第233話 落とし穴
中央ダンジョン・上階層。
空気が違う。壁も床も、まるで巨大な機械の内部だ。低く響く駆動音。
ブゥゥン……
「不気味……」ナルサが周囲を見る。
「今までより危険ね」キキも警戒していた。
父のディスプレイ【警戒強化】。
しかし、カイルは少し浮かれていた。理由は単純だ。研究成果、新装備、ミーナ。全てが順調で、敵すら圧倒できる。
その油断。それが問題だった。
通路の先に、ぽつんと置かれた宝箱。
「あ!」リーナが指をさす。
「宝箱、発見です」ヒカリも確認した。
「罠反応……微弱」ミーナが分析する。
「怪しくない?」キキが眉をひそめた。
しかし、カイルは近づいた。「上階層の宝箱だ。中身が気になる」
「子供みたい……」ナルサが呆れる。
カイルはしゃがみ込んで宝箱を確認する。古代文字、魔力反応。「……解除できるな」
指を伸ばした、その瞬間。
「マスター、待っ!?」ミーナが声を上げる。
カチ。
嫌な音。次の瞬間、床が光った。
「は?」
魔法陣が展開する。「カイル!?」キキが叫んだ。
ワープホール。空間が歪み、カイルの身体が飲み込まれる。
「うおっ!?」
ドォン!!
消えた。沈黙。全員が固まる。数秒後。
「……え?」リーナ。「カイル、消失確認です」ヒカリ。
「ワープ罠!?」ナルサが青ざめた。
「だから怪しいって言ったのに!!」キキが頭を抱える。
父のディスプレイ【呆れ】。
ミーナが即座に床を解析した。「転移系高位罠。座標不明」
「おにいちゃん!?」リーナが泣きそうになる。
「救助必要です」ヒカリも珍しく焦った。
「落ち着きなさい」キキが深呼吸する。しかし、額には汗がにじんでいた。
上階層、未知の領域。そのどこかへカイルは一人で飛ばされた。
当の本人。「っつぅ……」
別空間。真っ暗な部屋に一人転がっていた。カイルは起き上がる。
「……やったな」
完全に罠だった。静まり返る空間。しかし、遠くで音が聴こえる。ギギ………。
何かが動く音。カイルはゆっくりと顔を上げた。「……これは」
嫌な予感しかしなかった。




