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毎日夜9時更新です。

話途中で、三人称視点からヒロイン視点に変わります。

 連日繰り返される、執拗なまでの淑女教育。

 心身を削りながらも、ただひたむきに教えを乞うロゼリッタの姿は、見る者の胸を締め付けた。その痛々しさに耐えかね、ヴィオレルは苦悶に表情を歪ませて彼女の前に膝をついた。


「ロゼリッタ……もう母上の言うことを聞くのはやめてくれ。一生のお願いだ、聞き入れてほしい」


 傍らに控えるハンスやサラも、涙ながらに言葉を重ねる。

「ロゼリッタ様、どうか……! このままではお身体を壊してしまいます」

 それでも、彼女は青ざめた顔に哀しげな微笑を浮かべ、静かに首を横に振るのだった。



 夕暮れが迫る頃、ロゼリッタは独り書庫にいた。ミレーネから命じられた古書が見つからず、焦燥が募る。刻一刻と晩餐の時間が近づき、指先が微かに震えた。

 そこへ、ミレーネ付きの侍女が足音もなく現れた。

「ロゼリッタ様、ミレーネ様が裏庭でお待ちです。至急お越しください」

「……裏庭? 分かりましたわ、すぐに向かいます」

 本を抱えたまま、彼女は裏庭へと急いだ。帳が下り始めた薄暗い庭に足を踏み入れ、所在なげに声をかける。

「お義母様……?」

 返る言葉はなかった。代わりに、彼女の視界は唐突な衝撃と共に暗転した。



 〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜⭐︎〜



 背後から、ごわごわとした粗末な袋で頭を覆われた。何が起きたのか分からず硬直する私の傍らで、女性のくすくすと笑う不快な声が漏れる。続いて、聞き慣れない男の濁った声が響いた。

「こいつか、商品は」

「ええ。見た目だけは極上よ、高く売れるわ。取り分は半分、約束通りにね」

「だったら、売る前に俺が味見をさせてもらうぜ」

 下卑た笑い声に、背筋を凍り付くような嫌悪が駆け抜ける。


(や、やめて……っ!)


 叫ぼうとしても喉が強張って音にならない。手首を麻縄できつく縛り上げられ、私は硬い板の上に乱暴に放り出された。

 ガタガタと板が不規則に揺れ、滑車が回る不気味な音が夜の静寂に響く。


(……誰か、誰か助けて!)


 心の中で悲鳴をあげる。肺が引き攣れ、呼吸は浅く速まり、肩が大きく上下した。

 やがて重い扉が開く軋み音が聞こえ、さらに激しく台車が揺れる。身体の重みが後ろに偏り、どこか上り坂を進んでいることが分かった。


(ヴィオレル様……助けて!!)


 絶望に呑まれ、唇がカタカタと震え出す。

 一秒が、重く、長く、粘りつく。

 まるで琥珀の中に閉じ込められた羽虫のように、身動きの取れない時間が延々と続いていく。抑えられない戦慄に身を任せるしかなかったその時、シュッと鋭く風を切る音が空気を裂いた。

 重いものが崩れ落ちる鈍い音。直後、制御を失った台車が、坂道を勢いよく転がり落ち始めた。

 息を呑んだ瞬間、私は何者かの逞しい腕に柔らかく攫い上げられた。

 視界を塞いでいた袋が乱暴に取り払われ、私は眩しさに目を細める。


「ロゼリッタ様っ!」


 視界に飛び込んできたのは、褐色の肌に、鋭くも知性的な黒曜石の瞳。鴉の羽のような艶やかな短髪を持つ、凛々しい男性の顔だった。


「団長、周辺の確保を!」

 周囲に控える騎士たちが、彼をそう呼ぶのが聞こえる。

 その温もりと安堵感に包まれた瞬間、張り詰めていた糸が切れ、私はそのまま意識を手放した。



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