Menu 68 ~ お好み焼き ~
7時30分
「それじゃあ、いただきます。」
「え……えぇ。」
「…………」
現在、俺はクロエとアルがそれぞれ用意してくれたホットケーキを食べている。
というのも、30分前……
***
「うっし!それじゃあ、朝食の準備を……」
「待って!タクトさん。」
「ん?どうした?クロエ、アル。」
「いつも、タクトさんばかりに食事を用意させて申し訳ないわ。たまには、私達に食事を作らせてくれないかしら?」
「この間のタクトさんが用意してくれたような朝ご飯は、まだ難しいけど……それでも、やらせてくれないかな?」
「2人共……ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。ホットケーキを作ろうと思って、材料は用意してあるからさ。」
「えぇ!任せて!」
「うん!」
***
……ということがあり、俺は今、2人が1枚ずつ用意してくれたホットケーキを朝食として頂いている。
「もぐ……うん。2人共、よくできてる。元々料理をしてたっていうクロエに関しては、そこまで心配していなかったけど、アルのホットケーキも目立った焦げもなく、中までちゃんと火が通ってて、もぐ……んっ、どっちも美味しいよ。普通にお客様に出せるレベルだ。」
「やったぁ!」
「ふぅ……良かったわ。自分でも、ちゃんとできたと思っていたけど、タクトさんにそう言ってもらえると、やっぱり安心するわ。」
「2人共、ホットケーキを問題無く作れるなら、あれも作れるかもしれないな……」
「「あれ?」」
◇◇◇
13時30分
「さてと……2人共、そろそろ昼飯にするか。」
「ねぇ、ねぇ、タクトさん。今日のお昼ご飯は何?」
「今日はお好み焼きを作ろうと思う。」
「「お好み焼き?」」
「あぁ。此処に、小麦粉と卵に水、山芋って芋を摩り下ろした物と、キャベツの微塵切りと紅しょうがの微塵切りを混ぜた生地がある。」
俺はそう言いながら、用意した生地が入ったボウルを2人に見せる。
「これを熱した鉄板の上に注いで……上に豚バラ肉を置く。」
しばらく焼いていると、生地にプツプツと穴が空いてくる。
「あとはホットケーキを作る時と一緒だ。このヘラっていうのを2本使って……ほっ!」
両手に持ったヘラを左右からお好み焼きの下へとくぐらせ、素早くひっくり返す。
「このまま、さっき置いた豚肉にも火が通れば……今回は普通に皿に盛りつけて、ソースとマヨネーズ、鰹節と青海苔を振りかけて……はい、完成だ。」
「「おお~!」」
お好み焼きの完成と同時に、クロエとアルが歓声を上げながら拍手をしてくれた。
「これもヘラで切り分けて……ほら、熱いうちに食べてみな。」
「「いただきます!」」
クロエとアルはフォークで1切れずつ刺し、口へと運んだ。
「んっ!はふっ……ほふっ!んっ……タクトさん!これ、凄く美味しいよ!」
「えぇ。生地は先日食べたタコ焼きに近い物ね。でも、あっちよりフワフワで……お肉の脂も染みて、とっても美味しいわ!」
「ちなみに、『 お好み 』っていうだけあって、生地には割と何を入れても良いんだ。チーズだったり、野菜を増やしてみたり、イカやエビみたいな魚介を入れた物もある。」
「何それ、美味しそう!」
「あと……クロエ。」
「何?」
「このお好み焼きと焼きそばを合体させた、モダン焼きっていう物もある。」
「嘘でしょ!?そんな夢のような究極な組み合わせがあるなんて!」
「ただ、具材が多かったり、モダン焼きに至っては焼きそばが含まれる分、ひっくり返すのがちょっと難しくなるんだよな。俺は【 プロの技術 】のスキルがあるけど……2人がお客さんのために作るっていうのなら、やっぱり練習あるのみだと思う。でもまぁ、朝のホットケーキを見た感じだと、2人共、すぐにコツを掴みそうだけどな。」
「そうね……今すぐは無理でも、いつかは、絶対に自分でモダン焼きを作ってみせるわ。」
「ボクも!少しでもタクトさんが作る料理を覚えて、お手伝いできる幅を増やしたいな。」
「あぁ。頼りにしてるぜ、2人共。」
「あぁ……何だか、とっても良い匂いがします……」
弁当売り場の窓を開けっぱなしにしていたので、外までソースの香りが漂ったのか……
ターニャが弁当売り場の窓から顔を覗かせた。
「おぅ!いらっしゃい、ターニャ。」
「こんにちは、タクトさん。あの……この美味しそうな匂いは……?」
「あぁ。お好み焼きって料理だ。弁当じゃないから、店内で注文してくれ。」
「はい!わかりました!」
店の扉が開き、ターニャが来店する。
「いらっしゃいませ!ターニャさん。」
「こんにちは、アルさん。」
「注文は聞こえていたわよ。カウンター席なら、タクトさんがお好み焼きを作るトコロが見られるけど……どうする?ターニャ。」
「是非!見学させてください!」
「うふふ。えぇ、わかったわ。」
クロエに促されて、ターニャが俺の真正面のカウンター席に座る。
「さて、ターニャ。お好み焼きには基本的に、キャベツの微塵切りと紅ショウガっていう食材の微塵切りが入ってるんだけど……他の具材はどうする?」
「他の具材?」
「タクトさんが言うには、チーズを入れたり、野菜を増やしたり、イカやエビを入れても美味しいそうなの。」
「ボクとクロエさんは、豚肉を乗せた物を作ってもらったんだよ。」
「1つの料理なのに、そんなことが可能なんですか!?う~ん……では、少し贅沢に……あの、タクトさん。イカやエビのような海の幸と、豚肉を一緒に……って、可能ですか?」
「あぁ。大丈夫だぞ。」
「ほっ……本当に大丈夫なんですか!?」
「大丈夫、大丈夫。すぐに作るよ。」
俺は残っている生地から1人前分、小さなボウルへ移し、【 創造 】のスキルで出した一度火を通してあるイカと剥き身のエビを更に追加して生地を混ぜる。
「あとは、これを焼く時に、さっき2人に食べてもらったのと同じように豚肉を敷いて……焼くだけだ。」
俺がまたヘラを使ってお好み焼きをひっくり返すと、ターニャからも歓声と拍手が巻き起こった。
「焼き上がったお好み焼きを、この鉄板と一体化した皿に移して……ソースとマヨネーズをかけて、鰹節と青海苔を振りかけて……はい!ミックスお好み焼き、お待ちどぉ!」
完成したお好み焼きを、ターニャの前に置いた。
「これがお好み焼きですか!それでは、いただきます!」
ターニャはお好み焼きをナイフとフォークで一口大に切り分け、口へと運んだ。
「はふっ!ほふっ!あっふ……んっ!おっ、美味しい!とっても美味しいです!外はカリッとしていながらも、生地はフワフワで……もぐ……んっ!このプリプリした食感……これが海の幸ですね!」
「クロエとアルも。さっきの1枚を分けて食べてたんじゃ、足りないだろ?待ってな。2人の分のミックスお好み焼きも作るから。」
「本当!?やったぁ!」
「ありがとう、タクトさん。」
「もぐ……この油が染み込んだ陸に住む豚のお肉と、海のエビやイカを一緒に食べられるなんて……しかも、美味しい……タクトさん!このお好み焼きという料理、凄い料理ですね!」
「ははっ、気に入ってもらえたみたいだな。」
「ターニャの言う事に同意するわ。昼食も夕食も、基本的に、主食はお肉料理にするか、魚を使った物かのどちらかだけで、お肉と魚……今回の場合はイカやエビだけど、海の幸と一緒にお肉を食べられるなんて、誰も考えたことすらなかったでしょうから。」
「もしかして俺……ヤバい事してる?」
「えぇ。タクトさんは、このアリアータの食事情に影響を与えすぎているわ。もちろん、良い意味でね。」
「はい!いつか……私達の誰かからの口伝で、このお好み焼きの話が広まり、タクトさんの真似をして売り出す店が出てくるかもしれませんね。もっとも!ここまでの完成度になるのは、まだまだずっと先の話ですが!」
その後、ターニャは額から汗を掻きながら、お好み焼きを完食した。
「ふぅ……美味しかったぁ。ごちそう様でした!」
「おぅ!お粗末様。」
「タクトさん。ボク達も、ごちそう様でした!」
「ごちそう様。いつも、とっても美味しい食事をありがとう、タクトさん。」
「いや……俺の方こそ。皆、いつも美味そうに食ってくれて、ありがとうな。食器は流し台に置いといてくれ。」
「はぁい。」
アルが食べ終わった食器を、流し台へと運んで行く。
「それじゃあ、タクトさん、クロエ先輩。お勘定をお願いします。」
「え?あぁ~……悪いな、ターニャ。他のお好み焼きは銅貨8枚で提供するつもりなんだけど、さっき出したミックスだけは銀貨1枚で提供しようと思ってたんだ。ごめん!先に言っておくべきだったな。」
「どうしてタクトさんが謝るのですか!?あのミックスお好み焼きには、それだけ……いいえ。それ以上の価値があると思います!ですが、このお店で店主のタクトさんが決めたお値段です。銀貨1枚ですね。喜んでお支払いします!」
ターニャは財布を開き、銀貨1枚を取り出してクロエに手渡した。
「はい。確かに丁度いただきました。」
「あの……タクトさん。もう、お腹いっぱいで追加の注文は無理なのですが……メニューを、見せていただいても宜しいですか?」
「え?あぁ、もちろん。はい。」
俺からメニューを受け取ったターニャが、1枚ずつページを捲っていく。
「当たり前ですが、私の知らない料理ばかり……ふふっ、どれも美味しそうですね。次は何を食べようかしら……」
「本当に。私も客として利用していたときは、いつも悩んでいたわ。」
「それで何を頼んでも、どれも美味しいから凄いよね。」
「こんにちは!」
店の扉が開き、ユリアが入ってきた。
「おう!いらっしゃい、ユリア。」
「「いらっしゃいませ!」」
「こんにちは、皆さん。あら?ターニャも来ていたのですね?」
「えぇ。ユリアも今から昼食ですか?」
「はい。先程まで、沖で操船訓練をしていたので。それで?ターニャは何を食べていたのですか?」
「ん?ん~……ふふっ、究極の料理ですよ。」
「究極の料理!?何ですか、それ!?タクトさん、私にもターニャが食べた物をお願いします!」
「ははっ、あいよ。」
何か、さっきのやり取り、ソニアとクロエも似たようなことしていたな……
そんなことを思いながら、ユリアの分のお好み焼きを作り始めた。




