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第47話 くじ引きに66万円!?

美月は部屋へ戻るなり


真っ先に青いジャージを脱いだ


「さすがにこれはないわ!」


『3-A 相沢』


右胸のワッペンを見て


美月はジャージを洗濯かごへ放り込んだ


それから鏡の前に立つ


いつもの服に着替え、髪を整える


少しだけ化粧も直した


「別に……」

「気合い入れてるわけじゃないんだから……」


鏡の中の自分へ言い聞かせる


「人のお家にお邪魔するんだから」

「礼儀よね、礼儀」


美月は何度か頷いた


そして怜司に貸すブルーレイを紙袋へ入れ、部屋を出る


隣の扉の前に立った


御堂


久しぶりに掛かった表札を見て


美月の喉が鳴る


「ただシチュー食べるだけ」

「絶対大丈夫よ……」

「前みたいにならない」


自分に言い聞かせて呼び鈴を押した


ピンポーン


ほとんど待つ間もなく扉が開く


「美月」


「お、お邪魔します」


怜司も作業着から着替えていた


チャコールグレーの薄手のニットに


黒のゆったりとしたパンツ


美月は一瞬だけ怜司を見つめた


部屋着……


今日は、ちょっとだけ黒じゃない……


これはこれで破壊力あるわね……


「どうした?」


「なんでもない」


「そうか」

「入ってくれ」


「うん」


美月は怜司に迎え入れられ、部屋へ足を踏み入れた


そして


「え……?」


その場で動きを止めた


以前とは明らかに様子が違っていた


壁にはアニメのポスター


前はなかった大きな棚には漫画や小説がぎっしりと並び


その横にはフィギュアまで飾られている


さらにブルーレイやDVDのボックスが何段にも積まれていた


「ちょ、ちょっと待って!」


美月は部屋を見回す


「何これ!?」


「中古販売店に行ったら売っていた」


「だからってこんなに買ったの!?」


「欲しいと思ったから買った」


怜司は棚を見る


「ただ、置く場所がない」

「仕方なく倉庫を借りた」

「だがそれでは、見るのに不便だ」


美月は頭を抱える


いやいやいや


この間まで何もなかったわよね!?


美月は呆然としながらテーブルを見る


そこにはすでにテーブルクロスが敷かれていた


「これ……」


見覚えのあるアニメのキャラクターが大きく描かれている


怜司がキッチンから皿を運んでくる


「できたぞ」


「え!?」


皿まで作品に登場するマスコットキャラクターの形をしていた


その中には湯気を立てるシチュー


さらに横には同じキャラクターの顔をかたどったパンまで置かれる


「こんなパンまで売ってるんだ」

「初めて見た」


「いや」


怜司は椅子に座る


「俺が焼いた」


「焼いた?」

「作ったってこと!?」


「ああ」

「形を整えるのに3回失敗した」


「そこまでやる!?」


「温かいうちに食べてくれ」


美月も椅子に座った


美月は恐る恐るシチューを口へ運ぶ


「ん!」


もう一口飲む


「なにこれ!」

「めちゃくちゃ美味しい!」


これはやばいわ……


ってか前のロールキャベツも


たまに思い出すのよね


私……


沼に落とされたあげく


胃袋まで掴まれてない?


「そうか、良かった」


怜司は満足そうに小さく笑った


「美月に食べてもらいたくて作った」


美月の胸が跳ねる


「そういうセリフ」

「サラっと放り込んでこないでよ……」


怜司はリモコンを手に取る


テレビに映し出されたのは


魔法少女たちが戦うアニメだった


「あ、これ観るんだ」


「ああ」


「今、2周目だ」


「2周目!?」


「最後まで観てから最初に戻ると」

「まるで違う作品に見える」


怜司は画面に映る黒髪の少女を指差した


「特にこの少女だ」

「初めて観た時は」

「なぜこんな行動をするのか理解できなかった」

「だが」

「時間移動する事実を知ってから見返すと意味が分かる」


美月はスプーンを持ったまま


真剣にアニメを見ている怜司を眺めた


かなり……ハマってる……


これって……


私のせいよね……


「美月」


怜司に呼ばれて美月ははっと我に返った


「な、なに? 怜司君」


怜司が自分のスマホを美月に見せてきた


「美月に聞きたいことがあったんだ」


「これが欲しいんだ」

「何回購入すればいい?」

「何度やっても目当ての商品が出てこないんだ」


「え?」


そこにはアニメのオンラインくじの画面が表示されていた


「これ、くじびきだよ」

「どれが当たるかはわからないのよ」

「知らないで引いちゃったの?」


「くじ引き?」

「そんな仕組みなのか」

「欲しい物が出るまで購入するものだと思っていた」

「とりあえず100回分買ってみたんだが」


「100回!?」

「これ1回550円じゃない」

「5万5000円かかってるんだよ?」

「分かっててやってる?」


「ああ」

「その程度なら問題ない」


「他にも引いてないよね?」


「かなり引いたな」


「かなり!?」


怜司はスマホでクレジットカードの利用明細を確認した


「全部で66万円ほどだ」


「66万円!?」


美月は椅子から立ち上がった


「大丈夫なの!?」


「心配するな」

「金ならある」


「そういう問題じゃないのよ!」


美月は疲れたようにため息をついた


「怜司君」

「くじ引き禁止!」


「なぜだ?」


「なんで分かんないのよ!」

「怜司君、放っておいたら無限に引くでしょ!」


「欲しい物が出るまで引くのではないのか?」


「それが駄目だって言ってるの!」


「そうなのか」


「禁止ったら禁止!」

「いくらお金があっても」

「くじ引きに66万円は使いすぎなの!」

「まだ初心者なんだから」

「仕組みもよく分からないまま」

「勝手に引くのは禁止だからね!」


怜司は少し考えた


「初心者か……」

「そういうものなのか?」


「そういうものなの!」


「分かった」

「引く際は美月に確認する」


怜司は素直にスマホをテーブルへ置いた


美月は深いため息をついて椅子に座る


部屋をオタク部屋に変え


グッズを置くためだけに倉庫まで借りて


キャラクターのパンを自分で焼き


アニメを2周して伏線を考察し


挙げ句の果てには、オンラインくじに66万円


美月はゆっくりと怜司を見る


私……


もしかして……


とんでもない化け物を育ててしまったのかも……






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