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Menu 28 ~ ティラミス ~

16時


「こんにちは、タクトさん。」


賑わう大通りの方から、クロエが微笑みながら歩いて来た。


「おぅ!いらっしゃい、クロエ。休憩か?」

「えぇ。時間に都合がつく時に、タクトさんのお店で休憩するのは、もう日課になったわ。」

「ははっ、そいつは嬉しいね。あっ、ソニアとセシルなら、もう来たぞ。」

「そう。あの子達、いっつも私が食べているお菓子を狙ってくるんですもの……今日はゆっくり食べられそうだわ。」


そう言いながらクロエが、俺の正面の席に座る。


「さて、タクトさん。明日に前夜祭、明後日に大市を控えているワケだけど……どう?準備は順調に進んでる?」

「ん~……準備っていっても、注文された物で時間がかかりそうな物は【 創造 】のスキルで出すし、特に何もしてねぇかな。」

「うふふ。そういえばそうね。営業はやっぱり朝から?」

「あぁ。開始の鐘が鳴る8時から、始めようとは思ってるけど……他の飲食店は違うのか?」

「そうね。早くても10時から……昼食の時間に合わせて営業開始するお店が殆どよ。」

「なるほど。まぁ、別に他の店と客を取り合うようなことをするつもりは無いんだけどな。クロエ達のような常連さんはもちろん、偶然この通りを歩いていて、偶然俺の店に気付いて来てくれたお客さんを大事にするだけさ。」

「えぇ。タクトさんはそれで良いと思うわ。さてと……」


クロエは微笑みながら台の上に置いてあったメニューを手に取り、1枚ずつページを捲っていく。


「ん~……今日はどのお菓子にしようかしら?見る度に思うんだけど、どれも美味しそうで魅力的なのよね……あっ、そうだ!ねぇ、タクトさん。」

「ん?何だ?」

「オススメ……とはちょっと違うのだけれど、タクトさんはこのメニューに載っているお菓子の中で、どれが1番好きなの?今日はそのお菓子を食べてみようと思うの。」

「俺が好きなお菓子か……わかった。でも、メニューに載せてたかな?……あぁ、あった。それじゃ、スキルで出しちまうな。」


俺は【 創造 】のスキルを発動し、デザートが乗った皿をクロエの前に置いた。


「これが、タクトさんの1番好きなお菓子……ケーキ?タクトさん。これは何ていうデザートなの?」

「ティラミスっていうんだ。とりあえず1口、食べてみな。」

「えぇ。いただきます。」


クロエはスプーンで上品にティラミスを掬い、口へと運んだ。


「んっ!柔らかい……もぐ……何これ、とっても美味しい!いろんな甘さとほろ苦さが合わさって、凄いわ!このお菓子!」

「甘いコーヒーを染み込ませたスポンジ生地と、砂糖とかを加えたマスカルポーネっていうチーズを交互に数回重ねて、冷やし固めてからココアパウダーっていう、その茶色い粉をかけてあるんだ。」

「この噛むとじんわりとコーヒーが染み出してくる生地、本当に美味しいわ!チョコレートの香りがする粉も、とっても良い……それとこのチーズ……レアチーズケーキの味と近い物があるわね。」

「レアチーズケーキが好きなら、コイツも気に入ってくれると思ったんだ。どうかな?」

「えぇ!凄く気に入ったわ!ぁ……タクトさん、先にもう1皿、お願いしてもいいかしら?」

「もちろん。」


俺はティラミスをもう1皿出現させ、クロエの前に置いた。


「ありがとう。」

「ははっ、どういたしまして……で、いいのかな?それで?クロエは今日、どんな仕事をしてたんだ?」

「聞いてくれる?タクトさん。今日は……」


その後、雑談をしながら、クロエは2皿目のティラミスも完食した。


「ふぅ……ごちそう様、タクトさん。」

「おぅ、御粗末様。代金はティラミス1皿銅貨6枚が2皿で、銀貨1枚と銅貨2枚だな。悪い、ちょっと他のケーキより値段が高いんだ。」

「そんな!タクトさんが謝ることなんて、何も無いわ!2皿でこのお値段なんでしょ?私やソニアが以前利用していたお店のケーキは、レアチーズケーキやティラミスよりもその……少し、質が悪かったのに、1皿で今回の値段……それ以上のこともあったの。それに比べたら、タクトさんが出してくれるお菓子の値段は、納得できる物だから、気にしないで。」


クロエはそう言いながら財布から銀貨と銅貨を取り出して支払ってくれた。


「ありがとう。丁度、いただきます。……あっ、そうだ。クロエ。大市の日のことなんだけど、ソニアからもう聞いていたりするか?」

「え?いいえ。ソニアからは『 大市の日が楽しみ 』としか……何かあるの?」

「あぁ。先日、グウェルさんから、大市が終わったら打ち上げをしたいから、この店を利用したいって頼まれてさ。集まれる人だけでも集まって、飲み食いしながらより親睦を深めようってことらしい。」

「あら!良いじゃない。お料理はタクトさんが?」

「まぁ、簡単な物だけどな。それで、クロエも……仕事が終わってからで良いから、もし良ければ参加しないか?」

「えぇ!もちろん!断る理由が無いわ!仕事を早急に終わらせて、絶対に参加させてもらうわね!」

「ははっ、おう。待ってるぜ、クロエ。」


「こんにちは、タクトさん、クロエさん!」


大通りの方から、アンネリーが笑顔で歩いて来た。


「おぅ!いらっしゃい、アンネリー。」

「うふふ。こんにちは、アンネリー。お店の準備は順調?」

「はい!まぁ、タクトさんと同じく個人経営なので、こうして食事に出かけるときは、盗難防止のために【 収納 】のスキルで1度全部片づける必要がありますが。」


そう言いながらアンネリーがクロエの右隣……俺から見て左隣の席に座る。


「ところで、クロエさんは本日、何を召し上がられてのですか?」

「え?……うふふ。そうね、『 店主のオススメのお菓子は何ですか? 』って質問したら、問題無く出てくるお菓子よ。ね?タクトさん。」

「ははっ、そうだな。うん、間違いない。」

「おぉ~!じゃあ、私もそれ!『 タクトさんのオススメのケーキ 』をお願いします!」

「承りました。」


その後提供したティラミスを、アンネリーも満面の笑みを浮かべながら食べてくれた。

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