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Menu 42 ~ ホットサンド ~

10時


「よし……とりあえずは、こんなモンかな。」

「タクトさん……どうしたの?こんなにたくさん料理を作って……」


お客さんが居ない現在、俺は調理台の上に商品を幾つか出現させていた。


「あら?でも、湯気が出ていない……」


クロエは恐る恐る、人差し指でハンバーグに触れてみた。


「……!?ハンバーグが、ありえないくらい固い!これ、もしかして……偽物?」

「あぁ。食品サンプルっていってな。早い話が、料理の模型だよ。店の中でメニューを見てもらう他に、店の外のガラスケース内に幾つか置いておけば、立体的にどんな料理なのかを確認しつつ、名前も判るってワケさ。」

「確かに……凄く精密ね。それに、この世界の人達は、タクトさんの居た世界の料理を知らないから、店に入る前に、目で見て料理を知ってもらうというのは、良い考えかもしれないわ!」

「ってなわけで、今此処に出した食品サンプルを、外のガラスケースに飾りに行こうぜ。」

「えぇ!」


◇◇◇


「おぉ!これは、これは。立派なレストランが建っていますね。」


クロエと食品サンプルを飾っていると、大通りの方から歩いて来たグウェルに声をかけられた。


「おぅ!おはようございます、グウェルさん。」

「おはようございます!」

「おや?クロエさん。あぁ……そうでした。アリアータ近郊であった事、衛兵を除隊したことは報告を受けています。ただ、除隊した後はどうするのかと気になっていたのですが……なるほど。はっはっは!軍服も似合っていましたが、その衣装も、とてもよく似合っていますよ。」

「ぁ……ありがとうございます。」


グウェルに給仕服を褒められたクロエが、頬を少し赤らめて照れている。


「ところで……今は何をされていたのですか?」

「ん?あぁ。この料理の模型を、このガラスケースに入れてたんです。」


そう言いながら、俺はオムライスの食品サンプルをグウェルに見せる。


「ほぅ!これは……よくできた模型ですね。」

「タクトさんの料理は、タクトさんの説明か、メニューの絵を見ないと判らない……説明してもらっても、絵で見ても判らないことがありました。しかし、この模型をこうして飾っておけば、店内に入る前に、ある程度の興味を持っていただけるかと思いまして。」

「俺がまだ子どもだった頃、レストランの店頭に置かれている食品サンプルに凄く魅かれたんです。家で親が作ってくれる料理のサンプルもあったんですけど、同じ料理なのに、それが何だか特別美味そうに見えて……それで、クロエが言ってくれたように、俺の居た世界の料理を知らないこの世界の人達に、少しでも興味を持っていただければ良いなと。」

「なるほど。確かに、小さな子ども達は好きそうですね。」

「うふふ。さて、グウェル様。この後時間に御都合がつくようでしたら、タクトさんのお店で食事をされて行きませんか?」

「ふむ……そうですね。小腹が空いているので、軽い物をお願いできますか?」

「軽い物か……了解。それじゃ、お客様。どうぞ、店内へ。」


俺とクロエはグウェルを店内へ案内した。


「おぉ!中もお洒落ですね。」

「グウェル様、カウンター席へどうぞ。」

「あぁ、ありがとうございます。」

「さてと……グウェルさん。提供する料理は俺に任せてもらって良いですかね?」

「はい。お任せします。」

「それじゃあ、早速……」


俺は【 創造 】のスキルを発動し、必要な材料を出現させる。


「パンにバターとマヨネーズを塗って、ハムと薄切りのチーズを乗せて、もう1枚のパンで挟む。これはこれで、ハムサンドっていう1つの料理だけど、今回はコイツを……」


俺はハムサンドを専用の機械に入れて、熱を加えていく。


「ほぅ……変わった形の鉄板ですね。」

「今のところ、これを作る以外の用途が思いつかないんですけどね。…………よし、焼けた。これを斜めに半分に切って……どうぞ!ホットサンドです。熱いので気を付けて持ってください。」

「ありがとうございます。おぉ!確かに温かいですね。では……」


グウェルはホットサンドを持ち、かぶりつく。


「はふ……もぐ……もぐ……んっ、凄いですね、これ!パンはカリッと香ばしく、熱したことでチーズがトロトロに伸びて……材料はシンプルなのに、とっても美味しいです!」

「どうぞ、グウェル様。コーヒーです。」

「あぁ、ありがとうございます。クロエさん。」

「タクトさん。サンドイッチのメニューは、そこそこ種類があるみたいだけど……全部、こうして焼くことができるの?」


メニューをパラパラと捲っていたクロエが、疑問に思ったことを訊いてきた。


「全部……は無理だろうな。特にこのカツサンドみたいに厚みがあるのは、この機械が閉じねぇよ。」

「あっ、そっか。ちゃんと挟んで、閉じ切らないといけないのね。」

「BLTサンドくらいなら、ホットサンドにできそうだけど……これは、生でも食べられるトマトとレタスに火を通すのは有りか、無しかで意見が分かれそうだな。」

「確かに……上手くいきそうな感じはするけど、人には好みがあるものね。」

「まぁ、パンを先に焼いて、具を挟んで疑似的にホットサンドにする方法もあるけどな。」

「ほぅ……それも美味しそうですね。タクトくん、お代はきちんと支払います。そのBLTサンドもお願いできますか?」

「わかりました。すぐ、用意しますね。」


その後用意したBLTサンドも、グウェルは満面の笑みで完食した。


「ふぅ……ありがとうございます。とっても美味しかったですよ。」

「いつもそう言ってもらえて、ありがたい限りですよ。」

「さてと、それでは代金を支払わないとですね。クロエさん、幾らになりますか?」

「はい!ホットサンド1皿銅貨5枚、BLTサンドも1皿銅貨5枚なので、合計で銀貨1枚です!」

「銀貨1枚ですね。」


グウェルは財布の紐を解き、銀貨1枚取り出すとクロエに差し出した。


「銀貨1枚、丁度いただきます!ありがとうございます!」

「はっはっは!タクトくんが1人で経営されていた頃も知っていますが、クロエさんが居るのも、活気があって良いですね。」

「えぇ。野郎1人だった店に華ができて、俺も助かってますよ。」


その後、満足気な笑みを浮かべて席を立ったグウェルを、俺とクロエで頭を下げて見送った。


「どうだ?クロエ。今のところ、ソニアとグウェルさんを接客したわけだけど……やっていけそうか?って、この訊き方で良いのかな?」

「えぇ!問題無いわ!衛兵の頃から立ち仕事が多かったし、剣を取って命のやり取りをしなくなったというだけでも、気が楽だわ。」

「そっか。確かに……包丁や、うっかり割っちまった皿やコップの破片でくらいしか、怪我のしようが無いもんな。そんじゃ、この後もお互い、気を付けて頑張ろうな。」

「うふふ。了解です、店長。」


その後、グウェルが使用した食器洗いを済ませ、次のお客様が来るまで、クロエとまったり過ごした。

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