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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第5話 級友の追及

 工房を出て、およそ4分で寮に到着。

 寮と言っても、集合ポストが見える受付に寮務教官が座っているだけ。

 あとは完全にマンションと同様の造りだ。

 風呂やトイレや台所も、各部屋にちゃんと備わっている。

 風呂が若干狭いが、ワンルームのマンションと思えばそんなものだろう。


 自室玄関前まで戻ると、ちょうど隣の部屋の緑山(みどりやま)典明(のりあき)が自室のドアの鍵をかけているところだった。

 緑山は同じ魔法工学科の1年だ。

 知り合ったのは昨年の学園祭を見に来た時。

 宿代わりにあてがわれた特区公社3階6畳和室の会議室で、一緒に泊まったのがきっかけだ。


 この特区はホテルらしいホテルの定員は少ないらしく、1年に1週間と2日の特区公開日に宿泊する際は、会議室だの寮の空室だの様々な部屋を利用するらしい。

 結果申し込みが遅かった僕は、6畳の会議室を2人で利用という事になってしまった。

 あの時は同室の奴がとんでもない奴だったらどうしようかと、前日まで大変に不安だったのだ。


 でも幸い同室になった緑山は、趣味と常識が少し間違っているのと若干いびきをかく事以外は大変にいい奴だった。

 お互い魔技高専を受験する事がわかったので、以降メール等でやりとりして、何とか双方無事合格してここにいる訳だ。

 まさか寮の部屋まで隣になるとは思ってもみなかった。

 でもまあ三輪と緑山で名字の五十音が近いから、当然と言えば当然なのだろう。


「今日は遅いお帰りだな。どこか研究会でも見学してきたか?」


「1カ所見学して、試しにこれを作って来たよ」


 片手で持っていた包丁もどきの凶器を緑山に渡す。


「なんだこれは一体……おいおい。これは殺害用か自決用かマグロ包丁か?」


 確かにこの長さでこの作りだと包丁とは思わないよな。

 でもここは断固として宣言しておこう。


「これはあくまで包丁だ。ちょっと計算が狂って長くなった」


 厳密には詩織ちゃん先輩のせいなのだが、それは言わない。

 緑山は包丁もどきの鞘を完全に抜いて、色々な方向から観察する。


「試しに作ったとか貰ったという代物じゃないぞこれ。見た限りだけでは短いけれどそれなりの業物だろう。前にどこかの博物館で見た自決用の懐刀が一番近い感じだ。成分的にも」


 緑山は僕と違い、魔法が少しだけ使えるらしい。

 物の構造とか成分とかを分析する、本人曰く『地味な魔法』だけらしいけれど。


「どこかの博物館から短刀を盗んできた、というのが一番ありそうな答えだな。さあ吐け。介錯はこの刀で不肖私めが……」


「人を勝手に殺すな」


「でも大物解体用にはちょうどいいかもな。安心しろ、お前が死んでも俺がちゃんとこれを使ってやる」


「いいかげんにしろ」


「冗談だ」


 緑山はそう言って包丁を鞘に収め、俺に返す。


「でも刀作りの研究会なんて、オリエンテーションでやってなかったぞ。杖なんかを作る何とか制作研究会とは違うのか?」


「あれとは別。学生会の工房の一部を借りて、女性の先輩2人でやっているらしい。同じ工房で自治会のロビーさんがバイクをいじっていたけれど、刀の方には関与していないみたいだ」


「それで女性の先輩2人って、美人だったか?」


 いきなり厳しい質問が来た。


「1人は綺麗なお姉さんという感じで、もう1人はロリ系。路線は違うがどっちもなかなか」


「そう被疑者は白状しており……」


「勝手に人を犯罪者にするな」


 緑山はにやりと笑う。


「まあ初っぱなから充実しているようで何よりだ。さて、カフェテリアに飯を食いに行くけれど、三輪はどうする?」


「自炊にしておくよ、生活費削減のために」


「ほな、さいなら~」


 緑山は階段の方へ歩いて行く。

 僕は自室の鍵を開け、中へと入った。

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