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君が忘れた恋を、僕は今も覚えている  作者: 著者:月城レイ 編集:月城のの
第二章 偽りの恋人(第6話〜第10話)
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第9話 秘密の提案

日奈との約束の日、零は人目につきにくい喫茶店を訪れた。

窓際の席に座っていた日奈は、零を見つけると立ち上がった。

「来てくれてありがとう」

「それで、話って何ですか?」

零が席に着くと、日奈は真剣な表情になった。

「私、あなたのことが気になっているの」

予想していなかった言葉に、零は黙り込んだ。

「初めて会ったときから、あなたのことをもっと知りたいと思っていたわ」

「……すみません。俺には、大切な人がいます」

零は迷わず答えた。

日奈は一瞬だけ視線を落とした。しかし、すぐに顔を上げた。

「千秋さんのことね」

「どうして……」

「病院で会ったから。あなたがどれだけ彼女を大切にしているか、少し分かった気がする」

日奈は指先を握りしめた。

「それでも、あなたのそばにいたいの。お願いがあるわ」

零は警戒しながら彼女を見た。

「私と恋人のふりをしてくれない?」

「……は?」

「期間限定でいいの。私には、どうしても恋人がいるように見せなければならない事情があるの」

日奈は詳しい事情をすぐには話さなかった。ただ、仕事上の立場や周囲からの期待が重なり、恋愛についても注目される状況に困っているのだという。

「もちろん、あなたが嫌なら断ってくれていいわ」

零は首を横に振った。

「俺は誰かの恋人のふりをするつもりはありません」

「分かってる。でも、あなたにしか頼めないの」

日奈の声は震えていた。

零は病院で眠る千秋を思い浮かべた。今は千秋の回復を支えることだけに集中したい。誰かと偽りの交際を始めるなど、考えられなかった。

「少しだけ、考えさせてください」

そう答えて、零は席を立った。

日奈は引き止めなかった。

ただ、彼が店を出ていく背中を見つめながら、静かにつぶやいた。

「……それでも、諦めたくない」

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