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右も左も魔女ばかり ~離島の魔法特区にある高専に入学した僕の想定外な日々~  作者: 於田縫紀
第1章 魔女の洗礼

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第3話 包丁作りと魔女2人

「ただ詩織ちゃん。詩織ちゃんや私は魔法で防護出来るからいいけれど、普通の人はせめて上は作業服を着た方がいいと思います。火傷をしたら大変ですから」


 という事は、彼女もやはり魔女なのだろう。

 そう言えば魔法効果付の炉は、この先輩が作ったと言っていたな。


「つい忘れていたのです。用意するのです」


「とりあえずは修兄ので大丈夫じゃないかしら。卒業したし、もうこの工房は使わないと思います。サイズも同じ位ですしね」


 第3の人物の名前が出てきた。

 修兄という事は、香緒里先輩のお兄さんだろうか。

 卒業したという事は、ここの先輩にあたるんだろうな。


「さて、温度も冷めてきたので、研いで仕上げるのです」


「私も見てみたいですね、これならきっと仕上がりもいいと思います」


 3人で工房の奥にある工作機械類の方へ歩いて行く。

 何本ものアームがある異形の機械の中央に包丁をセットすると、詩織ちゃん先輩はどこからともなく何かを取り出した。


「さて、この工程の前にこれを上に着るです」


 詩織ちゃん先輩は、右手に持っていた作業服を僕に渡した。

 えっ!? さっきまで、こんな物持っていなかったよな?

 置いてあったようにも見えないけれど、まああるものはしょうがない。


 僕は渡された作業服に袖を通す。

 ほぼちょうどいいサイズだ。強いて言えば、ほんの少しだけ袖が長いかな程度。


「さて、伝統工芸の日本刀は1本1本手で研ぎ師が研ぐのですけれど、うちのは実用本位の量産品なので、そんなに手間をかけられないのです。なので便利な魔法工作機械を使うのです」


 詩織ちゃん先輩はそう言って、異形の機械を指さす。


「最新型のフレキシブルマルチ加工機なのです。魔法仕様で細部まで完璧に仕上げてくれるのです」


「詩織ちゃんと詩織ちゃんのお父さんは工作機械が好きなんです。便利だと思うとすぐ買っちゃって。置き場所が無くなってここに置いたりしているんですよ。これも特区以外には持ち出せない最新の機械です」


 香緒里先輩が説明してくれる。

 でもそんな機械って、凄く高価なのではないだろうか?

 ひょっとして詩織ちゃん先輩って金持ちのお嬢様なのだろうか?

 そうは見えないけれど。


 一方詩織ちゃん先輩は、近くの端末に何やら打ち込んでいる。

 ひょっとしたら加工機械とネットワークで繋がっているのだろうか。


「それでは仕上げ開始なのですよ!」


 ぽちっとな、と言いながら詩織ちゃん先輩はマウスのボタンを押した。

 何本かのアームが小型の砥石らしき物を自動でセットし、動き始める。

 またアームのうち2つはオイルらしき液体を包丁に注ぎ始めた。


「これで包丁なら3分程度で仕上がるのです。ちなみに加工魔法なしで手動でやると、30分以上はかかるのです」


「これが入って少し効率が上がったけれど、刀を作るのが2人ですからね。なかなか注文に応えるのが大変なんです」


 今の言葉からすると、ここでの刀作りは香緒里先輩と詩織ちゃん先輩の2人だけでやっているのだろうか。


「ロビーさんは刀を作られないんですか?」


「細かい作業は苦手なのデス。私は動力付きの機械専門なのデス」


 微妙な発音の日本語で返事がくる。


「だから刀を作る人大募集中なのです。でも魔法という以上にセンスの世界なので、あまりむやみに人を誘えないのです」


「と言ってもこっちの事情は気にしないで下さいね。新入生ですし色々な希望もあるでしょう。ここの工房は私と詩織ちゃんで細々やっているだけですから」


 そんな事を話している間にも、最新型という怪しげな工作機械はシュコシュコ健気に動いている。

 やがて電子レンジのようなチーン、という音がしてアームの動きが止まった。


 オイルが風圧で飛ばされた後、洗浄液のようなものが出て包丁から油を綺麗に取り除く。

 更に温風で水分が飛ばされ、元の場所に包丁が置かれた時点でもう一度チーンという音が鳴った。

 詩織ちゃん先輩が仕上がった包丁を手に取る。


「うん、初心者にしてこの出来はちょっと悔しいけれどなかなかなのです。ただちょっと凶悪な包丁になってしまったのです」


 確かに、と俺も思わず苦笑いしてしまう。

 どう見ても刃渡り30センチを超えているし、調理道具と言うよりは凶器だろう。

 そんな出来だ。

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魔女シリーズの続編が読めて嬉しいです。
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