↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶっ潰せ!  作者: looloohuu
13/17

十三話

 「どう、して...」


 「どうしてもこうも、気になったんだよ。京香がなにをしているのか。そうしたら、こうだ」


 父ーーいや、父の形をした男は、真顔で、そんなことをいった。京香はというと、肩が震えて、子猫のように小さくなっている。岩野真は、汗を垂らしてみぞれを庇うような体勢で。みぞれは、後退りながらも、男ではなく、京香を執拗に見つめている。

 健也だって、男の視線は以前京香を捉え続けているのに、籠に閉じ込められているような圧迫感を感じて、一歩も動けないでいる。


 父の中に、京香の父親がいる。


 「もうこんなことをするのは辞めるんだ。さあ、帰るぞ」

 

 「...うん」


 男は悪いことをした娘を咎めるように、言い聞かせるように、いった。

 娘はそれに首肯して、ぽつりぽつりと、闇の中を歩いて行く。

 背中が見える。京香の背中が。あんなに堂々としていた京香が、今はこんなに小さい。

 

 「京香、さん」


 京香ではなく、男が振り向いた。男は健也を視ると、目を視開いた、ような気がした。気がしただけで、男は一瞥して、それからまた、京香と共に歩き出した。

 

 どんどんと遠くなっていく。どんどんと遠くなっていく京香の背中を見る度に、何かが募っていく。

 男の背中を見る度に、何かが募っていく。


 なんだよ、これ。意味が分からない。何だ?急に現れて、見るだに娘を脅して、何事もないように、こっちに興味なんてなくて、それでも、父の形をしている。

 この男のことが、憎いのだ。憎くて、うざくて、いや違う。うざいのではない。何かもっと、もどかしい何かがある。罪悪感、違う。焦燥感、それはあると思う。でも、もっと何か、ある。


 そうだ。この期に及んで、何も出来ない自分が憎いんだ。そして、男が憎たらしくて、京香がムカついて。あんなに息巻いていたのに、こんなに小さくなって、認めたくない。

 こんな男に、人生を縛られたくない。


 「待てよ」


 「なっ...」


 健也は男目掛けて、全速力で走った。岩野真が呻いていたようだが、そんなの気にするな。やれ。

 考えはある。もちろん健也は、考えなくして突っ込んでいる訳ではない。先の駐車場での将真の一件で、そんなことは痛い程分かっているつもりだった。

 車中で、出来るだけ考えた。何か自分にも役に立てることはないのか。ある筈だと。

 

 乗っ奪りをしている霊を祓うには、衝撃を与えて、そこから出た本体を潰すことで祓う。これが通常の祓い方だった筈だ。

 そして、健也は霊だ。霊体だ。霊体であるならば、わざわざ衝撃を与えてうんぬんなど、考えなくて良いのではないのか。ただ体を殴れば、中の霊体を祓えるのではないか。


 だから、行け。ここでやらねばいつやるんだ。

 健也は身を切る思いで、男に肉薄する。男はそれに気付いたようで、体をこちらに振り向こうとするが、もう遅い。


 「胴体、胴体、胴体、胴体」


 健也はブツブツと、間違えないようにと声に出して確認する。

 何となくだが、そこに何か溜まっている気がするのだ。みぞれに聞けば良かったと、今更ながら後悔した。考えはあると言いながら、細部にまでは至っていないのがなんとも歯痒い。

 だが、なんとなくの域は出ないが、これは当たっていると、確信めいたものがある。

 

 健也は拳を繰り出した。拳は男に迫り、やがては胴体に入った。

 入った。と思うと、男の背中から、黒い、靄のようなものが出てきた。それは形を成して、男を象った。


 赤い髪、大きな目、整った目鼻立ち。こいつが、京香の父親なのか。


 「まだじゃ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。