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ぶっ潰せ!  作者: looloohuu
2/17

二話


 「お前が節鳥健也か.....むぅ、本当に生きているのか?」


 老人は顔を顰めてこちらを凝視している。普段なら怖気付いていたが、この時ばかり、ではなく、この事態ばかりは、老人の言葉の方に気を取られていた。


 「い、生きてる、よ」


 青い髪の眼鏡を掛けた女性が、窓から少し聞こえた。


 「お爺ちゃん、やめて」


 「ああ、すまない。京香」


 ふいに、京香が責めるような口調で老人にいった。

 生きてるとか生きてないとか、健也にはよく分からなかった。専門用語かな、なんて、馬鹿みたいなことを考えたり。

 

 「じゃあ、乗りましょう」


 京香はそういって、後部座席の方に入っていった。

 健也も恐る恐るといった歩調で、前ドアをすり抜けた。

 あ。と思った。


 「やっと分かってくれた?自分が霊だって」


 「...。なんで、今まで気付かなかったんだろう」


 いや、気付けなかったのか。


 「霊というのは、都合の悪いものを取っ払う癖があるようじゃな。周りが見えず、抑えきれなくなると暴れ出す。どんな人間でも、霊になれば子供のようなものになる」


 老人が、顎に手をやり答える。


 「あ、あの!」


 「は、はい!」


 途端に、後部座席から大きな声が響いた。びっくりして振り向くと、青髪の、眼鏡を掛けた女性が発した声のようだった。


 「わ、私!みぞれ、って、言います...」


 声が進むにつれてトーンダウンしていくと、隣にいる京香に寄りかかってしまった。京香がよしよしというように、頭を撫でている。


 「岩野真だ。岩野真八木楼。宜しく頼む」


 老人、岩野真も名前をいった。


 「ぼ、僕は、節鳥健也って言います」


 一応健也も、自己紹介をしておいた。


  ◯


 何処に向かうのかと、怖々と車の中にいた健也だが、すぐに目的地に着くと拍子抜けしてしまう。

 そこは、健也が通っている学校だった。いや、京香達に言わせれば、通っていた、なのか。

 とまあ、車は学校近くに泊まり、京香がいった。

 

 「作戦会議をします。健也君、今までのことで、分かったことってなんだったかしら」


 「分かったこと...?」


 京香は唐突に、クイズのようなものを投げかけた。もちろん、先程までの一件は、今までの何より何倍も濃いものだったので、それ程答えに窮すことなく返答する。

 

 「...僕が、霊だったっていうこと、ですよね」


 「そう、それで、あなたが霊であるのなら、疑問が浮かぶ筈よ」


 そこまで言われて、はっと気が付いた。立体駐車場でも疑問になりかけていたこと。


 「...将真だ」


 「そう、将真君。彼も霊よ」


 どうやら、将真のことも知っているようだ。

 何だか現実じゃないみたいで、とても信じられない、信じたくないものだった。

 というのも、それでいうのなら、教師やクラスメイト達がいなくなった理由も、あの立ち入り禁止の張り紙も全て、全てそれで解決してしまうではないか。


 「調べてみると、面白いものが見つかるんじゃよ。日垣中学校本校舎の2階、そこは立ち入り禁止になっていて、そこにあった教室も全て別校舎に入れ替えたそうじゃ」


 岩野真が追従するようにいう。


 「分かりました。分かりましたから...僕が、霊というのは...」


 そういうしか無かった。状況証拠だけだったら、焦りはしても、こうも簡単に信じることは無いだろう。

 だが、健也の中にも、何か、何かがあったのだ。その何かは、以前までは掴もうとしても掴もうとしても、掴みきれないものだったに違いない。


 「でも、皆さんが言ったことが事実だったとして、何が、目的なんですか」


 少し棘のある言い方だったかもしれないが、健也には余裕が無かったのだ。霊だと言われて、親友である将真も霊で。


 「私達の目的は、あなたを生き返らせることよ」


 「...はい?」


 「ここから一時間ちょっとの所に、健也君の身体が、あります...」


 言った後、後悔したのか、みぞれはまたもトーンダウンした。

 

 「いや、あの...」


 もう理解の範疇を超えている。生き返る?身体がある?もうごちゃごちゃだ。分からない。分からない。頭の中が分からないだらけだ。


 「昼休みは、確か12時45分から1時30分まで、だったか」


 「...はい」


 なんで知っているのか、という質問は、この際必要無いだろう。健也の名前を知っている時点で、粗方調べているに違いない。


 「あと20分だ、時間がない。いいか、はっきり言う。お主の友達、帷将真とやらは、悪霊じゃ。」


 「...悪霊?」


 「悪霊は、お主に取り憑いている。もとい、霊というのはいわば生前の執念だ。今は無害なようだが。あやつの場合、暴走すれば人を殺すことだってあるやもしれん」

 

 「...意味が、分からないですよ」


 「今は信じなくていいさ。ただ、お主が霊体であるということは事実。先程思い知ったじゃろう。それでも信じないと言うのならば、将真とやらにこう言うといい。「お前は俺を殺したのか?」と」


 健也が返事を考える暇もなく、立て続けに京香が思考を遮る。


 「私達は、あなたを生き返らせて、元の生活、とまでは行かないけれど、普通の生活を取り戻してあげたい。でもそうするには、将真君が障壁になる。だから、説得して欲しい。将真君は、見る限りあなたにだけ従順なのよ」

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