第227話 ミーナ
数ヶ月後。
ついにカイルの工房中央に、一体のゴーレムが立っていた。人型。滑らかな白銀の装甲。そして、静かに灯る瞳。
キキが息を呑む。「……完成したの?」
ナルサも緊張気味に続く。「動くの……?」
父のディスプレイに文字が浮かぶ。【観察】
カイルは頷き、静かに前へ出た。「起動」魔力回路が輝く。
ブゥゥン……
ゴーレムの瞳に光が灯り、ゆっくりと顔が上がる。そして。
「……起動確認」
ナルサが飛び上がった。「しゃべった!?」
キキも驚愕する。「自分で!?」
カイルは小さく笑う。
「完全自立型ゴーレム。自己思考型だ」
ゴーレムは周囲を見渡した。
「周辺環境確認。対象認識」
視線が一人ずつに向く。だがその顔は、無表情だった。白い能面のようだった。
リーナが後ろへ下がる。
「……こわい」
ヒカリも静かに頷く。「夜道遭遇、危険対象です」
キキも苦笑いを浮かべた。「まぁ、ちょっと怖いわね」
ナルサが小声でつぶやく。「夢に出そう……」
沈黙。
カイルはゴーレムを見た。「……そうか?」
全員の答えは、即答だった。
「「「「そう」」」」
数日後。工房にて。カイルは再調整を行っていた。能面のようだった顔が変えられていく。柔らかい輪郭。優しい目元。どこかリーナに似ていた。
完成。
リーナが見上げて目を丸くする。「おぉ……!」
ヒカリが淡々と分析する。「親近感、向上しました」
キキが笑った。「かなりマシになったわね」
ナルサもほっと息をつく。「今度は怖くない!」
AIゴーレムが言う。「外見変更、確認。問題ありません」
リーナが近づいた。じーっと見上げる。そして、「ミーナ!」
全員が振り向く。
リーナは笑顔だった。「この子、ミーナ! わたしの妹ぶん!」
カイルが聞き返す。「……名前か?」
リーナが大きく頷く。「うん!」
AIゴーレムのミーナは、静かにリーナを見つめた。数秒後。「名称確認。ミーナ」
小さく頭を下げる。「よろしくお願いします、お姉様」
リーナの目が輝いた。「かわいい!!」
そのまま抱きつく。ミーナは少し固まった。
「……行動解析不能ですね」ヒカリが言う。
「姉妹認定、完了」キキが笑う。「もう家族扱いね」
ナルサも微笑んだ。「なんかいいなぁ」
母は優しく見守る。「賑やかになるわね」
父のディスプレイが光る。【家族増加歓迎】
カイルは静かにミーナを見た。完全自立型AIゴーレム。前世で完成できなかった夢。それが今は笑っていた。
ミーナがカイルを見る。「マスター。次の指示を」
カイルは少し考え小さく笑った。
「……好きに生きろ」
ミーナは一瞬停止した。そして、「命令、理解困難」
リーナが手を引く。「いっしょにあそぼ!」
ミーナ。「……了解しました」
その声は、ほんの少しだけ柔らかく聞こえた。




