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ネコ  作者: 秋月心文


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4/9

夜道で足を止めたもの

「え? 何?」 


 急に足が、動かなくなった。

 何かを踏んだのではない。

 まるで誰かに足首を抑えられるような感覚。


 会社からの帰り、いつもの道を歩いて帰る。

 途中、街灯のない地域があるが、いつもと同じ道なので、真っ暗でも進むことができる。


 そんな道を歩いている時にアクシデントが起きた。


 グニャリとした感触を感じたと思うと、足を上げることができなくなったのだ。


 何だ? これは?

 かなりの重さがある。


 もしかして、死体とか?

 何も見えない夜道だからこそ、最悪の想像ばかりが頭をよぎる。


 スマホのライトで照らせば良かったのだが、

 その時は、怖くなってその姿を確認しようとは思わなかった。


 ここには先日まで家があったが、すでに取り壊されていた。

 もしかして、そこに住んでいた人の霊とかなのだろうか?


 しかし、止まっていては、何もできない。

 すこし力を込めて足を上げた。

 上げることができた。


 だけど、こんどは、反対の足が上がらない。

 これも、力をこめれば、足を上げることができた。


 とても、怖かった。

 そして、その足が上がらない状態が何度も続いた。

 さらに、ときどき足元に何かがまとわりつくような感触があった。

 まるで、何か生き物のようだ。


 それより、今の自分は、どういう状態なんだ。

 こうして、疑心暗鬼になりながら、

 遠くの街灯の光がほのかに差し込むあたりまでやってきた。 


 足の周りに、何やら獣がうごめいている。

 相手は、1匹だけらしい。


 何度も、何度も、足の動きを邪魔してくるが、

 光が差し込んできたので、何とか足を運べるようになった。


 やがて、問題の獣の正体が見えて来た。

 ネコだった。

 ネコが、足のまわりをぐるぐる回って、

 匂い付けをしていたようだ。


 そういえば、先日取り壊された家の近くによく現れていた。

 もしかしたら、飼い主のおばあちゃんが亡くなったのかもしれない。

 そう思うと、急に切なくなった。


 かわいそうに感じたが、うちのマンションは動物を飼うことは禁止されている。

 光が差し込む場所に来てからは、ネコは追ってこなかった。


 ネコは、取り壊された家の近くで、

 今も飼い主の帰りを待っているように見えた。

 お読みいただき、ありがとうございます!


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