第211話 帰還の報せと、その後
ダンジョン都市・教会。
白い石造りの建物、静かな祈りの空間。しかし、今日は少し慌ただしい。
カイルたちが扉をくぐると、中には多くの人影があった。寝かされている者、治療を受けている者。
「いっぱいいる……」リーナが小声で言う。
「負傷者、多数」ヒカリが確認する。
その中から「あ、カイル!」と手を振る人物がいた。ナルサだった。元気そうだが、少し疲れている。
「どうだ」カイルが近づく。
「なんとか……落ち着いた」ナルサは息をついて答えた。
「みんな大丈夫?」母が優しく聞く。
「命は全員助かった」
その言葉に、空気が少し緩んだ。
「よかった!」リーナが笑う。
「生存確認」ヒカリも言う。
しかし、ナルサの表情が少し曇る。
「……ただ」
「後遺症か」カイルが察する。
「うん。長時間石化してた人は、まだ動けない。体力も落ちてるし、リハビリが必要」
「まぁ、当然よね」キキが腕を組む。
「あと……精神的にも」ナルサは遠くを見た。「目覚めた時、自分が石になってたって知るのって……結構きつい」
リーナが少し黙る。「そうね……」母が静かに言う。
「時間がいるな」カイルは短く言った。
「うん」
少し間を置いて、カイルが本題に入る。
「《閃光の剣》は?」
ナルサの表情が変わった。「……バラバラ」短い言葉。「今回の件で、かなり崩れた」
「でしょうね」キキがため息をつく。
「元々ギリギリだったのが……完全に壊れた感じ」ナルサは続ける。「何人かはもう抜けるって言ってる。別のパーティーに行く人もいるし、引退する人も……」
「さみしいね」リーナがぽつりと言う。
「うん。でも、しょうがない」ナルサは小さく笑った。少しだけ間を置いて。「リーダーは……」
全員が静かに聞く。
「謝ってた」
カイルの目がわずかに動く。
「みんなに。自分の判断ミスだったって」
「へぇ……」キキが少し驚く。
「正直、遅いけどね」ナルサは少しだけ苦い笑顔を見せた。「でも、言わないよりはマシかな」
カイルは何も言わない。ただ一言。「……そうか」それだけだった。
ナルサがカイルを見る。「助けてくれて、ほんとにありがとう」深く頭を下げた。
「いいよ!」リーナが笑う。
「合理的行動」ヒカリも言う。
「当然のことをしただけよ」母が微笑む。
「巻き込まれただけとも言うけどね」キキが肩をすくめた。
「それでも、助かった」ナルサは静かに言った。
カイルは背を向ける。「……終わったな」
戦い、救出、因縁。すべてに一区切りがついた。しかしダンジョンはまだ残っている。機械の領域、未知の敵。次の戦いは、すぐそこだ。
「また、ダンジョンに行くの?」ナルサが言う。
「ああ」カイルは軽く答えた。「次は、あそこを攻略する」
教会の静けさの中。新たな目標が、静かに決まった。




