第6話 変わらない想い
病室の窓から、柔らかな日差しが差し込んでいた。
千秋はベッドの上で、窓の外を眺めていた。事故に遭ってから、少しずつ体調は回復している。しかし、失った記憶は戻らないままだった。
「千秋、今日は調子どう?」
零が病室に入ってきた。
「うん、大丈夫! 零は今日も来てくれたんだね」
千秋は笑顔を向けた。
その笑顔を見るたび、零の胸は締めつけられた。以前の千秋も、こんなふうに笑っていた。何気ない会話をして、隣を歩いて、時にはくだらないことで言い合いをした。
けれど、今の千秋は、自分との思い出を何一つ覚えていない。
「……零?」
「え?」
「なんか悲しそうな顔してるよ。私、何かしちゃった?」
千秋が心配そうに尋ねる。
「違うよ。千秋は何も悪くない」
零は慌てて首を横に振った。
「そっか。ならいいけど……無理しないでね」
記憶を失っているのは千秋なのに、彼女は自分を気遣ってくれる。その優しさは、以前と何も変わっていなかった。
零は千秋の手元に視線を落とした。
もう一度、彼女と笑い合いたい。以前の関係に戻りたい。たとえ記憶が戻らなくても、これから新しい思い出を作っていきたい。
「千秋」
「なに?」
「俺、これからも会いに来ていいか?」
千秋は不思議そうに首をかしげたあと、明るく笑った。
「もちろん! 零が来てくれるとうれしいから」
その言葉に、零は小さくうなずいた。
彼女の記憶が戻る保証はない。それでも、自分の気持ちは変わらない。
零は心の中で、もう一度誓った。
何があっても、千秋のそばにいよう。
たとえ彼女が自分を忘れていても、この想いだけは忘れない。




