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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第274話 空飛ぶ母艦計画

 第一回小型ゴーレムバトル大会が大成功のうちに終わってからしばらく後。


 カイルはいつものように新しい研究へ没頭していた。


 場所は工場の飛行船開発棟。


 何度も増築を重ねた巨大な格納庫の中央に、それは鎮座していた。


 新型飛行船、以前の機体を遥かに上回る巨体だった。


 その姿を見上げながら、ナルサは思わず息を呑む。「……大きいわね」


 隣のキキも目を丸くした。「前の飛行船よりずっと大きくない?」


 ミーナが手元の資料を確認する。「全長は約二・七倍です」


「二・七倍!?」キキは思わず声を上げた。「それ、もう別物じゃないの?」


 飛行船の全長は百メートルを超えていた。


 船体には高品質な魔石が惜しみなく使われ、装甲も大幅に強化されている。


 心臓部には大型魔導炉。そして、最大の特徴は船体内部だった。


 巨大な格納庫。そこには新型巨兵ゴーレムが四機並んでいる。まるで軍艦の内部のような光景だった。


 リーナは目を輝かせる。「すごい……かっこいい!」


 ヒカリも珍しく興味深そうに見上げていた。「巨大機械基地です」


 リヒトは少し困ったように苦笑する。「どう見ても軍事施設ですね」


 するとカイルが即座に否定した。「違う」


 全員が揃って言う。「「違わない」」



 今回の目的は新型飛行船の試験運用だった。


 飛行性能の確認。格納庫の運用試験。そして、巨兵ゴーレムの発進と回収。


 カイルは設計図を見ながら説明する。「実戦を想定した訓練だ」


 ナルサは嫌な予感しかしなかった。「何と戦うつもりなの?」


 カイルは顔も上げずに答える。「そのうち必要になる」


「その答えが一番怖いんだけど」


 搭乗者も決まっていた。一号機はカイル。二号機はミーナ。三号機はキキ。四号機はナルサ。


 説明を聞いたナルサが固まる。「待って」


「何だ」


「なんで私が乗るの?」


 カイルは当然のように答えた。「操縦訓練」


 キキも慌てて口を開く。「私も聞いてないんだけど?」


「必要だからな」


 ミーナが補足する。「既に訓練計画に組み込まれています」


「「いつ決まったのよ!」」二人の抗議は完全に無視された。


 やがて飛行船が起動する。大型魔導炉が低い唸りを上げた。


 船体全体が微かに震える。そして、ゆっくりと地面から浮かび上がった。


 格納庫の扉が開き、巨大な飛行船が空へ出る。


 その姿は圧倒的だった。王都の人々もすぐに異変に気付いた。


「あれ何だ!?」

「飛行船だ!」

「普通より大きくないか!?」


 見上げる住民達の間に驚きの声が広がる。


 飛行船内部。


 操縦席でカイルは満足そうに計器を眺めていた。「安定してるな」


 ミーナも確認する。「魔導炉正常。推進機関も問題ありません」


 キキは窓の外を見ながら少し緊張していた。


 ナルサに至っては顔色が悪い。「まだ引き返せない?」


「無理だな」即答だった。


 そして、訓練が始まる。


「射出準備」


「了解しました」


 格納庫の扉が開いた。眼下には青空と雲海。


 ナルサの背筋に冷たいものが走る。「嫌な予感しかしないんだけど」


「奇遇だわ」キキも同意した。


「射出!」カイルの声と同時に一号機が飛び出した。


 巨兵ゴーレムの推進器が輝く。空中で姿勢を安定させ、そのまま飛行を開始した。


「成功だ」


 続いてミーナ機。こちらも問題なく飛行する。


 キキは深呼吸した。「やるしかないわね……」


 意を決して射出。一瞬機体が揺れたが、すぐに安定する。


「……本当に飛んでる」驚きと感動が混ざった声だった。


 そして、最後。ナルサの番である。


「嫌ぁぁぁぁぁぁ!」悲鳴と共に射出された。


 数秒後。


「飛んでるぅぅぅぅ!」泣きそうな声が通信に響く。


 カイルは大笑いしていた。


 空には巨大な飛行船。その周囲を四機の巨兵ゴーレムが飛行している。


 壮観な光景だった。


 飛行船の窓から見ていたリーナは目を輝かせる。「すごい!」


 ヒカリも珍しく感心していた。「格好いい」


 リヒトは冷静に分析する。「実用性も高そうですね」


 その後は本格的な訓練が続いた。加速。

減速。旋回。編隊飛行。


 どの試験も順調だった。そして、最後は帰還訓練。


 飛行船後部の格納庫へ機体を戻していく。


 カイル機。成功。


 ミーナ機。成功。


 キキ機。成功。

 

 問題はナルサだった。「狭い! 狭い! 狭い!」必死に操縦しながら接近する。


 そして、ゴンッ。「痛っ!」格納庫入口に肩をぶつけた。


 機体に大きな損傷はなかったが、ナルサの悲鳴が響く。


 通信越しにカイルの笑い声が聞こえた。

「はははは!」


「笑うな!」ナルサはブチキレる。


 数時間後。


 すべての訓練が終了した。飛行船は無事に工場へ帰還する。


 カイルは満足そうに頷いた。「問題なしだな」


 ミーナも報告する。「運用可能と判断します」


 キキは少し疲れた顔をしながらも笑った。「慣れれば楽しいかもしれないわね」


 一方でナルサは椅子にもたれかかっていた。「もうしばらく飛びたくない……」


 しかし、当のカイルは既に次の設計図を書き始めている。


 ナルサが嫌な顔をした。「今度は何?」


 カイルは真顔で答える。「改良案だ」


「早すぎるでしょ……」


 ミーナは慣れた様子で頷く。「いつものことです」


 父の胸のディスプレイにも文字が表示される。【通常運転】


 誰も反論できなかった。


 こうして飛行船と巨兵ゴーレムによる空中母艦運用計画は成功を収めた。


 だが、満足したのは一瞬だけだった。


 カイルの頭の中では既に次の構想が動き始めていた。




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