第7話 届いた手紙
翌日の放課後、零のもとに一通の手紙が届いた。
差出人の名前を見た瞬間、零は思わず足を止めた。
坂口日奈。
テレビや雑誌で見かける人気女優だった。美しい容姿と明るい笑顔で知られ、同年代の人々からも注目を集めている。
「……なんで俺に?」
手紙には、零に会いたいという内容が書かれていた。以前、ある場所で偶然会話を交わしたことがあり、そのときの零の態度が印象に残っていたらしい。
普通なら、喜んでもおかしくない話だった。
しかし、零の頭に浮かんだのは日奈ではなく、病室で笑う千秋の姿だった。
「今は、それどころじゃないだろ……」
手紙をしまおうとしたとき、スマートフォンが鳴った。画面には、知らない番号からの着信が表示されている。
零が電話に出ると、落ち着いた女性の声が聞こえた。
「突然すみません。坂口日奈です。手紙、読んでいただけましたか?」
「……読みました」
「よかった。実は、どうしてもお話ししたいことがあるんです」
日奈の声は丁寧だったが、どこか急いでいるようにも聞こえた。
「お会いできませんか?」
零はすぐには答えられなかった。
千秋のことだけで頭がいっぱいだった。これ以上、余計な問題を抱えたくない。それが本音だった。
「すみません。今は忙しくて」
「そうですよね……。でも、一度だけでもお願いします」
電話の向こうで、日奈は少し黙った。
「あなたに、どうしても聞いてほしいことがあるんです」
その言葉が気になり、零はため息をついた。
「……短い時間だけなら」
「ありがとうございます!」
日奈の声がぱっと明るくなった。
電話を切った零は、手紙を見つめた。
この出会いが、千秋との関係を大きく変えてしまうことになるとは、まだ想像もしていなかった。




