第220話 甘い依頼
カイルの屋敷・訓練場。
ガキィン!!
金属音が響く。カイルは《パワードスーツ》を着たまま、ゴーレム相手に訓練していた。動きは洗練されている。無駄がない。
「もう少し出力を――」
踏み込み。ドン!!一撃でゴーレムを吹き飛ばす。
キキが腕を組んで見ている。「だいぶ仕上がってきたわね」
ナルサも頷く。「うん、前より全然違う」
父の胸のディスプレイ【良好】
カイルは軽く息を吐く。「……よし」装備を解除する。「ダンジョン行くか」
キキが即反応。「また?」
ナルサも苦笑。「ほんと好きだね……」
その時。「カイルー」
母の声。全員が振り返る。
母が手を振っていた。「ちょっといい?」
カイルが近づく。「どうしたの」
母は少し嬉しそうに言う。「この前のプリン、覚えてる?」
カイルは頷く。「……うん」
リーナとヒカリの機嫌を直した、あれ。
母が続ける。「王妃様が興味持っちゃって」
キキが吹き出す。「もう広まってるの?」
ナルサも驚く。「早くない!?」
母は苦笑しながら、少し申し訳なさそうに言う。「食べてみたいって」
沈黙。カイル、無言。
キキがニヤリとする。「なるほど?」
ナルサが小声。「どうするの?」
「作ってくれない?」
カイルは少し考える。
ダンジョン。訓練。そして……。
「……王妃か」
ため息。
キキが笑う。「逃げられない相手ね」
父の胸のディスプレイ【重要案件】
ナルサも頷く。「たしかに……」
母が優しく言う。「お願い」
短い沈黙。そして。
「……わかった」
キキが肩をすくめる。「決まりね」
ナルサが笑う。「ダンジョン延期だ」
カイルはキッチンへ向かう。「材料は?」
母がすぐ答える。「揃ってるわ」
完全に準備済みだった。
キキが呟く。「逃げ道なかったわね」
父の胸のディスプレイ【調理開始】
こうしてダンジョンより優先されたのは、まさかの"プリン作り"。だが、相手は王妃。失敗は許されない。
カイルは静かに気合を入れる。「……完璧に作る」
戦いとは別の勝負が、始まった。




