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毎日夜9時更新です。
話途中で、三人称視点からヒロイン視点に変わります。
馬車がシュネーベルク城の重厚な石門をくぐると、そこには整列した数十人の使用人と、詰めかけた領民たちの姿があった。
誰もが「北の守護要」と称される主君の帰還を、硬い表情で待ち構えている。
「……閣下のお戻りだ。粗相のないように」
家令のハンスが厳かに声をかける。使用人たちは緊張に身を強張らせ、背筋を伸ばした。
やがて馬車が止まり、バルトがうやうやしく扉を開ける。
最初に姿を現したのは、いつも通り鋭い眼光を放つ、美しくも、氷のように冷徹なヴィオレルだった。
ヴィオレルは、自らの漆黒の外套を迷いなく解くと、後に続くロゼリッタを包み込むように羽織らせたのだ。
それだけではない。彼は跪くと、彼女の靴に付いたわずかな埃を自らの白手袋で払い、そのまま彼女を静かに横抱きにした。
「……っ! 皆様が見ていらっしゃいますわ」
腕の中で戸惑うロゼリッタを、ヴィオレルは粉雪を扱うような、けれど誰にも渡さないという強い意志を込めて抱きしめ直した。その瞳には、ただ一人の女性への熱い情熱だけが宿っている。
「……構わない。君は我が命だ。」
常に冷静沈着、戦場では返り血を浴びても眉ひとつ動かさなかった主君の豹変ぶりに、家令のハンスは言葉を失い、持っていた銀のトレイを震える手で握りしめた。整列していた侍女たちも、息を呑んだまま石像のように固まる。
ヴィオレルは周囲の驚愕など一切目に入らない様子で、腕の中のロゼリッタを愛おしそうに見つめ、一歩一歩、確かな足取りで城内へと進んでいった。
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あまりに巨大な門構えに息を呑む。重厚な石造りの尖塔がそびえ立つ城。大勢の人々が待ち構える中、私の見窄らしいワンピースは、彼の仕立ての良い外套ですっぽりと隠された。
ひゅっと冷たい風が吹き抜け、全身が凍え上がる。がたがたと震える体に鞭打って歩こうとしたが、彼はその覚悟を遮るように私を横抱きにした。
皆の視線から逃げるように、私はただ目を伏せる。
(ここの女主人に私がなるなんて、とても無理だわ……)
私なんかに務まるはずがない。逃げ出したいーーその一心だった。
彼は城内の部屋や調度品を楽しげに説明してくれるけれど、あまりの多さに意識が遠のき、何も頭に入らなかった。
「ロゼリッタ、この城のすべては君のものだ。……君の部屋も、陽当たりの良い場所に最高の環境を整えさせた。もちろん私の隣だが。君さえよければ、二人の寝室を繋げられるようにもしてある。寂しさを感じぬよう、私のすべてを捧げるよ」
背後でバルトが深い溜息をつきながらも、「閣下、お疲れなのですから、早くお部屋へ連れて行ってあげなさい」と、どこか満足げに目を細めている。
最上階の南側に、私の部屋はあった。
足を踏み入れると、大きな窓には薄桃色のカーテンが掛かり、白と金を基調とした煌びやかな装飾に目が眩む。凍てつく寒さだというのに、部屋には赤い薔薇が溢れんばかりに飾られていた。
「……ロゼリッタ、気に入っただろうか。もし少しでも嫌なら、すぐに作り直させるから遠慮なく言ってくれ」
ふかふかのソファーに私を降ろすと、彼は祈るように私の顔を覗き込んだ。
「……あの、ありがとうございます」
場違いすぎて、泣きたくなる。家族全員で過ごしてきた家よりも広い、自分ひとりの部屋。
これが、私の居場所。
何もかもが変わり果てた現実に、ただ混乱するしかなかった。
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