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君が忘れた恋を、僕は今も覚えている  作者: 著者:月城レイ 編集:月城のの
第二章 偽りの恋人(第6話〜第10話)
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第8話 病室を訪れた女優

数日後、千秋の病室に思いがけない来客があった。

「失礼します」

看護師に案内されて入ってきたのは、テレビで見たことのある女性だった。

千秋は驚いて目を丸くした。

「えっ……坂口日奈さん?」

「こんにちは。急にごめんなさいね」

日奈は優しく微笑み、ベッドのそばまで歩いてきた。

「零くんから、あなたのことを聞いたの。体調はどう?」

「だいぶよくなりました。わざわざありがとうございます」

千秋は緊張しながらも、丁寧に答えた。

日奈は千秋の顔をじっと見つめた。彼女の表情には、心配しているような色と、何かを確かめるような様子が混じっていた。

「零くんとは、仲がいいの?」

突然の質問に、千秋は少し考えた。

「仲はいいと思います。でも、私……事故のせいで記憶がなくなっちゃって。零との昔のことも、よく覚えていないんです」

「そう……」

日奈の笑顔が一瞬だけ曇った。

「それは、つらいわね」

「はい。でも、零はいつも来てくれるんです。話していると、なんだか安心するんですよね」

千秋は照れくさそうに笑った。

その様子を見て、日奈は胸の奥がざわつくのを感じた。零の話をする千秋の表情には、言葉だけでは説明できない親しさがあった。

「……零くんは、優しい人だから」

日奈はそう答えた。

帰り際、日奈は千秋に小さな花束を渡した。

「早く元気になってね。また来てもいいかしら?」

「もちろんです! ありがとうございます!」

千秋は笑顔で見送った。

病室を出た日奈は、廊下で足を止めた。

千秋は記憶を失っている。それなのに、零を信頼していることが伝わってきた。

日奈は小さく息を吐いた。

自分が零のそばにいたいと思うなら、ただ待っているだけでは駄目なのかもしれない。

彼女の心に、新しい決意が芽生え始めていた。

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