Menu 36 ~ ビーフジャーキー と フルーツポンチ ~
14時30分
「おっす!タクト。」
裏通りの方から大きく手を振りながら、クレスが歩いて来た。
「おぅ!クレス。いらっしゃい。」
他に誰もいなかったので、クレスは俺の正面の席に腰を下ろした。
「珍しく、今日は1人なんだな。」
「あぁ。各々やりたいこともあるだろうし、たまにはな。」
「なるほど。とりあえず、何か食って行くか?」
「そうだな……あっ、そうだ。タクト、注文とは別で、持ち帰りとして、日持ちの良い肉料理があれば売って欲しいんだけど。」
「ん?あぁ、いいぜ。またクエストにでかけるのか?」
「おぅ。依頼主は隣町なんだけどな。食料……特に肉の備蓄が減ってきたから、イノシシやオークを狩って欲しいんだと。」
「イノシシは解るけど……オークってあれだよな?豚の頭の……食えるのか?あれ。」
「さぁな。俺はまだ食ったことないけど、食ったことのある奴が言うには、たまらなく美味いらしいぜ。」
「へぇ……何か意外だな。まぁ、オークのことは置いといて、保存の利く肉料理か……こういうのは、どうだ?」
俺は【 創造 】のスキルを発動し、完成された料理を出してクレスに見せる。
「ん?タクト。これは……?」
「ビーフジャーキーだ。スライスした牛肉をスープと一緒に寝かせてから、天日干しにした物だよ。代金は取らねぇから、ちょっと食べてみな。」
「おぅ。それじゃあ。」
クレスはビーフジャーキーを手に取り、噛みついた。
「うっ……くっ……固っ……もぐ、ん……あっ、でも、質の悪い牛肉かと思ったけど、噛めば噛むほど味が染み出してきて、美味いな!コレ!」
「俺は飲めないけど、酒のつまみなんかにしても美味しいと思うぞ。それに、小さい子ども達にあげると、歯を丈夫にして、しっかり噛む習慣をつけるのに、最適なんだとか。まぁ、その場合はもう少し塩気や香料を押さえる必要があるけどな。」
「なるほど。それは良い事を聞きました。」
今の話が聞こえていたのだろう。裏通りの方から歩いて来ていたテレサが会話に混ざってきた。
「おぅ!いらっしゃい、テレサ。」
「うふふ。こんにちは、タクトさん、クレスさん。」
「よっ!テレサさん。良い話を聞いたって……まさか!?テレサさん、隠し子でも居るのか!?」
「何っ!?既におめでただったのか!?テレサ!常連を集めて、盛大に祝わないと……」
「違います!違います!隠し子なんて居ませんよ!神に仕える身として、生涯純潔を誓っているのですから!」
「何だ、そうだったのか……俺はてっきり、テレサさんが誰かの子を産んだのかと思ったぜ。」
「じゃあ、何で今の話に食いついたんだ?隠し子どころか、自分の子どもを身籠ってもないんだろ?」
「えぇ。実は、この町外れ……タクトさんのお店がある此処とは反対側の方に、教会が管理している児童養護施設があるんです。そこの子ども達に食べさせてあげたいと思いまして。」
「へぇ、そっちの方には全然行かなかいから、知らなかったな。そんな場所もあるのか。」
「俺は何回か前を通ったことがあるぜ。ただ、タイミングが合わなかったからか、外で子どもが遊んでる姿を見たことないけどな。」
「なるほど。まぁ、そういうことなら喜んで用意させてもらうよ。テレサ、その養護施設に居る子ども達は何人だ?」
「えっと……確か、現在10人だったはずです。申し訳ありません、1度戻って正確な数を……」
「あぁ!いや、大丈夫!ビーフジャーキー20本用意するから!それだけあれば、大丈夫……だと信じたい。」
「ありがとうございます、タクトさん。」
「…………そうだ。せっかくだし、簡単に作れて、子どもが喜びそうなデザートも教えますよ。」
「本当ですか!?是非、お願いします。」
「せっかくだし、クレスも食べていくか?」
「おぅ!いただくぜ!」
「了解。と言っても、マジで難しいことなんて何も無いんだけどな。」
俺は【 創造 】のスキルで、必要な材料を出現させる。
「果物と……水?ですか?」
「あぁ。サイダーって飲み物なんだ。試しに……どうぞ。」
俺はコップにサイダーを注ぎ、クレスとテレサに提供した。
「いただきます……んっ、ごく……んんっ!?何ですか、この飲み物!?シュワシュワ弾けて……驚きましたが、スーッと爽やかな後味で、美味しいですね。」
「これ、色は付いてないけど、この間ハンバーガーを食べた時に出してもらった、コーラと似た飲み物か。いや、でも、テレサさんが言った通り、こっちの方が爽やかな気がするな。」
「とりあえず果物を食べやすい大きさに切って、大き目な器に入れて、サイダーを注いて……はい、完成。」
「マジで!?簡単すぎるだろ!」
「これでも一応、フルーツポンチっていうちゃんとした料理名があるんだ。これを食べる分だけ別の器によそって……はい、どうぞ。」
フルーツポンチを小鉢によそい、クレスとテレサに提供する。
「本当に難しい事は何もされていませんね……いただきます。」
「いただきます。」
クレスとテレサはスプーンで果物とサイダーを一緒に掬い、口へと運ぶ。
「もぐ……んっ、あぁ……果物の自然で優しい甘さと、サイダーの清涼感が合わさって、とっても美味しいです!」
「あぁ!普通に果物だけで食べるより、美味いな!んっ……ごく……うん。サイダーにも果物の香りが加わって、より美味くなってる!」
「しかし、これをこのアリアータで作るのは……果物は沢山売っていますが、このサイダーは何処を探しても売っていませんし……」
「それなら、あとでアンネリーと話して、彼女の店に置いてもらうよう交渉してみるよ。」
「本当ですか!?」
「あぁ。たぶん、彼女に飲んでもらって……気に入ってもらえたら、ほぼ確実に店頭に置いてもらえると思う。」
「そりゃいいな!フルーツポンチだっけ?このデザートに使うだけじゃなくて、そのまま飲んでも美味いからな!特に、暑い季節に、こうして冷えた飲み物が店頭にあって嬉しいと思う奴は多いと思うぜ。」
「置いてもらえるようになったら、俺の元居た世界の値段を基準に、銅貨2枚で売ってもらうつもりだよ。あ……ただ、1度瓶の蓋を開けてしまうと、このシュワシュワした感覚はどんどん弱くなっていくから、開けたらできるだけ1回で飲みきる、使い切った方が良いよ。」
「そうなのですね。わかりました。」
「もぐ……なぁ、タクト。もう1杯、貰っても良いかな?」
「ぁ、私も……お願いしても宜しいですか?」
「もちろん。すぐ用意するよ。」
用意した2杯目のフルーツポンチを、クレスとテレサは喜んで完食した。
「ふぅ!美味かった!久しぶりに甘くて美味い果物を食べれて、満足だ!」
「えぇ。これなら、子ども達も喜んでくれるでしょう。」
「満足してもらえて良かった。あっ、テレサ。サイダーやフルーツポンチは、冷やした方が美味しいから、可能であるなら氷や冷たい場所で冷やしてから子ども達にあげると良いよ。」
「冷たい方が美味しい……わかりました。助言、感謝いたします。タクトさん。」
「タクト。忘れないうちに、持ち帰りのビーフジャーキーと、このフルーツポンチの会計を頼む。」
「わかった。そうだなフルーツポンチ1杯銅貨6枚……悪いな、果物の分、普通にサイダーを飲むより値段が高くなってるんだ。」
「ん?全然気にしねえよ。本当に甘くて美味しかったし、中にはそれなりに良い果物も混ざってただろうしな。」
「そうですよ。納得の美味しさでしたから。気になさらないでください、タクトさん。」
「ありがとう、2人共。それじゃあ、それが2杯で銀貨1枚と銅貨2枚。それと、ビーフジャーキーは……1袋10枚入りで銅貨8枚で売ろうと思う。だから、クレスが1袋だけお持ち帰りなら銀貨2枚、テレサが2袋お持ち帰りなら銀貨2枚と銅貨8枚だな。」
「おう!わかった。」
「わかりました。」
俺は2人から、提示した丁度の代金を受け取る。
「はい、2人共、丁度いただきます。じゃあ、まずはクレスの分を用意して、次にテレサが持ち帰る塩と香料を控えた物を用意するよ。」
「はい。お願いします、タクトさん。」
俺からそれぞれビーフジャーキーの入った袋を受け取った2人は、挨拶をした後、裏通りの方へ歩いて行った。
「さてと……有言実行しないとな。」
【 収納 】のスキルで屋台を片付け、俺は大通りにあるアンネリーの露店へ直行。
そして、彼女にサイダーを試飲してもらった結果……かなりの好印象。
既に言ってしまったため、値段の変動ができないと説明して、俺が提示した銅貨2枚でサイダーを売ってもらえるようになった。




