第239話 骸骨の親指
ゴーレム馬車・拠点形態。大型反応接近。緊張が走る。
しかし、その前に、カイルはふとテーブルの上に置かれた骸骨の頭を見た。
父だ。現在、頭だけ。身体側は外で警戒しているらしい。
「ほんと意味わかんない状況だよね……」ナルサが未だに慣れていない顔をする。
「頭だけで普通に会話成立してるし」キキも苦笑した。
父の頭がカタカタ。少し誇らしげだ。
カイルはその頭を見ながら、少しだけ視線を逸らした。「……親父」
頭。カタッ。反応する。
カイルは頭を掻く。珍しく、少し言いにくそうだ。
「お兄ちゃん?」リーナが不思議そうに見る。ヒカリも静かに観察していた。
カイルはため息をついて、ボソッと言った。「……助かった」
室内が静かになる。
「探しに来てくれて。ありがとな」
「カイルが素直!?」ナルサが驚く。キキも目を丸くした。
母は微笑んでいる。
父の頭が数秒停止した。そして、ゆっくりと骨の指を立てた。
グッ。
親指。しかも妙に決まっている。
カイルはそれを見て、思わず呟いた。「……カッコいいな」
沈黙。
次の瞬間、父の頭がカタカタカタカタ!!猛烈に顎を鳴らす。
「照れてます」ヒカリが分析する。
「父ちゃんてれてる!」リーナが笑った。
父の頭はさらにカタカタ。
「ふふっ」母がくすっと笑う。
「骸骨なのにわかりやすすぎでしょ」キキも吹き出した。
「親子だなぁ……」ナルサが呟く。
カイルは少し照れ臭そうに視線を逸らした。しかし、どこか嬉しそうだった。
前世では、こんな風に誰かへ感謝を言うことも、ほとんどなかった。しかし今は違う。この世界で、ちゃんと"家族"になっていた。
その時、ゴゴゴゴ……
再び大きな振動。馬車全体が揺れる。
「大型反応、目前」ミーナの瞳が発光した。
空気が変わる。父の頭も真剣になった。
カイルは立ち上がる。「……行くか」
上階層の脅威との戦いが、再び始まる。




