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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第269話 もふもふダンジョン大繁盛

 もふもふダンジョンが開園してから一ヶ月。


 王都では、ちょっとした社会現象になっていた。


 最初は誰もここまで人気になるとは思っていなかった。


 カイルですら「子供達が喜んでくれればいいな」くらいの気持ちだった。


 だが現実は違った。予想を遥かに超えていた。

 

 開園初日。


 訪れたのは近所の子供達だった。珍しい魔物達と触れ合い、楽しそうに帰っていった。


 二日目、今度は家族連れが増えた。


 三日目、噂を聞いた冒険者達が見物に来た。

 そして、一週間後。


「また列が伸びてる……」ナルサは入口前を見て思わず呟いた。


 朝だというのに、既に長い行列ができている。


 子供達。家族連れ。若い冒険者。商人。

 さらには貴族らしき馬車まで見えた。


 キキも驚いたように目を丸くする。「本当にすごいわね……ここまでとは思わなかったわ」


 もはや普通の観光施設並みの賑わいだった。


 ダンジョンの中では今日も歓声が響いていた。


 スライムがぽよんぽよんと跳ねる。

 ラビットがぴょんぴょん走り回る。

 子狐が来場者の足元にすり寄る。


 フェアリー達は空中を楽しそうに飛び回っていた。


「かわいいー!」

「見て見て!」

「触っていい!?」


 子供達の目は輝いている。


 普通のダンジョンなら悲鳴が聞こえる場所だ。


 だがここでは違う、聞こえてくるのは笑い声ばかりだった。


 そんなある日、予想外の来客が現れた。


「お、王妃様!?」ナルサが声を裏返す。


 キキも思わず固まった。


 護衛騎士達に囲まれながら現れたのは王妃本人だった。


 さらに後ろには貴族の子供達までいる。

 王都でも有名な家の令嬢や令息達だ。


 緊張するスタッフ達とは対照的に、王妃は楽しそうだった。


「この子、とても可愛らしいですわね」


 腕の中には子狐、気持ち良さそうに丸くなっている。


 王妃の表情は完全に年相応の女性のものだった。


 護衛騎士達は何とも言えない顔をしている。


 その横では貴族の子供達がラビットを追いかけ回していた。


「待ってー!」

「こっちだ!」


 普段は礼儀作法を叩き込まれている子供達も、この時ばかりは普通の子供だった。


 身分も立場も関係ない、もふもふの前では皆平等だった。


 そんな中で特に人気だったのがリーナだった。


「リーナお姉ちゃん!」


 いつの間にか子供達に囲まれている。


「この子は何ていう魔物?」

「どうやって抱っこするの?」

「どこ触ると喜ぶの?」


 質問攻めだった。


 リーナは慣れた様子で答える。「このラビットは耳の後ろを撫でると喜ぶよ」


 そっと撫でる、ラビットが目を細めた。

「キュッ♪」


「かわいいー!」歓声が上がる。


 リーナも嬉しそうだった。


 気付けば案内役としてすっかり定着している。


 その様子を見ながらナルサが笑う。「本当に人気者ね」


 キキも頷いた。「案外、天職なのかもしれないわね」


 リーナは照れ臭そうに笑った。


 一方その頃、研究室では別の意味で盛り上がっていた。


 ヒカリとリヒトが机に向かって真剣な顔をしている。


「もっと柔らかそうな感じが必要」

「丸さも重要」

「あと安心感」


 研究テーマは魔物だ、方向性がおかしいが……可愛い魔物の開発だった。


 数日後。


 新種が誕生する。真ん丸。ふわふわ。転がる。そして、すぐ寝る。


 リーナが抱き上げた瞬間に判定が下った。「かわいい!」


 即採用。


 さらに羽の生えた子狐。小型の羊型魔物。抱き枕のような体型をした不思議な魔物。


 次々と仲間入りしていく、そのたびに来場者は増えていった。


 夕方。


 工房ではカイルが帳簿を眺めていた。しばらく無言。もう一度確認。さらに確認。


 キキが不思議そうに覗き込む。「どうしたの?」


 カイルはゆっくり帳簿を差し出した。


 キキとナルサが帳簿を見た瞬間、固まった。


 入場料。飲食店の売上。お土産やぬいぐるみ。関連商品。すべて合わせた数字が並んでいる。


「……これ、本当に合ってる?」ナルサが恐る恐る聞く。


「何回計算しても同じだ」カイルも少し困惑していた。


 キキが苦笑する。「下手なダンジョン攻略より稼いでるじゃない」


「そうなんだよな」カイルは遠い目をした。


 世界初のダンジョン動物園。


 動物園を開園した本人が一番理解できていなかった。「何でこうなったんだろう」


「私達に聞かれても」ナルサとキキが肩をすくめる。


 閉園時間、今日もたくさんの来場者が帰っていく。


「また来てねー!」リーナが手を振る。


「また来るー!」子供達も元気よく手を振り返した。


 ヒカリは満足そうに頷く。

 リヒトも達成感に満ちた表情だった。


 来場者達は笑顔で帰っていく。冒険者ギルドも喜んでいる。王妃はすっかり常連になった。


 そして、カイルは今日も帳簿を見ながら呟く。「ダンジョンを作ったはずなんだけどな……」


 視線の先では子狐達が丸くなって眠っている。


 父のディスプレイに文字が浮かぶ。【大成功】


 ミーナも頷いた。「間違いなく大成功です」


 カイルは苦笑するしかなかった。




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