


「完成しました」ミーナが報告する。


「凄いですね……」リヒトも感心したように設備を見上げる。


 母はその規模に目を丸くした。

「これ、どれくらいお金が掛かってるの?」


 キキが遠い目をする。

「家なら何軒も建つわね」


「聞かなきゃ良かった……」母は頭を抱えた。


 起動実験の日、神殿には全員が集まっていた。


 カイルは制御盤の前。ミーナは監視装置。リヒトは補助。


 リーナとヒカリは少し離れた場所で応援担当。


 父は周囲を警戒し、母は何故かお茶の準備をしている。


 いつも通りの光景だった。


「魔力供給開始」カイルがスイッチを操作する。


 低い駆動音が神殿に響いた。蓄魔装置から膨大な魔力が流れ出し、古代施設へ注ぎ込まれていく。


 床が光る。柱が光る。壁の紋様が次々と輝き始める。


 まるで眠っていた巨人が目を覚ますようだった。


「出力上昇」ミーナが報告する。


「前回を超えました」リヒトの声にも緊張が混じる。


 ナルサは一歩後ろへ下がった。

「絶対また何か起きる……」


「私もそう思う」キキも同じ気持ちらしい。


 母は子供達を手招きした。

「みんな、少し離れておきましょうね」


 天井に描かれた巨大な魔法陣が再び輝き始める。


 前回とは比較にならないほどの光。神殿全体が震えた。


「やっぱり燃料不足だったんだな」カイルは満足そうに笑う。


「出力、まだ上昇中です」ミーナが驚いた声を上げる。


「まだ!?」リヒトも目を見開いた。


 何千年も眠っていた施設が、今まさに本来の姿を取り戻そうとしている、そんな感覚だった。


 遥か上空。


 雲の向こう側で何かが反応した。誰にも見えないが確かに何かが目覚め始めていた。


 カイルは空を見上げながら口元を吊り上げる。「当たりだな」


 その笑顔を見たナルサは深いため息をついた。

「やっぱり嫌な予感しかしない……」


 その予感はきっと正しい、空の都市へ続く扉は今まさに、ゆっくりと開こうとしていたのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。