第一章 《探し人》
_どこだ此処。
ゆっくりと辺りを見回すが、辺りは真っ暗で自分が今何処に居るのか検討が付かなかった。
ただ分かるのは、そこが病院のトイレではないのが分かった。
確実に病院にいたのは約三十分前、急に咳が止まらなくなり顔を上げると、そこはトイレには違い無さそうだったが木造の見たことのない個室だった。
[おい!誰だずっと入ってるヤツ!早く出ろよ。]
外からは荒そうな男の声がして、俺の気持ちなど知らないと言う様に扉をドンドンと叩いて催促をする。
「あ、スミマセン。ちょっと咳が止まらなくなっちゃって...。」
木造の戸を押して外で待っていた男にひとまず詫びを入れると、
やはり見たこともない街並みが目に映った。早く病院に戻らなければまた咳が止まらなくなってしまうかもしれない。急いで病院の目印の白く高い塔を探すが、映画のセットの様な低い木造の建物が並ぶばかりで高い塔などは全く見えない。街を歩く人々も着物を着ていて男達は腰に刀を差している人もいた。
「...刀、着物...街並み。...ホントにここ何処...?」
俺の服装を奇妙に思いひそひそと話をしだす町の人にも気付かず、まずは頭の中で冷静に分析していく。町人の格好からして江戸時代?ここが現代ではないのだけは分かった。
「総司!探したぞ!毎度毎度遊び歩いて...その恰好は何だ?」
「え?人違いだと思いますけど...」
さながら不審者の様にきょろきょろと辺りを見回していると、背後から声をかけられて力強く肩を叩かれる。振り返ると長身長髪の高い位置で髪を結っている男が厳しい目をして立っていた。浅葱色の羽織がとても目立っている。
「お?...顔が似てるが、確かに違うか...?」
まじまじと俺を見ながら首をかしげていたが何かひらめいたように俺の腕をつかんで歩き出した。
「えっちょっと!俺は探してる場所があってッ!」
「悪い...後で俺も一緒に探すから少し付き合ってくれ。
実はある人物を探してるんだが、見つけてこなかったら怖い人に怒られるんだよ。
お前そいつに結構似てるから...助け合いだと思って!な?」
「はぁ。」
確かに、知らない土地を一人で探し回るより恩を売っておいて一緒に探してもらうのも悪くはない。そう思うと一人で納得して見失う前に俺は男の後ろ姿を追いかけた。




