第218話 機嫌とプリン
夜、カイルの屋敷。
ゴーレム馬車が静かに止まる。カイルたちは少し疲れた様子で降りた。
「……やりすぎたな」
キキが苦笑する。「完全にね」
ナルサも肩を落とす。「時間忘れてた……」
母がため息交じりに言う。「怒られるわね」
その瞬間。
バン!!
扉が勢いよく開く。リーナとヒカリ。腕を組んで立っていた。
「おそい!!」
「帰還時刻、大幅遅延です」
完全に怒っている。カイル、固まる。
キキがそっと目を逸らす。「……来たわね」
ナルサは小声。「怖い……」
リーナがズンズン近づく。「どこいってたの!?」
ヒカリも続ける。「報告なし、問題です」
カイルは少し考え「……ダンジョン」と
正直に答える。
沈黙。そして。
「ずるい!!」
「無断行動、違反です」
怒り、倍増。
母がなだめる。「ごめんなさいね」
だが、二人の機嫌は簡単には戻らない。
リーナがプンスカ。「いきたかった……」
ヒカリも静かに怒る。「同行希望、却下された」
カイルはため息をついて、キッチンへ向かう。
キキが首を傾げる。「なにする気?」
カイルは振り返らず言う。「機嫌取りだ」
しばらくして、甘い香りが漂う。
ナルサが反応する。「いい匂い……」
母も微笑む。「懐かしい感じね」
テーブルに並ぶ、小さな器。中にはなめらかな黄色いデザート。
「なにこれ?」リーナが覗き込む。
「プリンだ」
ヒカリが言う。「未知の食品」
カイルは短く説明する。「甘いよ」
リーナの目が輝く。「たべる!」
スプーンですくう。ぱくっ「……!!」
一瞬止まる。そして。
「おいしい!!」
ヒカリも食べる。「……味は良好で甘いです」
キキも一口。「……なにこれ、うま」
ナルサも驚く。「すごい……!」
母は優しく笑う。「久しぶりね」
リーナはすっかり上機嫌。「もっと!」
ヒカリも。「追加要求です」
カイルは肩をすくめる。「まだある」
完全に機嫌回復。
キキが小声で言う。「ちょろいわね」
母が軽くたしなめる。「こら」
カイルは椅子に座りながら呟く。「……これでチャラだな」
リーナが元気よく言う。「つぎはいっしょ!」
ヒカリも。「同行希望です」
カイルは苦笑する。「……考えとく」
賑やかな夜。怒りは甘さに溶けていく。
だが、次のダンジョンはきっと、もっと賑やかになる。そんな予感がしていた。




