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Menu 30 ~ バーベキュー ~

大市当日


店から見える大通りの光景は昨日以上の賑わいを見せている。

此処から見えない場所で揉め事でもあったのだろうか?鎧を纏った……たぶん、衛兵と思われる人達が、慌ただしく駆け回っているのも見えた。


「さてと……俺もそろそろ準備するかな。食材は午後からで問題無いから、えっと……あれはカマドでいいのかな?他は網と、木炭と……」


【 創造 】のスキルを発動させ、屋台のすぐ傍に、キャンプ場などに設置されているレンガ造りのカマドを出現させ、網を取り付ける。


「あとは、テーブルと椅子を追加して……」


◇◇◇


16時30分


「こんにちは、タクトくん。」

「こんにちは!」


未だ賑わう大通りの方から、グウェルとアンネリーが歩いて来た。


「おっ!いらっしゃい、グウェルさんと……アンネリー?まだ大市が終わっていないのに、こっちに来て良かったのか?」

「はい!私が用意した商品はありがたいことに、全て売れましたので!タクトさんも、ありがとうございます!あの2品のおかげで、想定していた金額よりも、売り上げ金額が伸びました!」

「おぉ!そりゃ良かったな!」

「こちらへ来る途中、アンネリーさんをお見かけしましてね。【 収納 】のスキルをお持ちとのことなので、少し、協力をお願いしたのですよ。」

「協力?」

「はい!えっと……こちらです。」


そう言いながら、アンネリーは【 収納 】していた大きな樽を5つ出現させる。


「これは?」

「私の屋敷の酒蔵にあったお酒ですよ。話はソニアさんから聞きました。タクトくんは、お酒を飲むことができる歳になるまえに亡くなり、こちらの世界へ来たために、お酒の味が判らないということ。そして、夕食の時間帯の営業の際はお酒の持ち込みが大丈夫だということ。この樽は、この打ち上げを企画した私から、参加してくださる皆さんへの細やかな贈り物にしたいんです。許可、していただけますか?」

「もちろんです!俺は酒に関しては、まったくの無知なので助かります!」

「タクトさん。お店の隣に、何やら見慣れない物があるんですけど……これは?」

「あぁ。今回の料理提供に必要な物だよ。そろそろ、火起こしをしておかないと……」


「こんにちは!来たよ、タクトさん。」


元気良く腕を振り、ヒルダが歩いて来た。


「いらっしゃい、ヒルダ!」

「こんにちは、ヒルダさん。」

「こんにちは!」

「おっ!グウェル殿にアンネリー、早いねぇ!まっ、アタイも人の事言えないんだけどさ!楽しみで、待ちきれなくって。」

「はっはっは!解りますよ、その気持ち。」

「まぁ、他の人が来るまでまだ時間があるだろうし、好きな席に座って、待っててください。」

「はい!ありがとうございます!」


そして……


17時。


大市の終了を、打ち上げのために各飲食店が戦場のような忙しさになるであろう始まりを告げる教会の鐘が、アリアータの町に鳴り響いた。


「今年も大きな問題も無く、大市が終わって良かったです。」

「そうですか?此処から何回か、衛兵さんが慌ただしく走ってる姿が、見えたんだけど……」

「まぁ、些細な諍いはあっただろうねぇ。それだけ皆、自分のトコの商品を売ろうと白熱してたんだから。」

「そうですね。私も、隣のお店のおじさんの気迫に、負けそうになりましたよ。」


「こんばんわ~。」


4人で談話していると、ソニアとロイドが来店した。


「いらっしゃい!ソニア、ロイドさん。」

「ははっ、お邪魔させてもらうよ、タクトさん。おや?領主様もタクトさんのお店を御存知でしたか。」

「はっはっは!えぇ。少し前に教えて頂きまして。貴方が鍛冶屋のロイドさんですね?そう畏まらず、他の皆さんと同じように、名前で呼んでください。」

「良いんですか!?では、御言葉に甘えさせてもらいます、グウェルさん。」


俺達が見ている中、グウェルとロイドが微笑みながら握手を交わした。


「あっ!あの、ロイドさん!私、商人をしているアンネリーと申します!あの、今度、ロイドさんのお店へお邪魔させてもらっても、構いませんか?」

「え?あぁ、もちろんです。いつでも覘きに来てください。」

「はい!」

「うふふ。もう新しい繋がりができましたね。」

「あぁ。この世界の人達のコミュニケーション能力の高さには、驚かされるよ。」

「コミュ?」


「おっ!集まっているな。」


裏通りの方から、セシル、クレス、シーナが歩いて来た。


「いらっしゃい!セシル、クレス、シーナ。」

「よぅ!タクト。上手い飯、食わせてもらいに……って、うおぉぉ!?この町の領主殿に、水軍都督殿!?」

「ん?あぁ、そうか。2人は会うの、初めてか。ソニアなんか、私とお菓子を一緒に食べるくらいの仲だぞ。」

「うふふ。そうですね。」

「ちょっ!?セシル!ソニア殿を呼び捨てにしちゃ……」

「大丈夫。本人から許可を貰っている。」

「えぇ。御2人も、私のことを好きなように呼んでくださって構いませんよ。」

「はっはっは!良い反応でしたが、そう畏まらないでください。私は『 親しみをもって接することができる領主 』を目指したいんです。このアリアータの町を少しでも住み易い町にするために、町の人達や、貴方達冒険者の方々からも率直な意見を聞きたいんです。なので、今後も、タクトくんのこのお店で御会いした時は、今さっきタクトくんに話しかけていたように、私とも、他の皆さんとも気さくにお話していただけると嬉しいです。」

「……セシル、シーナ、今後はずっとこの町を活動拠点にするぞ!こんなに良い領主さんが居る町なら、安心して生活ができるだろうからな!」

「ふふっ、私に異論は無いよ。」

「私も賛成。今度、お金を出し合って、私達の拠点を購入しましょう。」

「おっ!良いな、それ!」

「はっはっは!新しい住民が増えることは、嬉しいですね!これからも、このアリアータの町を宜しくお願いします。」


先程ロイドとしたように、グウェルとクレスは笑顔で握手を交わした。


「あらあら。既に賑やかですね。」


裏通りから、テレサがゆったりと歩いて来た。


「いらっしゃい!テレサ。」

「こんばんわ、タクトさん。まぁ!しばらくこちらのお店に来れなかったですが、その間に新しいお客様も増えたのですね。」

「えぇ、おかげさまで。テレサも今日は楽しんでいってくれ。」

「はい!お言葉に甘えさせていただきますね。」


「こんばんわ、タクトさん。」


最後に、大通りの方からクロエが小走りでやって来た。


「おっ!いらっしゃい、クロエ。」

「これでも早く仕事を切り上げたつもりだったのだけれど……もしかして、私が最後かしら?」

「えっと………うん、そうだな。俺が知ってる顔が全員揃ったみたいだし、それじゃ、始めるか!」


俺は【 創造 】のスキルを発動し、鉄串と、食べやすく切った肉や野菜、処理した魚介類を皿の上に山盛りにした状態で出現させる。


「皆!この串に好きな物を刺して、持って来てくれ。あそこのカマドで順番に炭火焼にするから。」

「おぉ!串焼きですか!」

「刺す具材を選ばせてくれるんだね。どれを刺そうかな……」

「なぁ、タクト!どれでも良いってことは、こんな感じで全部肉でも、良いってことか?」

「誰か絶対、それをやると思ったわ!おぅ!足りなくなったらまた追加で出すから、好きにやってくれて良いよ。」


俺はクレスから肉が連なった串を受け取り、刷毛でソースを塗りながら焼いていく。


「タクトくん。私のもお願いできますか?」

「僕のも頼むよ。」

「あいよっ!」


グウェルが作った物、ロイドが作った物を受け取り、網の上に置いて同じように焼いていく。


「これは……エビに……イカの足?この丸いのは……何?」

「そうか。シーナはまだタクトの店で、魚介類を食べてなかったか。」

「でも確かに……何でしょうか?これ。」

「お~い!タクトさん。このエビやイカの足と一緒に置いてある、この丸いのは何だい?」

「ん?丸い……あぁ!それはホタテだよ。柔らかいから、簡単に刺せるぞ。」

「あぁ!これ、ホタテだったのですね。衣が付いている物しか知らなかったので……結構、複雑な見た目をしているんですね。」


女性陣もワイワイ楽しみながら、食材を串に刺している光景を横目で見て、安心する。


「……そうだ。グウェルさん。もう樽を1つ開けてしまって良いんじゃないですかね?人数分のジョッキは既に用意してあります。」

「あっ、そうですね。開けましょうか。」

「皆!酒が飲めない俺の代わりに、グウェルさんが酒を用意してくださった!屋台の所にジョッキ……杯が置いてあるから、飲みたい人は各自、好きに取ってくれ。」


俺がそう言うと、盛大に歓声が巻き起こった。


「よし……クレス、グウェルさん、ロイドさん。焼けましたよ!」

「おぉ!ありがとうございます、タクトくん。」

「ありがとう、タクトさん。」

「悪いな、タクト。先に始めさせてもらうぜ。」


俺から串を受け取った3人は各々、串に刺さった食材にかぶり付いた。


「んっ、はぐっ……もぐ……うっ、うっめぇぇぇぇぇぇ!」

「えぇ、本当に!タクトくんが塗っていたこのソースの味も美味しいですが、何より肉や野菜がこんなにも香ばしくって……」

「そうですね。これは、普通に肉や野菜を焼いただけでは出せない美味しさだ!」

「タクトさん。私達の串も準備ができたわ。焼いてください。」

「了解!でも、誰がどの串か判らねぇな……できあがったら、またクロエを呼ぶから、取りに来てくれないか?」

「えぇ。わかったわ。」


俺はクロエから7人分の食材が刺さった串を受け取り、焼き始める。


「ふむ……クレスさんのあの串……」

「すまない、テレサ。私達のリーダーが、バカなことをして……」

「いえ!そうではなくてですね!面白く思いまして……あぁいう選択肢もあるのですね。では、私も……」


「そろそろ女性陣のも焼き上がるかな。」

「あの、タクトさん。」

「ん?どうしたんだ?テレサ。」

「今焼いてくださっている皆さんの分が済んでからで構いません。こちらを焼いていただけないでしょうか?」


そう言いながら、テレサが今焼いている彼女の分とは違う串を差し出してきた。


「これは……もしかして、全部、ナス?」

「はい。」

「えっと……禊の日って先日終わったんだよな?今日は野菜ばかりに拘らなくても……」

「えぇ。ですので、今焼いてもらっている分には、お肉も使わせていただいております。これはただ、私がナスが好物というだけですので。」

「あぁ!なるほど!そういうことなら、了解。もう焼き上がるんで、次に焼き始めるよ。」

「はい!お願いします。」

「焼き上がるって聞こえたから、来たわよ。タクトさん。」

「おぅ!……ほら。熱いから気を付けてな。」

「えぇ!皆、焼けたわよ!」


クロエが串焼きが乗った皿をテーブルの上に置き、他の人達と話していた皆が自分の作った串を手に取り、食材にかぶり付く。


「んっ、はふっ!……美味しいです!」

「ビックリ……!イカの足、プリップリで美味しい!このホタテも甘くて美味しい!」

「ん~!香ばしく焼けた肉と魚介が、グウェル殿が用意してくれたお酒に、よく合うよ!」


皆美味しそうに食べてくれているみたいで、良かった。


「さて……テレサのこのナスが焼ける前に……」


俺は【 創造 】のスキルを発動させ、テーブルの上に、おにぎりがたくさん並んだ皿を出現させる。


「おや?タクトくん。これは……海鮮丼の、魚介の下にあった……米、だったかな?」

「はい。おにぎりっていって、ただ米を形にしたんじゃなくて、塩で味付けをしています。よろしければ、どうぞ。」

「ほう……では……」


グウェルはおにぎりを1個手に取り、かぶり付いた。


「ん……もぐ……おぉぉ!これは!良い塩加減ですね。これだけでも美味しいですが、この串焼きのお肉と交互に食べると、ちょうど良い味になります。」

「マジか!?グウェルさん!タクト、俺も1個貰うぜ!」

「私も、1個貰うぞ。」

「おう。好きに取って食べてくれ。」


セシルとクレスが、串焼きを片手におにぎりを手に取り、かぶり付く。


「もぐ……もぐ……うおぉぉ!すげぇ!片手に串焼き、片手にこのおにぎりだっけ?この食べ物!これで最強の装備が完成した!」

「確かに。以前のサンドイッチのように、片手で食べられるのも、都合が良いな。」

「実はな、このおにぎり……そうして串焼きのお供にするのも良いんだけど……」


俺はおにぎりを手に取り、バーベキューソースに使った物とは別の刷毛で醤油を塗り、テレサ用ナスが連なった串の隣で焼き始める。


「ナスも良い感じに焼けて来たな。テレサ!もうすぐできるぞ!」

「はぁい。」

「タクトさん!私も、2本目お願いします!」

「僕も良いかな?」

「もちろん!」

「おや?タクトさん、その三角形の……香ばしくって凄く良い匂いだね。」

「あぁ。醤油を塗った両面に良い色がついてきたみたいだし……ロイドさん。焼きおにぎりっていうんだけど、食べてみるかい?」

「ありがとう。いただくよ。」


俺はアンネリーとロイドから串を受け取り、焼きおにぎりを皿に乗せ、ロイドに差し出す。


「どうぞ。熱いから気を付けて。」

「うわっと!おぉ!本当に熱いね!」


ロイドは何とか掴むことができた焼きおにぎりに、豪快にかぶり付く。


「んっ、はふ……もぐ……んっ!おぉ!良いね、これ!表面がカリッとしていながら、中はモチモチして……醤油っていうのかい?これがとっても香ばしくって、良い香りがして、凄く美味しいよ!」

「タクトさん!私にも、焼きおにぎりをお願いします!」

「タクトくん、私にもお願いできますか?」

「俺にも頼むよ!」

「あいよ!……その前に、はい。テレサ。」


俺はできた串焼きをテレサに手渡す。


「ありがとうございます。はむ……んっ!これ、ショーユの味ですね!」

「あぁ。ナスはソースより、醤油の方が合うと思って。」

「えぇ!とっても美味しいです!あら?ナスの上のこれは……こちらも香りが良いですね。」

「あぁ。前にテレサに渡した昆布を、あれよりも薄くスライスした物だよ。」

「まぁ!昆布だったのですか!オダシでしたっけ?スープを作るだけでなく、こうして食べることもできるのですね!」


追加でトッピングしたとろろ昆布だったけど、テレサはめちゃくちゃ気に入ってくれたみたいだった。


その後も各々、串焼きやおにぎり、お酒を手に、いろんな人と談笑して楽しんでくれている。


「ふぅ……」

「お疲れ様、タクトさん。」

「ん?あぁ。クロエも楽しんでくれているか?」

「えぇ、とっても。衛兵って職は、相手からの印象は様々なんだけれど……此処に集まってくれている人達は、皆気さくに話しかけてくれて、嬉しいわ。」

「そっか。アンネリーも、この打ち上げに誘う時、自分は猫の耳と尻尾を持つ亜人だからって、遠慮してたんだけどな……俺とその時その場に居たグウェルさんで、『俺のこの店に集まる人で、亜人だからって差別する人なんて居ない』って言って誘ったんだよ。結果、その通りだったみたいで、安心した。」


アンネリーは今、シーナと焼きおにぎりを頬張りながら、楽しそうに談笑している。


「うふふ。楽しそうね、アンネリー。」

「あぁ。さてと……そろそろ最後の一手を投じるかな。」

「あら?まだ何かしてくれるの?」

「甘い物をちょっとな。」


俺は【 創造 】のスキルを発動し、マシュマロが入った器を出現させる。


「タクトさん、これは?」

「マシュマロって言ってな、卵の黄身じゃない、卵白の方を泡立てた物に砂糖や水飴なんかを加えて作った物だ。そのまま食べても美味しいんだけど、これを串に刺して……」


俺はマシュマロを3個串に刺し、軽く焼き色を付ける。


「あんまり火を通し過ぎると、このマシュマロに引火して炭になっちまうからな。表面に焼き色を付ける程度に炙って……よし。ほら、クロエ。食べてみな。」

「えぇ!いただきます。」


クロエは俺から串を受け取り、焼けたマシュマロに噛みついた。


「はふっ!あっ……ん、もぐ……んっ!甘くて、サクサク香ばしいのに、中はトロトロしていて!……んっ、凄く美味しいわ!」

「な?香ばしくって美味しいよな。」


「あっ!クロエがまた、美味しそうな物を食べてます!」

「抜け駆けは許されないな。」


クロエに気付いたソニアとセシルが、俺達の傍まで歩いて来た。


「あら?遅かったわね、貴女達。このマシュマロは、全て私が独占させてもらったわ。」

「こらこら。待ってな、ソニアとセシルの分もすぐできるから。」


俺はクロエに渡した物と同じ物を2本作り、ソニアとセシルに1本ずつ手渡した。


「熱っ……はむ、ん……もぐ……ん~!甘くて香ばしくって、美味しいです!」

「このトロっとした中身も良いな。うん、美味しいよ!」

「そんで、このマシュマロ。こうして普通に焼いて食べても美味いんだけど……」


俺はマシュマロを1個串に刺し、反面にチョコレートを塗ったクッキーを追加で出現させ、炙ったマシュマロを2枚のクッキーの、チョコレートが塗ってある方の面で挟む。


「ほら、クロエ。食ってみな。ソニアとセシルの分もすぐ作るよ。」

「えぇ。いただきます。はむ……ん……んっ!凄い!タクトさん、これ、香ばしいマシュマロとチョコレート、クッキーの甘さが混ざって、物凄く美味しいわ!何て言う料理なの?」

「サモアっていうんだ。元々はさっき食べた、マシュマロを焼いたヤツのことをいうそうなんだけどな。俺の居た世界の言葉で『 もっと、ください 』って意味の『 Some More 』が名前の由来なんだとか。ほら、ソニアとセシルの分。」

「ありがとうございます。タクトさん。」

「確かにこれは……カロリーが危険で危ないけれど、もっと欲しくなるわね……タクトさん。あの、もう1個……お願い。」

「ははっ、あいよ。」

「おや?美味しそうな物を食べていますね。タクトくん、私にもお願いできますか?」

「もちろんです。クロエの分が終わったら、すぐ作りますね。」


そして、デザートのサモアも食べ……集まってくれた人達から、『 おなかいっぱい 』の声を頂いた。


「タクトくん。本日はごちそう様でした。それで、今回の代金なのですが、今回は皆を代表して私が支払わせていただきます。お幾らですか?」

「ん?あぁ、お代は良いですよ。せっかくの祭りですし。今後も時間のある時、気の向いた時に、この店を利用してくれれば、それで良いです。」

「いや!流石にこれだけ飲み食いさせてもらって、そういう訳には……」

「でも、正直、誰が何をどれだけ食べていたか判んねぇからな……バーベキューの串を使い回ししていた人だって居るだろうし……ん~……じゃあ、グウェル殿の面子を立てて、金貨2枚……で、どうですかね?」

「わかりました。」


グウェルは財布を開き、金貨2枚を支払ってくれた。


「本当は無料で良かったんですけどね。俺もグウェルさんも、皆に楽しんでもらうって目的は達成できたわけですし。」

「はい。本日はありがとうございました、タクトくん。」

「ありがとうございます、タクトさん!」


グウェルがそう言ったのに続き、皆から感謝の言葉を述べられる。


「タクト!本当に美味かった!また今度店で……いや、この料理はこういう皆で集まった時に喰うべきだな。また、何かの催し物で皆が集まった時に出してくれよ。」

「おう!約束する。その時はまた、喜んで出させてもらうよ。」


その後、お開きということで、各々満足気な笑みを浮かべて帰って行った。

1人を除いて。


「はぁぁ……さすがに疲れたな。」

「うふふ。お疲れ様、タクトさん。」

「おぅ。クロエも、腹いっぱい食ったか?」

「えぇ!お腹いっぱい料理を食べたし、いろんな話もできて、とっても楽しかったわ。」

「ははっ、そいつは良かった。」


俺はクロエと会話しながら、自分の分の串焼きを焼き始める。


「そんなことより、お嬢さん。他の皆と帰るタイミングを逃しちまったみたいだけど、大丈夫か?夜間だと変な奴に絡まれたり……」

「あら?タクトさんは、私がそんな不埒者に後れを取るとでも?襲い掛かって来たら、返り討ちにしてやるわよ!」

「ははっ、確かに。」

「でも、心配してくれて、ありがとう。その気持ちはとっても嬉しいわ。そうね。じゃあ、タクトさんの食事が終わったら、詰め所まで送ってもらおうかしら。」

「おう良いぜ。でも、何か遭ったら、俺がクロエを守るんじゃなくて、クロエに守ってもらうことになりそうだけどな。」

「うふふ。もぅ!笑わせないでよ。」


その後、食事を終えた俺は屋台などを【 収納 】して、クロエと歩幅をできるだけ合わせて談笑しながら夜のアリアータの町を歩き

無事、彼女を衛兵の詰め所まで送り届けることに成功したのだった。

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