閑話 王宮料理人たちの戦い
王宮・大厨房。今日も料理人たちは忙しい。
しかし最近、王宮の空気は少し変わっていた。理由は単純だ。
「プリン追加だ!」
「急げ!」
「茶碗蒸しの火加減見ろ!!」
現場が戦場になっていた。数週間前。カイルが王宮へ持ち込んだ料理。プリンと茶碗蒸し。
最初、料理人たちは半信半疑だった。しかし、王妃が大絶賛し、さらに王まで気に入った。結果、王宮内で爆発的な人気となった。
「本日の茶会にもプリンを」
「来客用に追加だ!」
「茶碗蒸しは貴族席へ!」
貴族たちも次々と求め、料理人たちは大混乱だった。厨房の隅では、若手料理人が泣きそうになっていた。
「なんで固まらないんだぁ……!」
「火が強い!」
「弱すぎる!」
「表面に穴空いた!!」
プリンは繊細だった。茶碗蒸しも難しい。火加減、蒸気、温度。微妙な調整が必要だ。
「丁寧にやれ!!雑に作るな!!」料理長が怒鳴る。
しかし、その料理長自身も、真剣だった。カイルから教わった手順を何度も見返す。「……なんだこの発想」
卵料理。しかし既存の料理とは全く違う。料理長は密かに認めていた。「天才か変人だな、あいつ」
両方かもしれない。
その頃、王妃の茶会では貴族夫人たちが盛り上がっていた。
「まぁ、なめらか!」
「この甘味……!」
「茶碗蒸しも上品ですわ!」
「特別なのよ?」王妃は少し誇らしげだった。
厨房へ戻る。
「また王妃様から追加注文です!」若手料理人が叫んだ。
「うわあああ!!」全員の悲鳴が響く。
戦場だった。料理長は額を押さえる。「……カイルめ。とんでもない物を広めやがって」
しかし、口元は少し笑っていた。新しい料理、新しい技術。料理人として正直、楽しかった。
「次は何を持ち込む気だ……?」料理長が静かに呟く。
その頃カイルは、王宮の混乱など知らずに普通にダンジョンへ向かっていた。




