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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第4話 完成したのは凶器です

 香緒里先輩も苦笑いしている。


「加工や仕上げは間違っていないですから、きっと最初に材料を切り出した時の量が間違っていたのですね。まあその辺は経験ですからしょうがないです」


「違うのですよ香緒里先輩。今回は失敗を前提に少し大き目に切り出したのです。まさか初めてでこんなにきっちり仕上げるとは思わなかったのです」


 でも、と思いつつ俺は仕上がった包丁を見る。

 確かに包丁としては長すぎる。

 こんなの巨大魚を捌く時にしか使わないだろう。


 それでも良く出来た刃物特有の美しさというか端正さが、この包丁から感じられる。

 工程の一部とはいえ、自分で作ったとは思えない。


「もし良ければこの包丁、持ち帰っていいですか? 材料費は払いますから」


「材料費はいいのですよ。どうせ材料は自前銑鉄なのですから」


 それじゃあと思って気づいた。


「そのままでは鞄に穴が開きますし、かと言って持ち歩いたらこの特区でも事件ものです」


 香緒里先輩の言うとおりだ。


「大丈夫なのです。こんな時の為の加工魔法持ちなのです」


 詩織ちゃんは凶器を片手に工房の奥の方へ歩いて行って、木の板材を2本持つと、バイクをいじっているロビーさんの方へ歩いて行く。


「ロビーお願いなのです。加工魔法でちゃちゃっと柄と鞘を作って欲しいのです」


「あらほらさっさデス」


 妙な了解をすると、筋肉系白人は作業台に板材と包丁を置き、軽く手のひらを上にあてる。

 木材が一気に変形した。

 自動的に切断されてさらに曲がったり丸まったり自在に形を変えていく。


 あっという間に鉄部分だけだった包丁に、柄と鞘ができあがる。

 これが加工魔法という奴なのだろう。

 なかなか便利でうらやましい。


「材料が木材なので白木仕上げなのデス。必要なら後程ニスなり漆なりで仕上げるデス」


「ありがとうなのです」


 詩織ちゃん先輩は木材を奥に戻すと、こっちに戻ってきた。


「これなら持ち歩いても、この島に限り問題はないのです」


 柄と鞘がついたせいか、ますます凶器に近づいた気もするが。

 そんな僕の思った事がわかったのだろうか、香緒里先輩が笑って教えてくれる。


「大丈夫ですよ、この島は魔法特区ですから。魔法使いの杖や武器の持ち歩きは当然の事として認められています。普段から刀を2本下げて歩いている人もいますし、それくらいは問題にならないです」


 ここは本当に現代の日本なのだろうか。

 でもまあ先輩が言うならそうなのだろう。


「という訳で、この刀は記念品なので持ち帰って欲しいのです」


 詩織ちゃん先輩、もう包丁と言わずに刀と言ってしまっている。


「でもだからといって、余計な気は遣わないでいいですから。研究会は自分にあったところをじっくり選んで下さいね」


「でも待っているのです。宜しくなのです」


 何か笑える。

 そして妙に楽しい。


 考えてみればこの1年、受験勉強に専念したおかげで趣味のプラモ等も全然作っていなかったな。

 そして今作ったのは、プラモのような出来合いの品ではない本物。

 持っている手にずしりとくる重さが、ますます本物っぽさを感じさせる。


「良ければまたここに来ていいですか?」


 思わず出てしまった言葉に、詩織ちゃん先輩が例の満面の笑みを浮かべる。


「いつでもどうぞのウェルカムなのです。放課後でしたらここに来てくれれば大体私も出てくるのです」


「でも本当に自分の希望を重視して下さいね」


「大丈夫ですよ」


 何か自然に笑顔になってしまう。

 でも今日はまあ、ここで引き上げた方がいいだろう。


「今日はありがとうございました」


 正直ここに合格が決まった時以来の機嫌の良さで、僕は帰途についた。

 帰途と言っても、帰る先はすぐ先の寮なのだけれど。

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