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君が忘れた恋を、僕は今も覚えている  作者: 著者:月城レイ 編集:月城のの
第二章 偽りの恋人(第6話〜第10話)
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第10話 偽りの恋人

その夜、零は病院からの帰り道を一人で歩いていた。

千秋は今日も笑ってくれた。明日も会いに行くと約束した。それなのに、日奈の提案が頭から離れなかった。

翌日、零は日奈に連絡を入れた。

「話を聞かせてください。条件によっては、協力できるかもしれません」

日奈はすぐに返事をした。

二人は再び会い、交際の期間や人前での振る舞いについて話し合った。日奈は、周囲に恋人として紹介する必要があること、仕事の事情が落ち着くまで協力してほしいことを説明した。

「期間が終わったら、きちんと関係を終わらせます。それ以上のことは求めません」

日奈はそう約束した。

零は最後まで迷っていた。千秋に知られたら、どう思われるだろう。記憶を失った彼女に、自分が別の女性と付き合っていると伝わったら。

それでも、日奈が抱えている事情を聞き、期限を決めたうえで協力することにした。

「……分かりました。ただし、これはあくまで契約です。俺の気持ちは変わりません」

日奈は悲しそうに微笑んだ。

「ええ。それでも、ありがとう」

その日から二人は、人前では恋人として振る舞うことになった。

並んで歩き、写真を撮り、知人の前では自然に会話をする。外から見れば、仲のいい恋人同士に見えた。

しかし、二人の間には埋められない距離があった。

帰り際、日奈は零に尋ねた。

「いつか、私のことを好きになってくれる可能性はある?」

零は少し黙ったあと、はっきりと答えた。

「……分かりません。でも、今は千秋が大切です」

日奈はうつむき、それから笑顔を作った。

「そう。なら、今はそれでいいわ」

零は胸に小さな痛みを感じながら、その場を離れた。

彼はまだ知らなかった。この秘密が、千秋との関係にどんな影響を与えるのかを。

そして日奈もまた、契約の終わりに自分の気持ちと向き合うことになるとは、想像していなかった。

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