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タクティクス・クロニクル~水晶《クリスタル》の輝き~  作者: 風快李吏


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■4.樹と風

オレ等は道中こんな話をしていた。なぜ、こんな状態なのに、コグロと会話が出来るのかと。

「なんで、口で言葉を出していないのに、お前と会話が出来るんだ?というより、なんで、姿がなくなって光になって消えて、それで、なぜ、オレの中に居るんだよ!?」

さっきの疲れが残っているのにオレの質問責めもあり疲労しているのが分かる様子で言い方で回答が返ってきた。呆れている様にも聞こえた。

『聞くのは良いがもう少しは自分で考えたらどうだ? 疑問ばかりで疲れが……』

コグロは溜め息をついて、

『あの格好でずっと一緒に居るのはいいが、歩く(移動)のが辛いガヤ。元々、体力がない種族だし。〝紮〟を交わした〝守護〟は、今のオイラ達の様に合わさっていることが多いガヤ。力を貸す時とか便利だし、体力も温存できる。会話をするにもいちいち出てしなくてもいいようにも、そういう機能が備わっているガヤ』

後で聞いたが使木族などの〝守護〟は言葉ではなく気で会話する種族が多いらしい。

オレはへーえ、と納得した。

「使木族の他にもそんなことが出来る族ってあるの」

『ほとんど居ないと思う。会話が出来る族すら数えるほどしかいないのからそれよりも少ないだろう。出来たとしても、〝守護〟以外とでは話せない者の方が多いガヤ。使木族は関係なしに話せるガヤ』

「話せない者は、どうやって意思を伝えるんだ」

『たいがいは言葉ではない言葉、つまり、意思的なものか、ココロを自分の〝守護〟のみに伝えることが出来るらしいガヤ。オイラには関係の無いことだからよく知らないガヤ』

なんだかすごいな、と思った。言葉なしに伝えられるのか。

『言い忘れて居たが〝守護〟と合わさることが出来るのはごく僅かの事ガヤ。オイラが知っているのは主に〝使木族〟と〝禰流族〟だガヤ。禰流族は〝守護〟以外とは話せないそうだ。実際に会ったことがないガヤ』

「へー。良く分かった。ラスト一つだけいいか」

「それ話したら暫く休ませてくれるなら」

相当疲れているらしい。オレもだが。

「あのさぁ、この『樹送楝互』って文字読めるんだけど意味は何?」

『文字の通りの意味だガヤ。樹と人がお互いに交わるという意味だガヤ。さっきも言ったが、使木族と〝紮〟を交わした証ガヤ』

「そのまま意だな。教えてくれて、ありがとな!」


                              *


で、現在は……

会話をしながら歩いてきて約40分。オレ達は〝ソーシャブル〟と言う街に着いた。街の中は沢山の人々がにぎわい、あちこちに商人が店を出して商売をしていた。オレ(達)がここに来たのは言うまでもないが、しっかりと武術を身につけるためと武器や道具・装備などを購入するためだ。……だが、オレ達は今一文無しだ。どこかで仕事を探さないと―――。

「おーい、君!そうそう、君だよ君。そこの少年!」

街の一角に立つ木に凭れ掛かって困っていたオレを少し離れた所から――オレよりも一、二歳年上だろうか、少女が声を掛けながらこっちに近づいて来た。

「あなたは?」

オレは息を切らしている彼女に問いかけた。

「私は、サイネリア・フラン。キャラバンのみんなはサーネルって呼ぶんだ。因みに私の名前は母さんが付けたんだ」

「それでなん――」

「でね、わたしは、〝ストークキャラバンズ〟というキャラバンのメンバーなんだけど……」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!――」

「君、一人……いや、二人、かな?まあ、人は一人だけどね。君困っているっぽいし、私と一緒に来ない?食事も寝る所もあるし、装備品も武器もある。し――」

「あの、オレの話も聞いてぇ――」

「でね、私が……」

こうなったら、もうしょうがない…大人しく聞くか……。

「それで、この街に来た理由は、新しい仲間を見つけるためなんだ。ああそれと、一人メンバーが抜けたのも一つの理由なワケであって。……どう、私らの仲間(メンバー)にならない?」

(じ、自分勝手な人だ…。オレの言葉、一切耳に入れようとしないってどうよ?んっでもってハキハキと元気すぎ。…ナーラに少し似ているような……)

オレはハッキリと大きな声で言った。

「サイネリアさん――」

「サーネルでいいよ!呼び捨てで」

「えーとじゃあ、サーネル、何で、オレのことを一切問わず、勝手に物事を進めるんですか。初対面で、いきなり、仲間に入ってって……。それよりも、初めにちゃんとした自己紹介ぐらいしたらどうですか。オレの名前すら訊かないし……」

『別にいいガヤ。オイラこの人みたいな性格は嫌いじゃないガヤ。まあ、これも何かの縁だし、なったらどうガヤ?一文無しだし、宿ないし。それに仲間、欲しかったんだろ?』

いきなりコグロに話し掛けられた(しかも嬉しそうに)。だから思わず、

「うるせぇ」

と口に出してしまった。彼女にまで聞こえる位の大きさで……。

「え~っと、その~…」

「気にしなくてもいいって。君、使木族と〝紮〟をしているんでしょ?腕見たら判るから」

「えーと、ゴメン」

「大丈夫だって。あ、でも、あまり声に出さない方がいいと思う。ヘンに思われるからさ。あ、そうだ、名前。今更だけど、君、名前は?」

(――出会ってから軽く十分は過ぎていそう……)

不意にそう思いつつ、オレは笑いかけながら自己紹介した。

「オレの名は、ウーグ・ロアイスト。出身地は、マールってとこなんだけど、まあ、こっちにはないらしいから、とにかく、すっごい遠い場所から来たんだ。」

「ウーグっていうんだ。いい名前だね」

「ありがと」

「そういえば、ウーグの連れの名は?」

『オイラは連れじゃない』

(まあまあ)

「オレの使木族の名前は、コグロって言うんだ」

「コグロ、か…。ねえ、見たいんだけど見せてもらえる?」

「いいけど……」

オレは一瞬困った顔をし、目を閉じた。

(なあ、どうやってお前を出せばいいんだ?)

オレがそう訊くとコグロは、

『左手を右腕の印に置いて、文字を詠むガヤ』

「樹送楝互」

そう言うと、〝紮〟と交わした後にやった時と同じく、あの瞬間を逆再生したように光が形を成していった。

(うぅっ痛ェ…涙が出そうだ……)

痛みはあの時ほどではなかったがそれなりの痛みだった。けれどもそれは、すぐに引いていった。残ったのは痺れのみだけだが、今もジーンときている。――前をみると、初めて出会った時と同じ姿でコグロが立っていた。というより浮いていた。

「へぇ、これが使木族か。初めて目の前で見た。守護になっている人って少ないんだよね……。意外と可愛い」

(これがか)

「へヘン。ウーグよりもルックスは上だガヤ!とりあえず始めましてだガヤ」

(こいつ、オレと初対面の時は、幻覚を見せて笑って幾分、偉そうにしてたくせに! 彼女の前では何でやたら愛想がいいんだ?大体、男子が『可愛い』なんて褒め言葉じゃないし)

二人が会話をしている間、オレは、右手を振っていた。本当に痺れて痛い!

「ウーグ大丈夫?〝紮〟して間もないんだね」

「こいつとは今日したばかりだ」

 「それで痛そうなのかぁ。前に誰かに話を聞いたけど初日はかなり痛いらしいけど、その内に自然と痛みは無くなるらしいから心配ないよ」

 「そうだガヤ」

 「だからお前はダ・マ・レ!」

 「いいじゃないガ―……ッ」

 オレは軽くコグロを小突いた。

「いてぇー」

「コグロ、茶々を入れるなよ。茶々を」

「ハハハ。ウーグも知っているだろうけど使木族ってかなり珍しい種族なんだよ」

「えっ そうなの?」

「あれ、知らなかった?」

「うん。使木族って名前も聞いたばかりだし……」

「そうなんだ。世の中広いからね、知らないことは1つや2つは有るものだもんね」

 世の中広いから知らないっていう訳じゃないんだけどね、オレは。まぁ、言えないコトだから仕方がない。でも一つだけ今言いたいことがある。オレはほんの少し考えて話題を切り出した。

「あっ、そうだ! 話は初めに戻るけど、えっと……お願いがあるんだ」

真面目な口調でオレは話した。ずっと叶えたかった夢の欠片を掴むためにもオレは彼女に訊いた。

「オレをキャラバンの仲間に入れてくれないか?」

真剣に言ったオレの願い。だが、その傍でコグロがまたちょっかいを出す。

「それに一文無しガヤ。このままだと飢え死に」

「人の希望を踏み弄るなって。それは置いておくとして……。お願いできる……かな?」

サーネルは迷うことなく答えた。

「もちろん!」

 

 明るく響くその声と言葉にオレは嬉しさが込み上げてきた。


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