↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/51

第46話 怜司君、オタクになってない?

「そうだ、美月」


美月は少しどきりとして怜司を見る


怜司は小さな紙袋を持ち上げた


前に美月から借りていたブルーレイだ


「返すのが遅くなってすまない」


それは子供の姿になった高校生探偵が


いろんな事件を解決するシリーズの劇場版だった


「うん、ちゃんと観た?」


「3回観た」

「原作漫画も全巻読んだ」


「え!?」


美月は目を見開く


「ぜ、全巻!?」


「ああ」


「100巻以上あるのよ!?」


「長かったな」

「だが、面白かった」


美月は怜司をまじまじと見る


「怜司君……」

「もしかして、アニメとか漫画とか」

「普通に好きなの?」


「ああ、好きだ」

「俺は元々、少年マガジンを長年愛読している」


そこで美月は前に達也からもらった怜司の好きな物リストを思い出す


そういえば、少年マガジンって書いてあった


「じゃあ、ヤンキー漫画とかが好きなの?」


「好きだが、マガジンはそれだけではない」

「魔法使いたちがギルドを組んで冒険する漫画が特に好きだった」

「最近、美月の影響で、TVアニメも観てみた」

「劇場版も含めて、全話観た」


「え!?」

「全部観たの!?」

「あの作品って、かなり長い間やってたでしょ?」


「ああ」

「長かったが、全部観た」


美月は驚いた顔で怜司を見る


「怜司君……」

「思ってたより、ずっとこっち側の人じゃない?」


「こっち側?」


「オタク側よ」


「そうなのか?」


「そうでしょ」


怜司は借りていたブルーレイに視線を落とした


「だが俺は、この作品のTVアニメを全て観ることは断念した」

「1200話以上ある」

「単純計算でも480時間は必要だ」

「倍速再生して見るという方法も知った」

「だが、俺にはいまいちしっくりこない」


美月が目をぱちぱちさせて怜司を見る


「ひょっとして」

「他にもなにか観た?」


「ああ」

「限られた時間で観るものの選定には苦労している」

「最近は、悪役女王に転生した少女が」

「民のために尽くす作品が気に入っている」


「え!?」

「あれ観てるの!?」


「ああ」

「登場する男性キャラクター達の心情に親近感がある」

「彼らは主人公を純粋に愛し……守ろうとする」

「俺は……」

「彼らを尊敬している」

「2期が最近終わってしまった」

「3期を楽しみにしている」

「1期の主題歌が好きでな、毎朝聴いている」


美月は嬉しそうにほほ笑む


「そうなの?」

「私も好きなんだ!」

「ちなみに推しキャラは!?」


「アーサーだ、他にいるのか?」


「いるでしょ!?」

「怜司君はなんでアーサーなの?」


「彼が進むべき道は」

「明らかに騎士ではなく医師だ」

「民を思うなら、尚更、その才能を生かすべきだ」

「そして、主人公も周辺の人間も、彼にそうさせるべきだ」

「彼には特別な価値がある」

「星の数ほどの人を救えるほどの……」

「だが、その事実から皆があえて目を逸らしているように俺には見える」

「アーサー本人も……」


そのまま考え込んだ怜司を


美月はまじまじと見つめる


なんか……


推しキャラを語りながら長考に入ったわ……


アーサーって、自分に価値がないと思ってたのに


主人公との出会いで変わって


騎士として守るために傍にいるんじゃないの?


なんかずれてる気がするけど


言われてみれば、そんな面もあるわね……


……いや……


……これって……


解釈違い?


……よね……


それから怜司に尋ねた


「怜司君……本気で……」

「普通に、アニメの続編を待ってるんだ?」


「面白いものの続きを見たいと思うのは当然だろう」


「いや、そうなんだけど」

「怜司君って、そんな感じだったっけ?」


「感じとかは分からない」

「実は原作の小説を読むか悩んでいる」

「できればアニメで続きが観たいのだが……」


美月は言葉を失い


改めて怜司の顔を見つめた


あれ……?


いつの間にか……


怜司君が、オタク化してない?


「いかんせん時間が足りない」

「まだ観たい作品が山ほどある」

「それなのに毎期、新しい作品が増えていく」


怜司は少し考える


「美月の苦しみが、少し分かった気がする」


「いや」

「私は別に苦しんでないけど……」


「美月の次のおすすめ作品を貸してくれ」


美月の顔がぱっと明るくなる


「うん!」

「じゃあ後で……届けるね」


美月はそこで少し考えた


「でもさ、怜司君」


「なんだ?」


「ちゃんと仕事して、ちゃんと寝てね」


「もちろんだ」


……ほんとかな……不安だわ


……これって絶対……私のせいよね


二人はお互いの部屋に向かって歩き出す


「美月」


「なに?」


「実はシチューを作った」

「よければおすそ分けしてもいいか?」


「うん、いいよ」


「よかった」


美月は少し怜司を見つめた後


なんでもないことのように言った


「一緒に食べよ」


怜司がわずかに目を見開いた


「いいのか?」


「うん」


「俺の部屋で?」


美月は怜司の口調を真似た


『彼らを尊敬している』


「って言ってたでしょ?」

「だから……」

「今度は、オタクとしての怜司君を信じてみるわ」

「それに……」


美月は怜司に笑顔を向けた


「二人で食べた方が」

「美味しいんでしょ?」


怜司は小さく笑う


「ああ、その通りだ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。