第223話 宝物庫の片隅で
王宮・地下宝物庫。
巨大な扉がゆっくりと開く。
ゴゴゴゴ……
重厚な音、冷たい空気。中には山のような財宝。黄金、宝石、魔剣、古代魔導具。
「すご……」ナルサが目を見開く。
「本当に国宝庫じゃない……」キキも呆れた。
父のディスプレイ【高額空間】。
「好きな物を一つ選べ。金でも武器でもいい」王・レオンハルトが腕を組む。王妃も楽しそうに見ていた。
しかし、カイルは宝石を見ない。魔剣にも興味なし。ズンズンと奥へ進んでいく。
「嫌な予感」キキが呟く。
「絶対変なの選ぶ」ナルサも頷いた。
カイルは歩く、歩く、さらに奥へ。そして、ピタリと止まった。部屋の隅、埃をかぶった棚。そこにあったのは、古びた箱型の機械。画面のような板、ボタン、奇妙な配線。この世界では誰も用途が分からない物だ。
しかし、カイルの目が開かれた。「……っ!」
珍しく、本当に珍しく、表情が変わる。
「え?」キキが驚く。
「なにそれ?」ナルサも見た。
カイルはゆっくりと近づき、震える手で埃を払う。画面、キーボードのような配列。そしてカイルが呟いた。「……パソコン?」
全員。「ぱそこん?」
意味不明だった。しかしカイルだけは違う。前世の記憶、"文明"、その欠片。
カイルは完全に子供の顔になっていた。「マジかよ……!」
大事そうに、本当に宝物のように抱き上げる。
「そんなに?」キキがぽかんとする。
「金塊より?」ナルサも困惑した。
「こっちの方が価値ある」カイルは即答した。
「はははは!本当に変な少年だな!」王が大笑いする。
「宝石にも見向きしないなんて」王妃も口元を押さえて笑った。
父のディスプレイ【息子歓喜確認】。
「これ、貰います」カイルは真剣だった。
「ああ、持っていけ。そんなガラクタでいいならな」王は苦笑しながら頷く。
「絶対ガラクタじゃない顔してる」キキが呟く。
「うん……」ナルサも苦笑した。
カイルはまるで壊れ物を扱うように慎重に抱えた。
「それは何なんだ?」王が興味深そうに聞く。
カイルは少し考えて言う。「……昔の知識です」それだけだった。
王は深くは聞かない。ただ笑う。「まぁいい。お前が喜ぶなら価値はあるんだろう」
カイルは小さく頷いた。その目は完全に研究者の目だった。古代文明の遺物、未知の機械。それが何をもたらすのか、まだ誰も知らない。しかしカイルの胸は久しぶりに高鳴っていた。
「……面白くなってきた」静かに呟いた。




