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毎日夜9時更新です。
話途中で、三人称視点からヒロイン視点に変わります。
ロゼリッタが倒れてから数日が過ぎ、シュネーベルク城の空気は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
担当の侍女は一新された。アイリスとカミラに代わって選ばれたのは、ロゼリッタと同年代の少女サラだ。
まずは話し相手として距離を縮め、ロゼリッタの警戒心を解くという、ハンスが練った慎重な作戦だった。
今日も、北の大地は名ばかりの春。
ロゼリッタがゆっくりと目を開けた。今の状況を理解できていないのか、高い天井、さらにその先の遠くを見つめている。傍らに控えていたサラが顔を輝かせる。
「……あ、お目覚めになられましたか! 先程まで閣下が付き添われていたのですが、急ぎの執務で席を外されたんです。すぐにお呼びして参りますね!」
パタパタと小走りで部屋を飛び出していくサラ。
ほどなくして、足音も荒くヴィオレルが駆けつけてきた。
「ロゼリッタ……! 気がついたのか……」
ヴィオレルはベッドの端に、糸の切れた人形のごとく崩れ落ちた。
〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜
何度も、慈しむように私の頭を撫でる。その手は微かに震えていた。
「良かった……本当に良かった。君が目覚めなかったこの数日間、私は生きた心地がしなかった」
彼の大きな、暖かな手のひらが髪を撫でる感覚が、どこか擽ったい。ヴィオレル様の手は、父様や兄様とは少し違う…骨っぽくて、ゴツゴツしていて…男性の手そのものなのに、すごく優しい。
私が微笑みを返すと、彼は雷に打たれたように硬直した。もごもごと聞き取れない言葉を呟いては、顔を赤らめている。
(ヴィオレル様も、体調が良くないのかしら……)
遅れて駆けつけたハンスからサラが紹介される。
「ロゼリッタ様! お側でお仕えさせていただきます、サラです! よろしくお願いします!」
元気よく、屈託のない挨拶をする彼女に、私の緊張も少しだけ和らいだ。
「……閣下。これからお召し替えをいたしますので、一旦、お引き取りを」
サラにきっぱりと言い渡され、ヴィオレル様は「またすぐ来る」と言い残しながら、サラにぐいぐいと背中を押される。
それを見て、くすくすっと笑うと、ヴィオレル様が驚いた顔をして、「ロゼリッタ! いつでも呼んでくれ!」と大きな声で言うものだから、また笑ってしまった。名残惜しげに、彼は部屋を追い出された。
サラに支えられて身体を起こし、差し出された水をこくこくと飲み干した。
……ああ、美味しい。
お水が、こんなに喉に心地いいなんて。
新しく来てくれたサラは、ころころとよく笑う、可愛い子犬のような女の子だった。
彼女は自分の家が大家族であることや、最近城で流行っているおまじないの話など、他愛のない話をたくさんしてくれた。
「……あ、すみません! 私の話なんて、どうでもいいですよね」
サラが照れくさそうに笑う。その明るさに、私はいつの間にか心を許してしまっていた。
「ロゼリッタ様、もしよろしければ……何か少し、召し上がれますか?」
彼女の優しい問いかけに、私は小さく頷いた。
少しして、料理長自らがミルク粥を運んできた。
一匙、一匙。
ゆっくりと口に運ぶと、驚くほど優しく身体に染み渡っていく。
「……ありがとうございました。とても美味しかったです」
私がそう告げると、料理長は感極まったように深く頭を下げた。
出された薬を飲み、私はサラの話し声に包まれながら、再び心地よい眠りへと誘われていった。
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