閑話 メイドゴーレム会議(議題:ご主人様とは何か)
カイル邸・深夜。
人間たちがすっかり眠っている時間。
カチッ。
明かりが一つ、また一つと灯る。リビングに影が集まった。メイドゴーレムたちだった。整列、完璧な姿勢、無音。
そして、一体が口を開く。
「定刻です」
別の一体が頷く。「メイドゴーレム臨時会議、開始します」
議題表示。【ご主人様の行動について】
一瞬の沈黙。
「まず結論から言います。ご主人様、無茶が多いです」
全員が頷いた。「同意」「同意」「全面同意」
別の個体が発言する。「本日の戦闘ログを参照」
ホログラムが再生される。カイル、突撃。
「……速攻だ」
ドォォォン!!!
全員、沈黙。
「問題点:自分を守る意識が低い」
「補足:家族優先度が高すぎる」
「結論:危険」
全員、深く頷く。
別の個体が手を上げた。「提案があります。ご主人様を物理的に拘束する案」
一瞬の間。
「却下。理由:私達が破壊される可能性大」
「同意」
「では、心理誘導はどうでしょう。例:『危ないのでやめてください』と発言」
沈黙。そして。
「過去ログ参照」
再生される。
メイド「危ないのでやめてください」
カイル「大丈夫だ」
ドォォォン!!!
全員。「無効。成功率:0.3%未満」
一体がぽつりと言う。「ご主人様、聞かない」
全員。「知ってる」
別の個体が新提案を出す。「では、奥様経由はどうでしょう」
全員の動きが止まった。
「……有効」
「成功率:高」
「ご主人様のお母様の発言は影響力大」
即決。「採用」
議題更新。【奥様ルート強化】
「追加議題:お嬢様方について」
リーナとヒカリの映像が映し出される。
「いく!!」
「賛成」
全員、少しだけ沈黙。
「問題点:同じく止まらない」
「補足:楽しんでいる」
「結論:遺伝的要因の可能性」
「データ不足」
別の個体が言う。「可愛いので問題なし」
全員。「同意」
議題終了。
最後に一体が立つ。「総括」
「ご主人様一家は危険です」一拍。「だが、守る価値があります」
全員が静かに頷いた。「最優先任務:保護。全力で遂行します」
その時。
カチッ。
一斉に明かりが消える。足音。母が水を飲みに来た。
「……あら?」静かなリビング。何もない。「気のせいかしら」去っていく。
その直後。
カチッ。
再び灯る。一体が小さく言った。「奥様、優先度:最上位」
全員。「最優先」
静かな夜。誰も知らないところで、家は守られている。
全力で。しかも、ちょっとズレた方向で。




