十二話
目的地は、京都にあるという。ここからは、約七時間かかるそうだ。それまで車で走行タイムということだ。今は夜なので、目的地に着くまでには朝か昼かになっている。
「....」
寝ちゃっている。走行から数時間、京香とみぞれは疲れたのか、後部座席でニ人仲良く眠っている。そりゃあそうだ。三人は休憩はあれど、七時間の走行を前にもしているので、疲れるのも当たり前だ。
ちなみに健也は霊なので、眠くなることはない。
必然的に、無音が流れる。高速道路を走る車の音が、時たまに耳にこびりつく。
健也は、ふと思うのだ。
何故今、僕はここにいるのか。
自分のよく分からなさに、ひどく恥ずかしさを覚えた。いや、よく分からなくなどない。だって、健也はこの一連の事件に関係しているのだ。それも、ごりごりの被害者だ。殺されかけて、父を霊に乗っ奪られた、被害者なのだ。だけど、ここ今に至っては、自分がこの人達についていった意味がまるで無いのではないか。勢いよくついていきますと言ったのは良いが、何もすることはないのではないか。健也はどこかしらに、自分も役に立てるんじゃないかなどと、本当に阿呆な慢心をしていたのだろうか。いや、そんなことはない筈だ、決して。父が乗っ奪られているということは、少なからず、健也の声が父に届くのではないかという考えもあった。
だが、あの、駐車場の一件。健也は自分を過信して、将真を取り込もうとした。そして、失敗して、岩野真に助けて貰わなければ危うく消えて無くなってしまうところだった。
自分がいても何も変わらない。今更そのことを痛感したのだ。言いようも無い程に恥ずかしくて、寂しくて、悔しい。助けられて、助けられて、我が儘を言って、何をやっているのだろう。
そんな思いも口に出してこそなもので、車はそんなこともつゆ知らず、黙々と走行を続けていた。
◯
「おう、ついたぞー」
エンジンを停止して、シートベルトを外した岩野真は、後部座席で寝ている二人に呼び掛けた。
二人は欠伸をしているが、みぞれは静かに、京香はうるさく欠伸をしている。
車から降りると、隣に、岩野真心霊事務所、と書いてある張り紙を見た。
「ここって...」
「うむ、儂の事務所じゃ。...意外とくるんじゃぞ?」
顔で察したのか、心を察したのか、はたまた世間を察したのか、岩野真はそんなことをいった。意外と来るのか。少し信じられない。
「ここに、お父さんがいるんですね」
「そう。まあ、あなた達には待って貰うだけだから。一丁やって来るわ」
京香が拳を突き合わせた後のことだった。
「やっぱり、何かしていたんだな」
前に、男がいた。切れ長の目に、だらんとした黒髪、体格は良く、頼り甲斐のありそうな出立。
その姿は、記憶の中の父の姿と合致した。
なんで。
間違いない、この男は、健也の父だ。




