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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第276話 空の都市はどこだ?



 巨大飛行船は、どこまでも続く雲海の上を進んでいた。


 青空は高く澄み渡り、眼下には白い雲の絨毯が広がっている。


 景色だけなら最高の空の旅だった。


 飛行船の展望窓に張り付いているリーナは、少し不満そうだった。


「まだ見えないね」


 双眼鏡を覗きながら呟く。隣のヒカリも同じ方向を見つめる。


「見当たらない」


 リヒトも窓際に立ちながら首を傾げた。

「視界内に人工建造物らしきものはありません」


「そもそも本当にあるのかしら」ナルサが呆れたように言う。


 キキも苦笑した。「伝説だからね」


 誰も否定できなかった。


 それから数日後、カイルたちは伝承や古文書に記されていた座標へ到達した。


 飛行船の操舵室には全員が集まっている。


 期待を込めて前方を見る。しかし、そこにあったのは青空、雲海、以上。


 本当にそれだけだった。空の都市らしき影はどこにもない。


「……ないね」リーナがぽつりと呟く。


「ない」ヒカリも短く答える。


「ありませんね」リヒトも冷静に結論を出した。


 ナルサは肩を竦める。「ほらね」


「予想通りだわ」キキも苦笑した。


 カイルは諦めきれず、机いっぱいに広げた地図と資料を見比べていた。


 座標を確認する。方角を確認する。古文書も読み直す。


 もう一度周囲を見渡す。やはり何もない。


「おかしいな……」真剣に悩んでいる。


「全然おかしくないわよ」ナルサが即座に突っ込んだ。「伝説なんだから」


「そうそう」キキも同意する。


 カイルは少しだけ肩を落とした。


 そんな様子を見ていたリーナが明るく笑う。「じゃあ観光旅行だね!」


「空の旅」ヒカリも頷く。


「景色は綺麗ですし」リヒトも穏やかに言った。


 それだけでも十分価値のある旅だった。


 その時だった。


 操舵室で計器を監視していたミーナが顔を上げる。「反応を確認しました」


 声の調子が少し変わっていた。


 カイルが振り返る。「何だ?」


「大型飛行生物、多数接近中」


 直後。


 飛行船内に警報が鳴り響いた。


ブォォォォォン!!


 赤い警告灯が点滅する。


「来たぁぁぁ!!」ナルサが頭を抱えた。


 雲海の中、黒い影が見えた。一つ、二つ、十、二十。さらに増える。群れだった。


「多くない!?」リーナが叫ぶ。


「大群ですね」ヒカリが短く告げる。


 リヒトは冷静に分析した。「三十体以上います」


 雲を突き抜けるように現れた、ワイバーンの群れだった。


 鋭い牙。巨大な翼。空の捕食者。


 その大群が飛行船目掛けて一直線に迫ってくる。


ギャアアアアアア!!


 空気を震わせる咆哮が響いた。


「笑えない数よ!」キキの顔も引きつっている。


 カイルだけは違った。むしろ楽しそうだった。「ちょうどいいな」


「何が!?」ナルサが叫ぶ。


「実戦データが取れる」


「やっぱりそれか!」全員の予想通りだった。


 飛行船内部。巨大格納庫。カイルは迷いなく指示を飛ばす。「巨兵射出準備」


「了解」ミーナが即座に応じる。


 巨大ハッチが開く。眼下には青空。その先にはワイバーンの群れ。


 一号機のカイル。二号機のミーナ。三号機のキキ。四号機のナルサ。


「また私!?」ナルサの悲鳴が響いた。


「射出!」カイルが命令を発する。

 

ドォォォン!!


 四機の巨兵が同時に飛び出した。推進器が唸りを上げる。巨大な機体が空中で姿勢を安定させる。


 迫り来るワイバーンたちが一瞬だけ動きを止めた。


 見慣れない巨大な存在に戸惑ったのだろう。


 しかし、次の瞬間には襲い掛かってきた。


 先頭を飛ぶカイル機が加速する。

「行くぞ!」


 拳が唸る。ドゴォォォン!!


 先頭のワイバーンが吹き飛んだ、続けて蹴りさらに体当たり。


 まるで空中格闘戦だった。次々とワイバーンが撃墜されていく。


 一方のミーナ機。戦い方は正反対だった。無駄がない。冷静。正確。

「目標排除」拳が一閃。ワイバーン撃墜。


「目標排除」また一体。まるで作業のように敵を落としていく。


 キキは最初こそ戸惑っていた。戦ううちに感覚を掴み始める。「こう!?」


 思い切り拳を振るう。命中。ワイバーンが吹き飛んだ。


「やった!」思わず笑顔になる。意外と楽しい。認めたくはないが。


 そして、ナルサ。


「来ないでぇぇぇぇ!!」完全に悲鳴だった。


 しかし、恐怖のあまり放ったパンチが見事に命中。


 ワイバーンが吹き飛ぶ。


「倒した!?」本人が一番驚いていた。


 さらに突っ込んできた敵を慌てて蹴る。

「なんで当たるのよ!?」本人にも分からない。


 飛行船の甲板では応援団が盛り上がっていた。


「頑張れー!」リーナが大声で叫ぶ。


「優勢」ヒカリが淡々と分析する。


「もはや圧勝ですね」リヒトも苦笑していた。


 父の胸のディスプレイには短く表示される。【蹂躙】


 十分後、戦闘は終わっていた。


 青空に静寂が戻る。ワイバーンの群れは完全に撤退、あるいは撃墜されていた。空に残る敵影は一つもない。


「よし」カイルが満足そうに頷く。


「実戦データ取得完了」ミーナも記録を確認している。


「思ったより動けたわね」キキも少し誇らしそうだった。


 ナルサは「私はもう帰りたい……」本気で疲れ切っていた。


 その時だった。


 ナルサ機がふらりと揺れる。「あれ?」

機体が傾く。推進器の出力も不安定になる。


 次の瞬間、巨兵はゆっくりと高度を失い始めた。


「え?」ナルサの顔から血の気が引く。


 眼下には果てしない雲海。機体はそのまま落下を始めていた。


「ちょっ――待ってぇぇぇぇぇぇぇ!!」




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