第34話 誕生日なら、仲直りできる?
しばらくして
美月は膝を抱えたまま、ぼんやりと天井を見つめていた
怜司のことを考えないようにしても
結局、頭に浮かんでくるのは怜司のことばかりだった
そしてふと
怜司の部屋の食卓が頭に浮かんだ
肉じゃが
ロールキャベツ
美月が作った味噌汁
食べかけのまま置いてきた夕食
「……ロールキャベツ」
美月のお腹が小さく鳴った
「そういえば……」
「まだ半分しか食べてなかった」
思わずお腹を押さえる
「美味しかったのに……」
怜司が作った肉じゃがも美味しかった
具材が驚くほど均等な大きさに切られていた
美月が美味しいと言うたび
怜司は目を細めていた
あれが怜司君の笑顔なんだ
最近は少し分かるようになってきた
「残しちゃったな……」
「もったいな~い」
美月はベッドの上に倒れ込む
料理だけではない
花の話も途中だった
怜司がどうして花を育てるようになったのか
どんな花が好きなのか
もっと聞きたかった
「お花の話もしたかったな……」
怜司が花壇を作っていると言っていた
そのときは驚いただけだった
けれど今になって
興味が湧いてきた
怜司が土を触って
苗を植えて
真面目な顔で水をやっているところを想像する
なんだか少し面白い
「花壇作り……」
「私も一緒にやってみたかった」
怖かったはずなのに
考えているのは
結局、怜司としたかったことばかりだった
美月は枕に顔を押し付け
ベッドの上でじたばたした
「あーーーもう、完全に沼ってる~」
自分でも呆れてしまう
まだ怒っている
まだ少し怖い
約束を破られたことだって
ちゃんと傷ついている
それでも
このまま終わるのは嫌だった
「もう一度……」
「ちゃんとお話しして」
「仲直り……したいな」
すぐに連絡したり、会いに行くのは怖い
何を話せばいいのかも分からない
なにか自然に会えるきっかけがあればいいのに
美月は枕元に置いた携帯へ手を伸ばした
ぼんやりしたままカレンダーを開く
そして、ある日付で指が止まった
10月1日
6日後
「誕生日……」
美月は少し考える
誕生日のお祝いをすれば
自然にまた話せるんじゃないかな?
私だって、怜司君に誕生日を祝ってもらって
前よりずっと仲良くなれたんだもん
私も怜司君が喜ぶことをしてあげれば――
美月はそこまで考えて、肩を落とした
けれど
何をすれば喜ぶのか分からない
高い物なんて私には買えないし
「うーん……」
美月はしばらく考えた
そして、ふと一人の顔が浮かんだ
「あ」
怜司を昔から知っている人物
怜司の好みを、きっと誰よりも知っている
「達也さんなら……」
美月はLINEを開いた
相馬達也
名前を押す
トーク画面を開いたところで
美月の指が止まった
達也さんだって、男の人……よね……
一瞬、さっきのことが頭をよぎった
美月は小さく首を振る
達也さんは、ちゃんと私の話を聞いてくれたもん
それに、いつもさりげなく気遣ってくれてた
あの日の達也の言葉が頭に浮かんだ
『俺で良ければ、いつだって話聞いてやるよ』
『友達だろ』
「頼っても……いいよね」
「迷惑じゃないよね……」
達也ならきっと一緒に考えてくれる
美月は文字を打ち込む
少し考えてから送信した
『次の日曜日、暇?』
送った直後
秒で返信が来た
『いくいく! どこいく!?』
「まだ何も言ってないのに……」
美月が怜司の誕生日祝いについて相談したいと伝えると
第二王子ががっくりとうなだれているスタンプが返ってきた
「なんで落ち込むのよ」
それでも達也は
日曜日に一緒に考えようと快諾してくれた




